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未亡人の正体

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「ああ、そうだ。君は知っていたのかね?」

「...何をですか。」

「君が懇意にしているレガシー夫人の事だ。」

「...え?」


 何を言われるのかと怖々と顔を上げるロメオを見ながら、フルバード伯爵はずっと目が笑っていない笑みを浮かべ続けている。青年の反応から「なんだ、知らずにやっていたのか」と小さく呟いた。

 

「あの方は、現シルベンツァ公爵の愛妾だよ。」

「あ、愛妾...?妾と言うことですか...?」


 そんな話は聞いた事がない、とロメオは首を傾げた。
 レガシー夫人は故レガシー伯爵が死んだ後も籍を抜くことを許さないと、それは大切に大事に思い未亡人だ。
 妖艶なタレ目とぽってりとした口元に黒子。艶やかな黒髪も年齢を感じさせない透き通るような吸い付く肌も美しく、ボディラインも素晴らしい。
 溢れんばかりの色気を持つレガシー夫人に、街中でロメオは遊んでいた時たまたま声を掛けられ、そのまま関係を持った。

『貴方は見た目が麗しいから、こんなアクセサリーが似合うと思うわ。』

 彼女はレガシー伯爵の遺産を全て継いでいてお金があると言っていて、よくロメオが欲しいものを強請ならくても色々と買ってくれた。例えば今身につけている少し派手なゴールドのカフスも彼女からのプレゼントだった。
 だが愛妾だからと、なんだと言うのだろう。


「そ、それがどうかしたのですか...?公爵ほどの位の方に妾がいるくらいは不思議なことでは無いでしょう?」

「お前はこの国の貴族がを知っているか?」

「法律...?」

「本当に何も知らないのだな。仕方がない、後学の為に教えといてやろう。
 貴族が本妻、もしくは夫以外に妾を持つ場合、それは。」

「...は?」

「その家の血を絶やす訳にはいかぬが、親族にも後継になれるような子どもがいなかった場合及び、双方がそれを許可した時のみだ。
 そして貴族の妾、または男妾となった者にはある枷が付けられる。身分の保証、金銭や産まれる子供に対する確実な保証が得られる代わりに、男妾であれば、浮気相手共々に。」

「う、浮気相手...?」


 サアー、という音が聞こえてきそうなほどに顔色を真っ青にしたロメオを見ながら、フルバード伯爵は言葉を続けた。


「勿論、知らぬ存ぜぬは通用しないぞ。その法律を知らない貴族などいないのが常識だからな。お前の歳であれば、既に学園でも教わっているはずだ。まあ法律学にお前のような見た目と下半身で物事を考えるような輩が興味を持つとは思えないが。」

「そ、そんな、ぼ、僕は、」

 そんなこと知らない、とロメオは言ってしまいそうになるのをぐっと堪えた。馬鹿にされているのだ、本当にそうなのだと言いたくなかった。


「まあ、レガシー夫人にはまだ子供は出来ておらぬようだし、今の時点ではそんな大した刑でもないだろう。公爵家からの慰謝料請求か、鞭打ちくらいなものだ。安心して公爵からの裁きの沙汰を待つがいい。」

「た、た、たかが...っ!たかが、関係を持ったくらいでそんな...!」

「たかが、というが、妾のそのような行為は家の乗っ取りにも繋がる可能性があるのだから思い処罰を受けさせられるのは当たり前のことだろう?」




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