王都にアンデッドが大量発生!!~不遇「解毒士」でしたが、国を救ったら人生逆転しました~

Saida

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男がパーティーを追放される理由

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俺が魔物肉定食を食べ終わり、酒場の角の席でその余韻に浸っていると。

不穏な一言が、耳に飛び込んできた。

「悪いけど、このパーティーを抜けてもらえないかな」

その言葉を放ったのは、金髪碧眼、端正な顔立ちの男冒険者。

盗み聞きはあまりよくないと思いつつ、俺の耳はついつい、テーブル席に座る冒険者4人の会話に引き寄せられてしまう。


「理由を聞かせて欲しい」と応じたのは、イケメン冒険者の正面に座っていた男。スキンヘッドで、傍目に見ても凄まじい威圧感だ。
これぐらい強そうな人が追い出されそうになっているなんて、よほどハイレベルなパーティーなのだろうか。

俺は残りのメンバーにも目を移す。魔法使いに、もう一人は神官だろうか。どちらも女性で、パーティー編成としてはごく一般的なものに思えた。


「分かっているとは思うけど、原因はあんたのスキルだよ」とイケメン冒険者が言う。

「俺のスキルについては、このパーティーに入れてもらうとき散々説明したはずだ。
お前たちはそれでも構わないと言ってくれたはずだが」

スキンヘッドの男が淡々と返した。

魔法使いと神官の二人は、揃って気まずそうに俯いた。

金髪の男冒険者は苛立たし気に口を開いた。

「確かにあんたはこのパーティーに入るとき、自分のスキルについて包み隠さず説明してくれた。
だが……まさかこんな風になるだなんて思ってなかったんだよ」

「こんな風、とは」
静かな口調なのに、スキンヘッドの男の言葉には凄みがあった。

「うっ……。
分かった。ちゃんと順序立てて説明する」

怯むイケメン冒険者を、スキンヘッドの男は無言で見据えた。

「まず、あんたのスキル『威圧者』について聞いたとき、俺たちはパーティーにとってプラスの要素だと考えたんだ。
実際に初めてパーティーを組んでシーバの森へ行ったとき、俺はあんたのスキルがやっぱりすごいものなんだって実感した。

あんたがパーティーにいるだけで、大概の魔物は姿を見せようともしない。

まれに鈍い魔物と出くわしたとしても、あんたと目が合えば、尻尾を巻いて一目散に逃げていく。それもスライムや角兎のような雑魚だけじゃない。Cランク相当のブラック・トロールでさえ、あんたを見て確実に怖気づいていた。

こんな心強いスキルはない。最初の何回かは確かにそう思ってたよ。

でも……よくよく考えたら、俺たちは魔物を倒してなんぼの冒険者じゃないか。

魔物と遭遇しなかったら、自分たちの腕を磨くことができない。
出くわしても逃げられるなら、倒して素材を調達することもできない。

あんたとパーティーを組んで魔物と戦いたいと思ったなら、あんたのスキルが全く通用しない魔物のいるところに行くしか選択肢はなくなる。

でもBランクのあんたを除いて、俺はC、この二人に至ってはまだDランクなんだ。あんたのスキルが通用しないBとかAとかの魔物が生息する場所にいって、まともにやりあえるはずないじゃないか。

だからといって俺たちが倒せるような相手のいるところでは、あんたの『威圧者』のせいで魔物が姿を現さない。経験値を積みたいと考えても、あんたがパーティーにいたら絶対に無理なんだよ」

「そこまで分かっていたなら、なぜ俺をパーティーに入れた」

「分かってなかったから入れたんだよ!」

金髪冒険者が、悲痛な声で訴えた。

「あんたみたいなBランクの冒険者となんて、パーティーを組んでもらえる機会、そうそうない。

俺たちみたいな弱小パーティーのところに入りたいとやってくるのは、俺たちよりもさらに弱いか、弱い上に性格に難のある奴らばっかりなんだよ!

それに比べてあんたは、初めて会った時から信頼感があった。Bランクの肩書通り強そうに見えたし、受け答えもしっかりしていて、性格に難があるようにも思えなかった。

それだけじゃない。あんたは報酬の取り分だって、俺たちと同じでいいって言ってくれたんだ。

俺たちの引き受ける安いクエストを、Bランクのあんたが同じ報酬でやってくれると言った。
ちょっとくらい変わったスキルを持っていたって、それを補って余りあるくらい、あんたは好条件なメンバー候補に思えたんだよ!」

イケメン冒険者はがっくりと肩を落とした。

「でもだめだった。あんたと一緒にいれば、俺たちはずっと強くなれないままだ。

俺の判断ミスが招いた身勝手な追い出しだとは分かっている。

だが、頼む。今日限りで、俺たちのパーティーから出て行って欲しい」

「……分かった」

スキンヘッドの男の声は、最後まで静かだった。

イケメン冒険者は、驚いて顔を上げた。

「……い、いいのか?」

「いいも何も、望まれていないパーティーに居座るわけにはいかないだろう。
理由を聞いた限りでは、俺にどうこうできる話でもなさそうだしな。

話はそれだけか?」

「あ、ああ……」

呆気にとられた顔で、イケメン冒険者は頷いた。

スキンヘッドの男は、椅子を引いて立ち上がった。

「短い間だったが世話になったな。また用があるときは声をかけてくれ」

男は大股で出口へと向かう。

イケメン冒険者は、慌てて立ち上がり、叫んだ。

「本当にすまなかった!!」

魔法使いも神官も、すぐに立ち上がって叫ぶ。

「すみませんでした!」
「お世話になりました!!」

そして三人とも、深々と頭を下げた。

スキンヘッドの男は軽く手を挙げたが、振り返ることはなく、そのまま酒場を出て行った。




気が付くと俺は、席を立っていた。
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