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出会い
しおりを挟む「やあ、今晩は。美しい令嬢達が集まっていて目が幸せになる夜だね。」
「まあ、お父様ったら。言い方がちょっと気持ち悪くて何だか嫌ですわ。」
「はっはっはっ!カレンよ、お前は今日も攻撃力が高いなあ。」
グレイヘアの身長が高くてスラリとしているカレンデュレアの父、マルテッド侯爵はそう言って楽しそうに笑った。辛辣なカレンデュレアの言葉など全く意に介していないのか、メアリーナとティアラに「こんな気難しい娘と仲良くしてくれてありがとう」とウィンクをした。
「メアリーナさん、ティアラさん、ようこそいらっしゃいましたわね。今日は沢山若い人達を呼んでいるの。交流をしてゆっくり楽しんでいらしてね。」
カレンデュレアと同じ黒髪に妖艶な笑みを浮かべて優しく声をかけて下さったのは、社交界の華として有名なマルテッド侯爵夫人だった。
(侯爵様はお優しいし、夫人は迫力の美人ね。カレンはお二人のいい所取りをしてるんだわ。)
二人に挨拶の済んだメアリーナ達は、ホールへと進み飲み物を受け取って、ダンスを踊る人々を見つめながら談笑をし始めた。しばらくすると、カレンデュレアとティアラの婚約者が手に飲み物を持ってやってきた。
「今日も綺麗だな、カレン。よく研がれて陽の光に輝く鉄剣のようだ。」
「例えがユニーク過ぎますわ、ライ。」
短髪の赤髪に大きな身体の婚約者ライオネル・シャインズの表現のおかしさを、カレンデュレアは表情ひとつ変えずに指摘したが、彼はそんな言葉にもにこにこと嬉しそうに微笑んでいる。
「君も美しいね、ティア。馬が大好きなクローバーの葉よりも瑞々しい青だね。」
「何を言っているのか全然分からないわ。ちなみにこれは青じゃなくて水色、あなたの髪の色よ、アル。」
その横では、これまた優しげな雰囲気の水色の髪の婚約者アルト・ディレクトレルにティアラが笑いながらツッコミを入れている。
メアリーナはその会話を聞きながら仲が良くて羨ましいと思い、その瞬間にもう隣には立つことのないロメオを思った。見た目は良かったけれど、彼らのようにドレスを着ている所を褒めてもらった事は一度もなかったし、今思えばデビュタントの時ですら他の女の子に余所見をしていた。
(…私は彼のどこが良かったのかしら。)
ふと心に浮かんだ疑問に答えを出す前に、ティアラがキラキラした瞳でメアリーナの手を引っ張った。目の前では二回目のダンスが始まろうとしている。
「踊りの輪に混ざりましょう!」
「私、相手がまだ見付かっていないしもうしばらく見ているから行ってきて。」
「大丈夫!相手は連れてきてるから!」
「え?」
どこに、と思った次の瞬間、カレンデュレアの婚約者のライオネルが、メアリーナ達が見ている方向とは逆側に誰かを見つけたのか手を大きく振った。
「エディオ!こっち。」
振り返ったメアリーナは、そこで大きく目を見開いた。視線の先にいた人物の深い森のような色の瞳と、目が合ったからだった。
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