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あの親あっての彼

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「テューダーズ伯はね、ロメオ君を見ても分かると思うんだけど、とにかく見た目が良くてね。」

「…そうですね、言われてみれば…。」


 今ではすっかりと太ってしまい貫禄がでたテューダーズ伯爵は、確かに昔、メアリーナがまだ幼かった頃はシュッとした格好の良い方だったと遠い記憶の中に思い出す。

 髪色が明るいブラウンになったロメオが、そのまま成長したような姿だった以前のテューダーズ伯爵は、快活な笑い方をする人で大きな声で喋り、着る物に関しても赤や青など原色を颯爽と着こなしていて、自分の父親よりも派手だった記憶がある。

 メアリーナの父は、顔立ちは整っている方であるが、特別という訳では無い。大人しそうな雰囲気と、学者という立場に相応しいように品の良い色合いの服を好んで着ていて、喋り方も物静かだ。実際にとても理知的なタイプだった。

 あまりにも対照的な二人に、メアリーナはふと疑問に思った。



「その…失礼なことかと思いますが、お父様とテューダーズ伯爵様は、いつからご友人でいらっしゃったのですか?」

「いや、友人ではないよ。」

「えっ。」


 家同士の婚約まで結んだのに?とメアリーナは目を大きくする。すると、父は昔を思い出したのだろうか、少し顰め面をしながら話し始めた。

「テューダーズ伯爵は、…良い意味でも悪い意味でも目立つタイプの人だったんだ。
 あの見た目で、性格も明るく活発で人に…特に女性に好かれる人でね。」


(…ロメオも女子生徒に人気があったわね…。想像がつくわ。)


「まあ、そんな彼だから女性関連の問題やトラブルが耐えなくてね。まあ、あとは短絡的で暴力的で、私も一度殴られたことがあったな。」

「え?!そんなことがあったのですか?」

「あったなあ。だいぶくだらない内容だったと思うが。その彼と本格的に関わりを持つことになったきっかけは、彼がその当時から既に私の婚約者だったサラに手を出そうとしたからなんだ。」

「お母様にですか?」

「その頃のテューダーズ伯には、現伯爵夫人とは違うが居たんだが、結局はサラに不貞を働いたと見なされて破棄されていたな。」

「え?!お母様がテューダーズ伯爵と不貞をしたということですか?!」

 驚愕のあまり思わず声を上げてしまったメアリーナだったが、そんな少女に父は直ぐに首を横に振った。


「ああいや、違う。
…もう随分昔の話で今だから言えるのだが。
 学生の頃、サラはテューダーズ伯に横恋慕をされていて、ある日の夜会で酔った彼に襲われそうになってね。彼女に付いていた侯爵家の影と、その時近くにいた現女王様で在られる当時のファシリーナ姫によって助けられて事なきを得たのだが。
 サラのご実家のリッチェルザム侯爵家が、当然の事だが激怒してね。テューダーズは慰謝料を請求されて、それを知った彼の婚約者サイドが婚約破棄を行ったという状況だね。」

「そんなことがあったのですね…。」

「でも彼は、何と言うかあまり…物事を深く考えないタイプのようで、そんな関係だったサラが嫁いだ我が家に、研究の提携を打診してきたという事だ。」

「……」







☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


補足。

夜会で酔っていたテューダーズ伯爵に母が絡まれて、と父が嘘をついているのは、まだ現役学生のメアリーナの事を思っての嘘です。今後出てまいりますが、本当は学園内の資料室で強姦未遂が起きてしまっていたからでした…。
学者の血を引くメアリーナは、資料室が大好きで、一番最初にロメオとティファニーの逢い引きを見てしまったのも資料室の窓からでした。
 だから、お父さんは資料室でそんな事があったなんて、言えなかったんですね…。

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