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次を考える
しおりを挟む「メア、堂々としていてとても素敵でしたわ。」
「そうね!とっても気持ちよかったわ。でももっとキツく言ってやっても良かったのよ?」
「ふふ、二人ともありがとう。」
いつものダリンタッド侯爵家の持ち物であるカフェの二階、広いサンバルコニーにて。少女三人は、先程起こった事の話題を咲かせていた。季節はもう秋も終わりの頃。もうすぐ長い冬の季節がやってくる。冷たい風が窓の外を通り過ぎて行くが室内は暖かく、色とりどりの花や植物も通年を通して所々に飾ってあり、まるで春のようだ。
「でもまさか腕を掴んでくるなんて、思わなかったわ。」
ティアラが眉をひそめながらそう言うと、カレンデュレアも大きく頷いた。
「あの方は元々女性に対してどこか馴れ馴れしさがあるとは思っていたけれど…。昔からああなのかしら?」
「前はよく手を繋いでいたけど、そういう馴れ馴れしさじゃなかったんだけど。…やだ、そんな顔しないで。もう十年くらい前の話よ。」
渋い顔をしている少女二人にメアリーナは苦笑いを浮かべ、そしてふっとため息をついた。新緑のような美しい瞳が憂いを帯びている。
「私、どうしようかな。」
「どうって?」
「婚約も破棄になったし、新しい相手を見つけなくちゃいけなくなってしまったわ。」
「…フルバード伯爵様はなんて仰ってるの?」
「何にも。ただ、ゆっくりしなさいと。」
ふむ、とティアラが首を傾げた。そして何故か、持っていた学生鞄を開けながらメアリーナに尋ねた。
「メアは伯爵家の跡継ぎなのよね?」
「そう。婿取りは必須なの。だからゆっくりしてもいい、なんて言われても何だか落ち着かなくて。」
「なるほどなるほど。…ということで、はいこれ。」
「…これ?」
手渡されたものを見て、メアリーナは睫毛を瞬かかせた。ワインレッドの上品な色の封筒を開けると、同じ色に金色の縁取りで囲われたメッセージカードが入っていた。
「夜会の、招待状?」
「そうよ、舞踏会!一緒に行きましょう。」
「カレンの邸であるの?」
主催者はダリンタッド侯爵家ではなくマルテッド侯爵家と書いてあり、メアリーナはますます目を丸くした。そんな少女の顔を見て、カレンデュレアは形の良い唇の口角をあげ美麗に微笑んだ。
「ええ。二ヶ月後、冬季になってワタクシの家で開く一番初めの舞踏会よ。是非参加して欲しいわ。」
「メアは変な男と縁も切れたことだし、出会いの場に出てもいいんじゃないかって提案してみたの。私の家で開いても良かったんだけど、生憎ダンスホールが冬の前に修繕中なのよ。そうしたら、カレンが侯爵様に掛け合ってくれて。」
「そう。だからこれはワタクシ達二人からの招待状よ。」
「一緒に入場するのよ、楽しみだわ!」
キラキラと目を輝かせるカレンデュレアとティアラに、圧倒され戸惑いながらもメアリーナはふと思った。
「ええ、嬉しいわ…。でも二人とも婚約者の方は…?」
「別々に入場する事になっているから大丈夫よ!」
「ワタクシも現地集合よ。」
「何だか、悪いわ…。」
ふと、二人の婚約者の姿を思い浮かべた。ティアラの婚約者は三つ上のアルト・ディレクトレル公爵令息で、カレンデュレアの婚約者は、一つ歳下のライオネル・シャインズ辺境伯爵令息だ。
二人とも見目が麗しく爵位も高く、婚約しているとは言え令嬢達に人気がある。放って置いてもいいのか?とメアリーナが聞くと、ティアラは良いのよ、と言ってお茶を飲んだ。
「女子会してる方が楽しいんだから。アルトはずーっと馬の話ばっかりしてるし。馬面の女の子にならついて行くかもね。」
「ライも主に剣術の話しかしないわよ。女性に近寄られても上手い返し一つまだ出来ないんだから。」
お互いの婚約者の愚痴をこぼした二人はお互いを見やると。
「「…男って、ねー。」」
(あらあら…。)
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