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ここまでの物語(あらすじ)

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【作者saidaより、読者の皆様へ】

しばらく更新の期間があいてしまい、申し訳ありませんでした。(休止理由については近況ノートに書かせていただきましたので、そちらもあわせてご覧いただければと思います)

ここまでの物語のあらすじを書かせていただきましたので、参考にしていただければ幸いです。

明日、新話、更新いたします。

更新を待ってくださっていた方、本当にありがとうございました。

もしよろしければ、この先もお付き合いいただけると嬉しいです。


【ここまでの物語(あらすじ)】

成人になり、「解毒士」という珍しいスキルを授かったマルサス。

「毒を抽出し、その解毒薬をつくることができる」というスキルの力を活かし、解毒ポーションの精製に明け暮れるマルサスだったが、契約している薬屋の女主人にポーションを買い叩かれ、生活は貧しい。


ある日、王都で謎の伝染病が発生。「アンデッドに噛まれた人が、アンデッド化する」という奇病によって、街は一夜にしてアンデッドで溢れかえる。

未曾有の危機の中、王都の防衛を任されている騎士団長(冒険者ギルド長も兼任)のサラ・ラフィーネは、マルサスの持つ「解毒士」スキルに解決の糸口を見出し、緊急招集する。

呼び出されたマルサスは、アンデッドに噛まれた人々の惨状を目の前にして、自身のスキルを活用した解毒治療を開始する。


マルサスが尽力した結果、王都は伝染病の危機を無事に乗り越えることができた。騎士団長のサラは、国を救ったマルサスに感謝し、遠慮する彼を説き伏せて、金貨1000枚という報奨金を手渡した。

自身が5万日働かないと得られないような大金を手に入れたマルサスは、その金貨を使って、薬屋を立ち上げることにした。

強欲な薬屋の女主人と交わしていた、呪いのような契約を解除したマルサスは、晴れて自分の薬屋となる自宅兼店舗となる物件を確保し、薬屋をオープンする準備を始める。

自分が精製することのできる「解毒ポーション」だけでは品揃えとして弱いと考えたマルサスは、所属している商人ギルドに求人を出すことにした。


求人を見てやってきたのは、同じく商人ギルド所属、錬金術師のリミヤ。

フードを被った15歳の少女から差し出されたポーション鑑定書を見ると、「解毒ポーション」しか精製できないマルサスとは違って、売れ筋の回復ポーションも含め、なんと8種類ものポーションを精製することができる錬金術師だと分かった。


「これは良い人が来てくれたぞ」と思うマルサスだったが、鑑定書をより詳細に確認し、愕然とする。

Sを最高ランクとし、A~Dで表されるポーションの質だったが、彼女が精製したポーションはどれも、「F」ランクポーションーー売りものにならない、「欠陥ポーション」だった。

ギルドが作成したポーション鑑定書の備考欄には、彼女のポーションを飲んだ時に起こる副作用の数々が事細かに記載されている。

マルサスの表情の変化を読み取ったか、「やややっぱり、だめなんですよねぇぇぇぇぇぇ!!!!」と号泣し始めるリミヤ。

しかしマルサスはあることを思いつき、彼女が落ち着くのを待って実行に移す。

それは、自身のスキルを使って、彼女の精製したポーションから「毒」(副作用)を取り除くというアイデアだった。

結果は大成功。商人ギルドに持っていき鑑定してもらうと、彼女の欠陥ポーションは、全てAランク以上のポーション(内一本は付加価値を持つSランクポーション)に生まれ変わっていた。

マルサスの薬屋、契約第一号は、錬金術師のリミヤに決まった。


無事、ポーション精製者を一人確保することのできたマルサスだったが、リミヤ一人だけでは精製できるポーションの量に限りがあった。
彼女に聞くと、ポーションをつくるための素材集めにとにかく時間がかかるという。

マルサスと同じく魔物を倒す実力を持たないリミヤは、王都周辺の弱い魔物しか出ない場所でしか素材を調達することができない。そのために、素材集めの効率が悪いという難点があった。


『やはりもう何人かのポーション精製者と契約するしかないか』

そんなことを考えながら、騎士団長のサラに紹介された酒場で絶品の魔物肉定食を食べ、一息ついていたマルサスだったが、そんな彼の耳に気になる会話が飛び込んできた。


近くのテーブルで話をしていたのは、四人の冒険者。
どうやら一人の男が、パーティーから外されるという会話らしかった。

盗み聞きはよくないと思いつつ、ついついその会話が耳に入ってきてしまうマルサス。

男がパーティーを外される理由は、彼の持つ「威圧者」という特異なスキルにあるという。

魔物が容易には近寄って来なくなるというそのスキルによって、冒険者パーティーは魔物と遭遇する機会を失い、魔物との戦闘で得られるものがなくなってしまったという問題を抱えていた。

パーティーメンバーの訴えを受け、男はパーティーから外れることを承諾する。

潔く店を去る男。マルサスは頭に閃くものがあって、彼のことを追いかけた。


店の外に大きな男の背中を見つけると、マルサスは彼に声をかけ、話を盗み聞きしたことを打ち明け、謝罪する。

それから、「ぜひ自分と一緒に仕事をしてもらえないだろうか」と誘った。

『リミヤが素材調達に行くとき、「威圧者」のスキルを持つこの人にいてもらえれば、魔物と遭遇するリスクがぐっと減り、より効率の良い場所で素材集めができるに違いない』

事情を話すと、男は契約を結ぶことを承諾してくれた。

斯くしてB級冒険者のアーガスが、マルサスの薬屋で働く二人目の契約者となった。


アーガスに護衛として同行してもらうことで、魔物が多く出る森にも潜ることができるようになり、マルサスとリミヤの素材調達効率は格段に上がった。

これなら、ポーション精製者が自分とリミヤだけだったとしてもなんとか薬屋を開けるかもしれないと希望を抱くマルサスだったが、一つ、大きな問題が。

それは、錬金術師のリミヤが、異様にアーガスを怖がるということだった。


リミヤ曰く、大きな図体にスキンヘッドという厳つい容姿のアーガスが、本能的に怖いのだという。マルサスと三人でならまだしも、アーガスとリミヤの二人だけでの素材調達はどうやら難しそうだった。

二人だけでの素材調達が任せられないことになると、薬屋を開店してからどうすればいいだろうとマルサスは頭を悩ませることになった。

店を開けているときは、マルサスは店番もしなくてはならない。その間、2人だけで素材調達に回ってももらうということができないのであれば、素材調達に行ける日は限られてしまう。

必然的に、精製できるポーションの量も少なくなってしまうのだった。

素材調達の回数を重ねる中で、なんとか2人の壁がなくなればと考えていたマルサス。しかし結局、アーガスを怖がってしまうリミヤに変化は見られず、2人だけで素材調達に行ける状態にはならなかった。


そんなある日の夜。

気晴らしにマルサスが王都をぶらついていると、道端で誰かが倒れているのを見つけた。

近寄ろうとしたマルサスは咄嗟に、さきの伝染病のことを思い出し、「アンデッドか……?」と警戒する。

その呟きを聞くや否や、倒れていた人はゆらゆらと起き上がり、「この見目麗しき乙女の、どこがアンデッドなの--!!!!」とマルサスに飛びかかってきた。

倒れていたのはアンデッドではなく、ただの酔っぱらいお姉さんだった。

酔っ払いお姉さんは飛びかかってきたかと思うと、マルサスの目の前で倒れ、そのまま眠ってしまった。
彼女を放置するわけにもいかず、マルサスは一旦、自分の薬屋に彼女を運ぶことに。

彼女が目を覚ますのを起きて待っているつもりだったマルサスだが、昼間の素材調達の疲れもあり、睡魔に負けて、店のカウンターで眠ってしまった。


声をかけられて目を覚ますと、すっかり朝になっており、目の前にいたのは、素面に戻った昨晩の女性だった。

女性はファシアと名乗り、昨晩に迷惑をかけたせめてものお詫びとして、マルサスに朝食をご馳走させて欲しいと提案する。

マルサスは『それでこの人の気がすむなら』と考え、彼女の提案をありがたく受けることにした。


彼女がマルサスを連れて来たのは、薬屋の近くにあるとても感じの良いカフェだった。

出てきたコーヒーとパンの美味しさに驚きながら会話をしていると、ファシアがつい昨日、仕事をクビになったのだという事実が明らかになる。

彼女がやめた職というのは、開拓者ギルドの受付嬢。

ファシアは、ギルドに来ていた迷惑な開拓者(若い女性だけのパーティーにちょっかいをだしていた)を思わず突き飛ばしてしまい、それで仕事を辞めることになったのだという。


マルサスは、彼女が仕事を辞めてきた経緯や話ぶり、そして何よりギルドに何年も勤めていたという確かな職歴から、「新しく開く薬屋の店番をしてもらえないか」と彼女にオファーする。

ギルドの元受付嬢といえばかなり信頼される職歴だから引く手あまただろうと考えて、「仮の契約からでも」と話を持ちかけたマルサスだったが、彼女は即答で「契約させて欲しい」と答える。

「どうしてこうすんなりと引き受けてくれたのだろうか」と疑問に思うマルサス。

すると彼女はマルサスの前で、落ち着いた緑の瞳を、燃えるような赤に変えてみせた。

彼女の持つスキルは、「鑑定士」。長年、ギルドの受付をしていた経験もあって、人を見る目には多少の自信があると語った彼女は、マルサスを信頼できる人物だと判断し、一緒に働きたいと考えたのだと告げた。

マルサスは薬屋で、彼女と契約の話を進めることになった。
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