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3巻
3-3
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暗かった空が、次第に明るくなって朝を迎えた。
鬼人族の人たちは眠りにつき、代わりに本棟の人たちが目を覚まして、広間で祈りを始める。
それから、賑やかな朝食の時間になった。
朝食が終わった後、俺はいつもと同じようにイテカ・ラのところへ向かった。
以前は食料となる魔物の狩りを行っていた神獣たちも、畑でとれるもので十分に食事が賄えるようになったのもあって、狩りに出ることはほとんどなくなった。
その代わりに、昼間は俺の手伝いをしてくれている。
――アルフ。今日はどこへ向かう?
いつもなら聖なるタペストリーを確認しながら、イスム地区のどこを回るか決めるところだ。
だが今日は他に用事があった。
「パルムに用があるんだ。送ってもらっていいかな」
――分かった。
イテカ・ラの背に乗って、俺は都市パルムへ向かう。
イテカ・ラでの移動はほとんど時間がかからず、あっという間にパルムの壁の外にやってきた。
「ありがとう。それじゃあ、また後でよろしくね」
――ああ。
イテカ・ラの背から降りながらお礼を伝えて、俺は彼らと別れた。
正面門から街の中へ入ると、まっすぐ目的の場所を目指した。
用事があったのは、この街の中心に存在する最も大きな教会――大聖堂。
目の前まで来ると、都市パルムの象徴である教会の大きさに圧倒される。
ここを訪れるのは、神学校を卒業して最初のスキルを授かった時以来だ。
大勢の人が出入りしている正面扉から、俺は大聖堂の中に入った。
荘厳な大広間では、人々が次々と巨大な神の像の前で祈りを捧げている。
中には、遠くの村や街から来たであろう、貴族や旅人のような人たちの姿もあった。
俺は大広間に立っていた一人の神官に、自分が受け取った青色の手紙を見せた。
まだ教会内では比較的若そうな神官は、手紙を見るなりこくりと頷き、大聖堂の奥へと案内してくれた。
大広間にあった扉の一つから出て、長い廊下を歩く。
立ち並ぶ部屋の扉はどれも同じ見た目で、目印が何もないため、何の部屋なのかぱっと見で分からなかった。
俺の先を歩いていた神官が、そのうちの一つの前で立ち止まってノックする。
中から返事は聞こえなかった。
扉を開けると、誰もおらず、ただソファがいくつか置いてあるだけのこぢんまりとした部屋だった。
談話室、だろうか。
「ここでお待ちください」
神官にそう言われて、俺はソファの一つに腰を下ろした。
それからしばらく待っていると、部屋の扉がノックされた。
先ほどの神官が、年配の神官を連れて戻ってきていた。
新しく来た神官がこちらに手を差し出す。
「手紙を」
俺は聖王から送られてきた魔法手紙を取り出して渡した。
年配の神官はその手紙をじっと見た後、目をつぶって何やらぶつぶつと呟いた。
彼の持つ手紙がじんわりと光り出す。
「もう行っていい」
年配の神官は目を開き、さっきまで俺を案内してくれた神官を下がらせた。
そして彼は俺に手紙を返す。
「ついてきなさい」
そう言って、談話室のような部屋を出ると、長い廊下をすたすたと歩き始めた。
正確にはどのような力か分からないが、おそらくスキルを使って、手紙が本物かどうかを確かめたのだろう。
俺がリアヌンから授かったスキルのうちの一つに、物の記憶を見る力があるが、それに近いものだろうか、と思った。
老神官が、同じ見た目にしか見えないいくつもの扉の中の一つの前で立ち止まった。
そして懐から鍵の束を取り出して、その鍵の一つ――持ち手の部分がドラゴンになっている黒い鍵を迷わず選ぶと、扉の鍵穴に差し込んだ。
老神官が鍵を回した後、カチリ、とはっきりした解錠の音が聞こえた。
扉を開ける前に、老神官がこちらを振り返る。
なんだろう、と思ったが、老神官が見たのは俺ではなく、周りの廊下だった。
近くに人が歩いていないことを確認したようだ。
扉を開けると、そこには上に続く螺旋階段があった。
老神官に続いて、俺は扉の内側に入る。
無言で扉の鍵を内側から閉めた後、彼は螺旋階段を黙って上り始めた。
俺も彼の後に続いて、階段を上っていくと――二階まで来たあたりだろうか――扉が現れた。
だが老神官は足を止めることなく、そのまま上り続ける。
次に現れた扉の前で、老神官が立ち止まった。
先ほどと同じ鍵でその扉を開ける。
俺がその扉を抜けると、彼は俺の後ろで扉の鍵を閉めた。
老神官が再び廊下の先へ向かって歩き出すのを俺は追いかけた。
突き当たりの扉の前で動きを止めた老神官の横で、俺はその扉に視線を向けた。
扉には錠がついておらず、代わりに扉に描かれた獅子の絵の口辺りに穴が開いていた。
彼はその中に手を入れて、しばらく待ってから引き抜いた。
扉がひとりでに開き、その先にまたしても同じような錠のない扉。
目的の人物に会うために、ここまで厳重な流れをたどらなければいけないのかと少し辟易しつつ、俺は老神官の動きを黙って見る。
だが、今度は老神官は何もせず、ただその扉の前に立っていた。
扉の上で何かが動いた気配があり、視線をそちらに向けたら、そこには鳥に似た装飾があった。
明らかにこちらに顔を向けている。
この装飾が部屋に入ろうとしている者を確認しているのだろう。
やがて扉が開くと、先に広がっていたのは大きな部屋だった。
六人の聖者の像が並んだ広々とした空間。
その中央の玉座に、豪奢な衣装に身を包んだ老人が座っていた。
パルムの最高権力者であり、神から力を授けられた人物――聖王だ。
その隣には、黒いローブを着た人物が控えていた。
坊主頭で、表情が希薄な男だった。
パルムでなかなか見ない風貌からして、なんとなく異国の人かもしれないと感じる。
神官ではなさそうだが、どこか魔法に詳しそうな雰囲気がある。
「失礼いたします」
老神官が声を張り上げてから、部屋の中央で跪いた。
「イスム地区担当の神官、アルフ・ギーベラートをお連れしました」
「ああ」
聖王が椅子に腰かけたまま口を開いた。
「よくぞ、参った。アルフ・ギーベラートよ」
聖王には、さして声を張り上げている様子は見られなかったが、その言葉は部屋中に響いた。
何らかのスキルを用いているらしかった。
「はっ」
俺は老神官と同じように跪いた。
「そなたを呼んだのは他でもない。折り入って頼みたいことがあるのだ」
「なんでしょうか」
聖王が直々に呼び出してまで頼みたいこととはなんだろう。
イスム地区に関わる話だろうか。
「本題に入る前に誓ってもらおう。今からする話は他言厳禁だ。私の許可なく誰かに話すことは決して許されない」
厳かな口調でそう言った後、聖王が杖を振る。
その杖から、赤く細長い光が飛び出してきた。
それは俺の目の前で止まると、蛇のように蠢く。
「これは他者に秘密を漏らさぬよう口止めするスキルだ。そなたが誓った瞬間に、私が許可した以上の情報をそなたは外部に漏らすことができなくなる。誓えるなら、口に出してその意思を宣言せよ」
どうやら、俺が過去にクレック神官に使った『誓いの札』と似た効果を持っているスキルらしい。
どんな話を聞かされるか分からないとはいえ、断れる状況ではなかった。
「かしこまりました」
俺は一拍置いてから、聖王に向けて誓いを述べた。
「誓います。今からお聞きする話は誰にも打ち明けないと」
赤い蛇が、こちらに飛びかかってきた。
そして、俺の首にまきついたかと思うとそのまま消えていった。
聖王は、都市パルムの神から授けられる全てのスキルを司り、神官たちをはじめとした特権階級の者たちに分配する権利を持っている。
そんな立場の者なら、重要なスキルをたくさん所持していてもおかしくはない。
「よろしい。それでは本題に入ろう。そなたは地下迷宮というものについて、何か知っていることはあるか」
予想外の言葉に、俺は面食らった。
「地下迷宮ですか」
「ああ」
自分が神学校で教えられた記憶をもとに、俺は話し始めた。
「地下迷宮というのは……古代から伝わる、神秘的な場所だと学びました。そこでは、地上の常識とはまるで違うことが起こったり、野生のものとはまるっきり異なる魔物が棲息していたり、貴重なアイテムが隠されていたりするのだと」
「その通り。空間自体が生きているかのような不思議な場所、それが地下迷宮だ。道中には魔物が蔓延り、その奥には到達した者だけが手に入れられる貴重なアイテムが隠されている。まるで、欲深い人間を誘い込み、その人間を試すかのように」
「ええ」
実際に入ったことはないが、世界にいくつかの有名な迷宮があることは知っている。
大抵は古代遺跡が入口となっており、許可なく立ち入ることはできない。
「ところで、この大聖堂に迷宮があるという話を聞いたことはあるか」
俺は戸惑い、眉をひそめた。
「あくまで噂としてですが……耳にしたことはあります」
都市パルムの地下にも迷宮が存在し、その入口はこの大聖堂の中にある。
そしてその迷宮は聖王の管理下にあるという噂。
実際に聖王に直接聞く以外で確かめる術がないので、架空の話とされていて取り合う人があまりいないのだが……
「そなたに頼みたいのは、その迷宮の調査だ」
「えっ……!」
耳を疑い、思わず驚きの声を上げる。
「この大聖堂に、本当に迷宮が隠されているのですか」
「ああ」
あの噂話は本当だったというわけか。いやしかし、そもそもなぜ俺が。
それに何の目的で迷宮へ……?
「失礼ながら、なぜ調査が必要なのでしょう?」
「迷宮の最下層――第四層に、とある物があってな。それを入手してきてもらいたいのだ」
「私ひとりで、ですか?」
「いや」
聖王は首を横に振ってから、「コージドホツ」と言った。
それまで聖王の隣で黙っていた、黒いローブの人物が俺の前に出る。
坊主頭のその男は、ローブの中から透明な水晶玉のようなものを出した。
「この玉に触れて、目をつぶりなさい」
男がそう言って水晶玉を突き出してくる。
威圧的な声ではない。
むしろ、その声には緊張のようなものが感じられた。
俺に対してというより、この状況……あるいは聖王に対して、だろうか。
言われたとおり、俺がその玉に触れると、頭の中に、よく知る人物の顔が何人か浮かんだ。
同時に、目の前の男がはっきりとした口調で言う。
「鬼の大男、黄色がかった髪の少女、そして、小さな子が二人……」
はっとして目を開けて、水晶玉の中を覗いた。
そこには、俺の頭の中に浮かんだ人物が映っていた。
黒いローブの男が水晶玉を俺の手から離して、恭しく聖王の前に差し出す。
聖王が水晶玉を受け取り、それに目を落とす。
「この者たちは、そなたの知り合いだな?」
俺は答えに迷った。
正直に答えて、彼らに危害が及ぶようなことがあったら……
だが、聖王相手に嘘をつき通せるとは思えない。
俺は、ゆっくりと頷いた。
「……はい」
「この者たちにのみ今日ここでそなたに伝えたことを話す許可を与える。そしてともに、彼らをここへ連れて来るのだ」
「!」
聖王の唐突な命令に、俺は衝撃を受ける。
どうして教会のみんなを呼ばなければならないんだろう。
疑問はあったが、驚きのあまり声が出ない。
聖王は俺の反応も気に留めず、玉座から立ち上がって言い放った。
「アルフ・ギーベラートよ。明日よりそなたはこの者たちとともに、この教会にある地下迷宮に潜る」
「それは……」
そこで喉がつまって、咳込んでしまう。
咳が落ち着いてから、俺は言葉を続けた。
「……失礼いたしました。迷宮に潜るのは、私一人ではならないのでしょうか」
「この男が持つスキルによって、彼らは選ばれた。コージドホツは、未来を読む力を持っているのだ。そしてその力を宿した『予見の玉』には、先ほどの者たちが映った。すなわち、彼らがいなければ攻略できないという予見だ」
有無を言わさぬ物言いに、俺は言葉を続けることができなかった。
聖王の手に握られた透明の玉が鈍く光る。
「これは聖王命令だ。必ずやこの者たちを連れて、迷宮に潜るのだ。もしこれが守れないのであれば」
聖王が、俺を見下ろして告げた。
「そなたから神官の地位を剥奪する。同時に、聖王の命に背いた者と見なして、反逆罪で牢に閉じ込める。そなただけではないぞ……この予見の玉に映った者たちもともにだ」
その言葉を最後に聖王との話は終わり、俺は聖王の間から出た。
来た時と同じく鍵つきの扉を何度も通って大聖堂の入口まで戻る。
大聖堂の外に出た時、それまで張り詰めていた空気がなくなって、ようやく呼吸できるような気がした。
第二話 迷宮と覚悟
午後になり、俺は野菜売りのポーロさんがいる商館を訪れることにした。
ポーロさんは、俺が育った田舎村から運ばれてくる野菜を、この街で売りさばいているちょび髭のおじさんだ。
教会の畑でとれた野菜をいつも高値で買い取ってくれるので、助かっている。
普段より少し遅い時間だからいないかもしれないと思ったけれど、商館に到着するとすぐに会うことができた。
「おや、アルフぼっちゃん!」
俺が顔を見せると、ポーロさんがいつもの笑顔で迎え入れてくれた。
さっきまでのささくれだった気持ちがほぐれる。
「すみません、遅い時間に。もう今日は売り終わりましたか?」
「もしかして、野菜を持ってきてくださったんですか?」
「ええ……買い取ってもらえそうなら、お願いしようと思って」
「大歓迎ですよ! 早速見せてくださいな」
ポーロさんに促されて、俺は商館の裏に停めてある荷車置き場まで向かう。
「どれくらいいけますかね……?」
相談しながら、畑でとれた作物を買い取ってもらうと、荷台二つ分がいっぱいになった。
「おお!」
ポーロさんはそれを見て、大いに喜んでくれた。
野菜を高値で買い取ってくれたポーロさんに、俺は気になったことを尋ねる。
「あの、最近、いつもこんな感じでたくさん買い取ってもらっていると思うんですけど……本当にいいんでしょうか?」
「ん? それはどういうことですか?」
「いえ、量が量だから売りさばくのも大変だろうし……無理に買い取ってもらってるんじゃないかなと思いまして」
俺が申し訳ない気持ちで言うと、ポーロさんはキョトンとしたあと、大きく口を開けて笑った。
それから俺の肩をぽんぽんと叩く。
「そんなことを気にされていたんですか、ぼっちゃん。いやいや、それは完全に勘違いですよ。この街では、野菜や果物は飛ぶように売れるんですから」
そのままポーロさんが説明を続ける。
パルムは魔物の蔓延る森に囲まれた場所に位置していて、森の中の資源は利用できず、都市近郊で食料を確保するのも難しい立地だ。
そのため、遠くの街や村からわざわざ運ばせている作物が重宝されているとのことだった。
「この街での作物は、本当に貴重で高級品扱いなんですよ。売り切れの心配はあっても、売れ残りの心配は全くありません」
「そうですか」
なんとなくは知っていたことだけれど、毎日野菜を売っているポーロさんからはっきりと言ってもらえたおかげで、ようやく心配が晴れた気がした。
「それに、ぼっちゃんが持ってきてくださる作物はどれも最高級品ですからね。どこへ行っても、みんな喜んで買ってくれていますよ」
「よかったです」
「ええ、ええ。なので、どんな時間でも構わず持ってきてくださいね。仮に、その日はもう売ることがなかったとしても、次の日に回せばいいだけの話ですから」
「ありがとうございます」
俺はポーロさんにお礼を言って、商館を後にした。
懐が温かくなったところで、パルムの店を歩いてみんなのための生活用品や衣類を買い込んだ。
それらを『保管庫』におさめて、街を出る。
『イテカ・ラ』
パルムの門の前に着き、神獣の名を心の中で呼ぶと、森から狼の群れが駆けてきた。
神狼の主として彼らを従えるようになってから、その力の扱い方にもずいぶん慣れてきた。
「待ってもらってごめんね」
――いや。おかげで、こちらもいくらか魔物が狩れた。
そう言って腰を落としたイテカ・ラの背に、俺は飛び乗る。
神獣たちとともに森の中へ入ると、そこにはいくつかの種類の魔物が山になっていた。
「おぉ……」
鶏のような魔物、兎のような魔物、鹿のような魔物。
このラインナップはまるで……
――肉の美味いものたちばかりを狩ったのだ。舌が肥えたチビたちも、これなら喜んで食べる。
イテカ・ラが、やれやれという様子で言った。
俺はそんなイテカ・ラの仕草に笑って、『保管庫』スキルでそれらの魔物を収納した。
収入で得た生活用品や衣類、それからイテカ・ラたちが狩った魔物の肉。
大量のお土産を引っ提げて、俺たちはイスムの教会へと戻るのだった。
鬼人族の人たちは眠りにつき、代わりに本棟の人たちが目を覚まして、広間で祈りを始める。
それから、賑やかな朝食の時間になった。
朝食が終わった後、俺はいつもと同じようにイテカ・ラのところへ向かった。
以前は食料となる魔物の狩りを行っていた神獣たちも、畑でとれるもので十分に食事が賄えるようになったのもあって、狩りに出ることはほとんどなくなった。
その代わりに、昼間は俺の手伝いをしてくれている。
――アルフ。今日はどこへ向かう?
いつもなら聖なるタペストリーを確認しながら、イスム地区のどこを回るか決めるところだ。
だが今日は他に用事があった。
「パルムに用があるんだ。送ってもらっていいかな」
――分かった。
イテカ・ラの背に乗って、俺は都市パルムへ向かう。
イテカ・ラでの移動はほとんど時間がかからず、あっという間にパルムの壁の外にやってきた。
「ありがとう。それじゃあ、また後でよろしくね」
――ああ。
イテカ・ラの背から降りながらお礼を伝えて、俺は彼らと別れた。
正面門から街の中へ入ると、まっすぐ目的の場所を目指した。
用事があったのは、この街の中心に存在する最も大きな教会――大聖堂。
目の前まで来ると、都市パルムの象徴である教会の大きさに圧倒される。
ここを訪れるのは、神学校を卒業して最初のスキルを授かった時以来だ。
大勢の人が出入りしている正面扉から、俺は大聖堂の中に入った。
荘厳な大広間では、人々が次々と巨大な神の像の前で祈りを捧げている。
中には、遠くの村や街から来たであろう、貴族や旅人のような人たちの姿もあった。
俺は大広間に立っていた一人の神官に、自分が受け取った青色の手紙を見せた。
まだ教会内では比較的若そうな神官は、手紙を見るなりこくりと頷き、大聖堂の奥へと案内してくれた。
大広間にあった扉の一つから出て、長い廊下を歩く。
立ち並ぶ部屋の扉はどれも同じ見た目で、目印が何もないため、何の部屋なのかぱっと見で分からなかった。
俺の先を歩いていた神官が、そのうちの一つの前で立ち止まってノックする。
中から返事は聞こえなかった。
扉を開けると、誰もおらず、ただソファがいくつか置いてあるだけのこぢんまりとした部屋だった。
談話室、だろうか。
「ここでお待ちください」
神官にそう言われて、俺はソファの一つに腰を下ろした。
それからしばらく待っていると、部屋の扉がノックされた。
先ほどの神官が、年配の神官を連れて戻ってきていた。
新しく来た神官がこちらに手を差し出す。
「手紙を」
俺は聖王から送られてきた魔法手紙を取り出して渡した。
年配の神官はその手紙をじっと見た後、目をつぶって何やらぶつぶつと呟いた。
彼の持つ手紙がじんわりと光り出す。
「もう行っていい」
年配の神官は目を開き、さっきまで俺を案内してくれた神官を下がらせた。
そして彼は俺に手紙を返す。
「ついてきなさい」
そう言って、談話室のような部屋を出ると、長い廊下をすたすたと歩き始めた。
正確にはどのような力か分からないが、おそらくスキルを使って、手紙が本物かどうかを確かめたのだろう。
俺がリアヌンから授かったスキルのうちの一つに、物の記憶を見る力があるが、それに近いものだろうか、と思った。
老神官が、同じ見た目にしか見えないいくつもの扉の中の一つの前で立ち止まった。
そして懐から鍵の束を取り出して、その鍵の一つ――持ち手の部分がドラゴンになっている黒い鍵を迷わず選ぶと、扉の鍵穴に差し込んだ。
老神官が鍵を回した後、カチリ、とはっきりした解錠の音が聞こえた。
扉を開ける前に、老神官がこちらを振り返る。
なんだろう、と思ったが、老神官が見たのは俺ではなく、周りの廊下だった。
近くに人が歩いていないことを確認したようだ。
扉を開けると、そこには上に続く螺旋階段があった。
老神官に続いて、俺は扉の内側に入る。
無言で扉の鍵を内側から閉めた後、彼は螺旋階段を黙って上り始めた。
俺も彼の後に続いて、階段を上っていくと――二階まで来たあたりだろうか――扉が現れた。
だが老神官は足を止めることなく、そのまま上り続ける。
次に現れた扉の前で、老神官が立ち止まった。
先ほどと同じ鍵でその扉を開ける。
俺がその扉を抜けると、彼は俺の後ろで扉の鍵を閉めた。
老神官が再び廊下の先へ向かって歩き出すのを俺は追いかけた。
突き当たりの扉の前で動きを止めた老神官の横で、俺はその扉に視線を向けた。
扉には錠がついておらず、代わりに扉に描かれた獅子の絵の口辺りに穴が開いていた。
彼はその中に手を入れて、しばらく待ってから引き抜いた。
扉がひとりでに開き、その先にまたしても同じような錠のない扉。
目的の人物に会うために、ここまで厳重な流れをたどらなければいけないのかと少し辟易しつつ、俺は老神官の動きを黙って見る。
だが、今度は老神官は何もせず、ただその扉の前に立っていた。
扉の上で何かが動いた気配があり、視線をそちらに向けたら、そこには鳥に似た装飾があった。
明らかにこちらに顔を向けている。
この装飾が部屋に入ろうとしている者を確認しているのだろう。
やがて扉が開くと、先に広がっていたのは大きな部屋だった。
六人の聖者の像が並んだ広々とした空間。
その中央の玉座に、豪奢な衣装に身を包んだ老人が座っていた。
パルムの最高権力者であり、神から力を授けられた人物――聖王だ。
その隣には、黒いローブを着た人物が控えていた。
坊主頭で、表情が希薄な男だった。
パルムでなかなか見ない風貌からして、なんとなく異国の人かもしれないと感じる。
神官ではなさそうだが、どこか魔法に詳しそうな雰囲気がある。
「失礼いたします」
老神官が声を張り上げてから、部屋の中央で跪いた。
「イスム地区担当の神官、アルフ・ギーベラートをお連れしました」
「ああ」
聖王が椅子に腰かけたまま口を開いた。
「よくぞ、参った。アルフ・ギーベラートよ」
聖王には、さして声を張り上げている様子は見られなかったが、その言葉は部屋中に響いた。
何らかのスキルを用いているらしかった。
「はっ」
俺は老神官と同じように跪いた。
「そなたを呼んだのは他でもない。折り入って頼みたいことがあるのだ」
「なんでしょうか」
聖王が直々に呼び出してまで頼みたいこととはなんだろう。
イスム地区に関わる話だろうか。
「本題に入る前に誓ってもらおう。今からする話は他言厳禁だ。私の許可なく誰かに話すことは決して許されない」
厳かな口調でそう言った後、聖王が杖を振る。
その杖から、赤く細長い光が飛び出してきた。
それは俺の目の前で止まると、蛇のように蠢く。
「これは他者に秘密を漏らさぬよう口止めするスキルだ。そなたが誓った瞬間に、私が許可した以上の情報をそなたは外部に漏らすことができなくなる。誓えるなら、口に出してその意思を宣言せよ」
どうやら、俺が過去にクレック神官に使った『誓いの札』と似た効果を持っているスキルらしい。
どんな話を聞かされるか分からないとはいえ、断れる状況ではなかった。
「かしこまりました」
俺は一拍置いてから、聖王に向けて誓いを述べた。
「誓います。今からお聞きする話は誰にも打ち明けないと」
赤い蛇が、こちらに飛びかかってきた。
そして、俺の首にまきついたかと思うとそのまま消えていった。
聖王は、都市パルムの神から授けられる全てのスキルを司り、神官たちをはじめとした特権階級の者たちに分配する権利を持っている。
そんな立場の者なら、重要なスキルをたくさん所持していてもおかしくはない。
「よろしい。それでは本題に入ろう。そなたは地下迷宮というものについて、何か知っていることはあるか」
予想外の言葉に、俺は面食らった。
「地下迷宮ですか」
「ああ」
自分が神学校で教えられた記憶をもとに、俺は話し始めた。
「地下迷宮というのは……古代から伝わる、神秘的な場所だと学びました。そこでは、地上の常識とはまるで違うことが起こったり、野生のものとはまるっきり異なる魔物が棲息していたり、貴重なアイテムが隠されていたりするのだと」
「その通り。空間自体が生きているかのような不思議な場所、それが地下迷宮だ。道中には魔物が蔓延り、その奥には到達した者だけが手に入れられる貴重なアイテムが隠されている。まるで、欲深い人間を誘い込み、その人間を試すかのように」
「ええ」
実際に入ったことはないが、世界にいくつかの有名な迷宮があることは知っている。
大抵は古代遺跡が入口となっており、許可なく立ち入ることはできない。
「ところで、この大聖堂に迷宮があるという話を聞いたことはあるか」
俺は戸惑い、眉をひそめた。
「あくまで噂としてですが……耳にしたことはあります」
都市パルムの地下にも迷宮が存在し、その入口はこの大聖堂の中にある。
そしてその迷宮は聖王の管理下にあるという噂。
実際に聖王に直接聞く以外で確かめる術がないので、架空の話とされていて取り合う人があまりいないのだが……
「そなたに頼みたいのは、その迷宮の調査だ」
「えっ……!」
耳を疑い、思わず驚きの声を上げる。
「この大聖堂に、本当に迷宮が隠されているのですか」
「ああ」
あの噂話は本当だったというわけか。いやしかし、そもそもなぜ俺が。
それに何の目的で迷宮へ……?
「失礼ながら、なぜ調査が必要なのでしょう?」
「迷宮の最下層――第四層に、とある物があってな。それを入手してきてもらいたいのだ」
「私ひとりで、ですか?」
「いや」
聖王は首を横に振ってから、「コージドホツ」と言った。
それまで聖王の隣で黙っていた、黒いローブの人物が俺の前に出る。
坊主頭のその男は、ローブの中から透明な水晶玉のようなものを出した。
「この玉に触れて、目をつぶりなさい」
男がそう言って水晶玉を突き出してくる。
威圧的な声ではない。
むしろ、その声には緊張のようなものが感じられた。
俺に対してというより、この状況……あるいは聖王に対して、だろうか。
言われたとおり、俺がその玉に触れると、頭の中に、よく知る人物の顔が何人か浮かんだ。
同時に、目の前の男がはっきりとした口調で言う。
「鬼の大男、黄色がかった髪の少女、そして、小さな子が二人……」
はっとして目を開けて、水晶玉の中を覗いた。
そこには、俺の頭の中に浮かんだ人物が映っていた。
黒いローブの男が水晶玉を俺の手から離して、恭しく聖王の前に差し出す。
聖王が水晶玉を受け取り、それに目を落とす。
「この者たちは、そなたの知り合いだな?」
俺は答えに迷った。
正直に答えて、彼らに危害が及ぶようなことがあったら……
だが、聖王相手に嘘をつき通せるとは思えない。
俺は、ゆっくりと頷いた。
「……はい」
「この者たちにのみ今日ここでそなたに伝えたことを話す許可を与える。そしてともに、彼らをここへ連れて来るのだ」
「!」
聖王の唐突な命令に、俺は衝撃を受ける。
どうして教会のみんなを呼ばなければならないんだろう。
疑問はあったが、驚きのあまり声が出ない。
聖王は俺の反応も気に留めず、玉座から立ち上がって言い放った。
「アルフ・ギーベラートよ。明日よりそなたはこの者たちとともに、この教会にある地下迷宮に潜る」
「それは……」
そこで喉がつまって、咳込んでしまう。
咳が落ち着いてから、俺は言葉を続けた。
「……失礼いたしました。迷宮に潜るのは、私一人ではならないのでしょうか」
「この男が持つスキルによって、彼らは選ばれた。コージドホツは、未来を読む力を持っているのだ。そしてその力を宿した『予見の玉』には、先ほどの者たちが映った。すなわち、彼らがいなければ攻略できないという予見だ」
有無を言わさぬ物言いに、俺は言葉を続けることができなかった。
聖王の手に握られた透明の玉が鈍く光る。
「これは聖王命令だ。必ずやこの者たちを連れて、迷宮に潜るのだ。もしこれが守れないのであれば」
聖王が、俺を見下ろして告げた。
「そなたから神官の地位を剥奪する。同時に、聖王の命に背いた者と見なして、反逆罪で牢に閉じ込める。そなただけではないぞ……この予見の玉に映った者たちもともにだ」
その言葉を最後に聖王との話は終わり、俺は聖王の間から出た。
来た時と同じく鍵つきの扉を何度も通って大聖堂の入口まで戻る。
大聖堂の外に出た時、それまで張り詰めていた空気がなくなって、ようやく呼吸できるような気がした。
第二話 迷宮と覚悟
午後になり、俺は野菜売りのポーロさんがいる商館を訪れることにした。
ポーロさんは、俺が育った田舎村から運ばれてくる野菜を、この街で売りさばいているちょび髭のおじさんだ。
教会の畑でとれた野菜をいつも高値で買い取ってくれるので、助かっている。
普段より少し遅い時間だからいないかもしれないと思ったけれど、商館に到着するとすぐに会うことができた。
「おや、アルフぼっちゃん!」
俺が顔を見せると、ポーロさんがいつもの笑顔で迎え入れてくれた。
さっきまでのささくれだった気持ちがほぐれる。
「すみません、遅い時間に。もう今日は売り終わりましたか?」
「もしかして、野菜を持ってきてくださったんですか?」
「ええ……買い取ってもらえそうなら、お願いしようと思って」
「大歓迎ですよ! 早速見せてくださいな」
ポーロさんに促されて、俺は商館の裏に停めてある荷車置き場まで向かう。
「どれくらいいけますかね……?」
相談しながら、畑でとれた作物を買い取ってもらうと、荷台二つ分がいっぱいになった。
「おお!」
ポーロさんはそれを見て、大いに喜んでくれた。
野菜を高値で買い取ってくれたポーロさんに、俺は気になったことを尋ねる。
「あの、最近、いつもこんな感じでたくさん買い取ってもらっていると思うんですけど……本当にいいんでしょうか?」
「ん? それはどういうことですか?」
「いえ、量が量だから売りさばくのも大変だろうし……無理に買い取ってもらってるんじゃないかなと思いまして」
俺が申し訳ない気持ちで言うと、ポーロさんはキョトンとしたあと、大きく口を開けて笑った。
それから俺の肩をぽんぽんと叩く。
「そんなことを気にされていたんですか、ぼっちゃん。いやいや、それは完全に勘違いですよ。この街では、野菜や果物は飛ぶように売れるんですから」
そのままポーロさんが説明を続ける。
パルムは魔物の蔓延る森に囲まれた場所に位置していて、森の中の資源は利用できず、都市近郊で食料を確保するのも難しい立地だ。
そのため、遠くの街や村からわざわざ運ばせている作物が重宝されているとのことだった。
「この街での作物は、本当に貴重で高級品扱いなんですよ。売り切れの心配はあっても、売れ残りの心配は全くありません」
「そうですか」
なんとなくは知っていたことだけれど、毎日野菜を売っているポーロさんからはっきりと言ってもらえたおかげで、ようやく心配が晴れた気がした。
「それに、ぼっちゃんが持ってきてくださる作物はどれも最高級品ですからね。どこへ行っても、みんな喜んで買ってくれていますよ」
「よかったです」
「ええ、ええ。なので、どんな時間でも構わず持ってきてくださいね。仮に、その日はもう売ることがなかったとしても、次の日に回せばいいだけの話ですから」
「ありがとうございます」
俺はポーロさんにお礼を言って、商館を後にした。
懐が温かくなったところで、パルムの店を歩いてみんなのための生活用品や衣類を買い込んだ。
それらを『保管庫』におさめて、街を出る。
『イテカ・ラ』
パルムの門の前に着き、神獣の名を心の中で呼ぶと、森から狼の群れが駆けてきた。
神狼の主として彼らを従えるようになってから、その力の扱い方にもずいぶん慣れてきた。
「待ってもらってごめんね」
――いや。おかげで、こちらもいくらか魔物が狩れた。
そう言って腰を落としたイテカ・ラの背に、俺は飛び乗る。
神獣たちとともに森の中へ入ると、そこにはいくつかの種類の魔物が山になっていた。
「おぉ……」
鶏のような魔物、兎のような魔物、鹿のような魔物。
このラインナップはまるで……
――肉の美味いものたちばかりを狩ったのだ。舌が肥えたチビたちも、これなら喜んで食べる。
イテカ・ラが、やれやれという様子で言った。
俺はそんなイテカ・ラの仕草に笑って、『保管庫』スキルでそれらの魔物を収納した。
収入で得た生活用品や衣類、それからイテカ・ラたちが狩った魔物の肉。
大量のお土産を引っ提げて、俺たちはイスムの教会へと戻るのだった。
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