王都にアンデッドが大量発生!!~不遇「解毒士」でしたが、国を救ったら人生逆転しました~

Saida

文字の大きさ
12 / 38

思いもよらぬ提案

しおりを挟む
錬金術師リミヤと、完成したポーションを持って商人ギルドを訪れる。

すぐにギルド長ムスタフが、俺のところに寄ってきた。
「これはこれは、マルサス様。本日はどういったご用件で……」

「ちょっと鑑定してもらいたいポーションがありまして」

「なるほど! すぐに担当の職員をお呼びします、少々お待ちください!」


ギルド長が連れてきたのは、俺の元担当職員である男、ラードだ。

ギルド長から聞いた話によれば、ラードはこの商人ギルドの中でも、ポーション精製者の担当を任されているらしい。

ラードは以前とは打って変わった低姿勢で、俺に応じる。ギルド長の前で大口の取引相手にへまはできないということだろうか。

「お待たせいたしました!どういったご用件でしょうか!」

「これらのポーションについて鑑定書を発行していただきたいのですが、どれくらいかかりますか?」

俺はカウンターに9つのポーションを並べた。8本の毒を取り除いたポーション、そしてもう一本は、余った毒液を集めて調合した、効能が未知な余り物ポーションである。

「かしこまりました! ええ、今すぐに鑑定書を発行してまいります!!少々お待ちください!!」

ラードはポーションを受け取るなり、すぐに裏へと引っ込んでいった。

隣でリミヤが目を丸くしている。ラードの様子が、いつも自分を応対するときとは違うことに驚いているのだろう。

「すみません、少々お待ちくださいね……」とギルド長ももみ手をしながら言ってくる。

横柄な態度を取られるよりはましだけれど、露骨に下手に出られるのも、それはそれで居心地が悪い。

この街には、ここ「商人ギルド」の他に「商業ギルド」というほぼ同じ役割を担っているライバルギルドも存在する。店を始めたバタバタが落ち着いたら、そっちへの移籍を考えてもいいかもしれない。


宣言通り、ラードはすぐに戻ってきた。

「お待たせしました!す、素晴らしい鑑定結果でございますっ!」

「ありがとうございます」

ラードから鑑定結果を受け取る。

「!!」

横で鑑定結果を確認したリミヤは口もとをおさえている。

鑑定結果は……8本のポーションがすべてAクラス。

そして残りの1本……それぞれの毒液を混ぜて調合したポーションは、なんとSクラスの万能解毒薬だった。ステータス強化効果が幾つも付与されており、そのためにS判定になったらしい。

「どこでこのポーションを!?」と、Sランクポーションについて根掘り葉掘り聞こうとするラードを適当にあしらい、必要最低限の礼を言ってギルドを出た。


薬屋に戻ると、俺は正式な契約をリミヤに持ちかけた。

「い、いいんですか!?」

「ええ。すべてAランク以上だったし、薬効も申し分ない。
薬屋だったら、どこの店だってこのポーションは買い取りたいと思うに違いありません」

リミヤは頬を赤らめて嬉しそうな顔をしたが、すぐにその表情に影が差す。

「で、でも。このポーション、私がつくったわけじゃありません。
マルサス様が精製してくださったから一級品になったわけで……。
私一人では、あんなポーション作れません……」

「でも、俺一人でも作れませんよ?」

「……えっ?」

リミヤがぽかんと口を開けて、かたまった。

「俺のスキルは、毒を抜き取って調合するだけですから。俺一人だと、毒消しのポーションをしか作ることができません」

「そっ……ほ、本当ですか?」

「はい。でもリミヤさんが最初にポーションの基礎を固めてくれたら、ご覧の通り、俺のスキルでも精製のお役に立てるみたいです。

だから、どうでしょうか。

リミヤさんの力を俺に貸してもらえませんか?」

不安そうだった少女の顔が、みるみるうちに輝いていく。

その綺麗な瞳は、また大粒の涙でうるうるした。でも最初に泣いていた時とは、表情の明るさがまったく違った。

「はい! よろしくお願いします!!」

元気いっぱいに、少女は答えてくれた。

薬屋の契約第一号は、錬金術師の少女リミヤに決定した。




正式に契約することが決まって、俺たちは具体的な話を詰めていくことにした。

「契約の方針なんだけど、納品数の目安を決めておく形はどうでしょう?

ノルマというほどガチガチにするつもりはないし、もちろん最低数に満たない場合でもペナルティーを科すつもりはないので安心してください。

納品できる量を教えてもらえると、他に何人くらい雇った方がいいか考える参考になってすごく助かるので……どうですかね?」

「は、はい! それで、も、もちろん大丈夫です!
そうだ……」

そういうとリミヤは、肩にかけたかばんの中から一枚の紙を取り出した。
それを両手で丁寧に渡してくる。

「こ、こちらをご覧ください……」

その手がぷるぷると震えている。
俺は差し出された羊皮紙を受け取って、その内容を確認する前に言った。

「そんなにかたくならなくて大丈夫ですよ。
何か態度が悪いからとかで、契約しないなんてこと言いませんから」

「す、すいません!」

「いや、謝らなくてもいいのですが……やっぱり、緊張しますか??」

「そ、そうですね……」

俺は腕を組んだ。うーん、今後一緒に仕事していくことを考えたら、お互いに緊張し合う関係じゃない方がいい気がするんだけど。まだ初日だし、こういうのは日にちを重ねたら少しは楽になるものだろうか。

「あっ、でっ、でしたら!」とリミヤが小さく手をあげて言う。

「はい?」

するとリミヤは、思いもよらない提案をしてきた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...