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防衛戦
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解放難易度Bの地区、アラカス山にはヒルに似た巨大な魔物が蔓延っていた。
神竜となって上空から炎を吹き、迷いなく燃やし尽くす。
火が消えると、緑色に空気を淀ませていた瘴気も取り払われ、山からの美しい景色が見渡せた。
『よし。こんなもんだな』
俺は神竜姿で空を渡り、拠点にしている都市ダミリアスまで飛んでいった。
高級宿屋に戻り、頭の中のマップを確認する。
解放難易度Bでも問題なく戦える実力がついてからは、特定の地域を避ける必要もなくなり、近場を次々に解放して回った。
そのため都市ダミリアスの周囲は、見事に被支配地域がなくなっていた。
魔物の巣窟を崩壊させた先々で、持ち帰ることができる物は、根こそぎ持って帰った。
食用や、加工すれば衣類・武器などになりそうな魔物、そして運が良いときには、魔物がため込んでいたアイテムの数々。
この街の冒険者ギルドに持っていくと、大喜びで買い取ってくれた。
今はそれを、高級宿屋の支払いにあてている。
「街を救ってくれたのだから、料金なんていらない」と宿の主人は言ってくれていたけれど、「これからも気兼ねなく泊まりたいので、ぜひ受け取って欲しい」と伝え、「そういうことなら」と受けとってもらっている。
それから、道具屋や武器屋へ行って、役に立ちそうなアイテムを見繕うのも、ちょっとした楽しみになった。
基本は神竜スキルを駆使することで問題なくやれているのだが、備えあれば憂なしだ。それに、異世界の不思議なアイテムを物色するのは、思いの外、面白かった。
神竜となって支配された地域を解放するだけの、簡単なお仕事。
もとの世界に戻ったときにもらえるという解放報酬も、かなり貯まっていた。
このままいくと向こうの世界に戻った暁には、「金持ちで長生きをし、幸運な出来事にたびたび見舞われる極度のラッキーマン」ということになりそうだった。
俺は自分のペースで異世界を救い続けていた。
そんな俺のところに、血相を変えたアマシア姫がやってきた。
「どうかされましたか?」
俺は宿屋の食堂で、遅めの朝食を取っていた。まだ起きてから時間が経っていないかったので、気持ちはぼんやりしたままだった。
しかし彼女の言葉を聞き、一気に目が覚める。
「この街に、魔物の軍勢が向かってきています」
「どういうことですか?」
アマシア姫が住む城の一室。
その部屋には、至る所に文字と図形が描かれていた。
床、壁、果ては天井まで。まるで部屋自体が、何かの魔法陣のよう。
木製の年季の入った台の上に、魔物の角のようなものが置かれていた。
「ご覧下さい」
アマシア姫が、その角を目に当てるよう示す。
どういうことだろうと思い、その角を手に取ると、底に穴が開いていることに気がついた。
穴の中を覗く。するとそこから、風景が見えた。
「これは……」
高いところから見下ろしているかのような視界。列になり歩く、魔物の姿。その数はざっと50といったところだろうか。
「巨人族です。南の方角から歩いています」
「こちらに近づいてきているんですか?」
「ええ、間違いなく」
俺はもう一度、ツノの中を覗き込む。
今まで相手にしてきた魔物たちとは違い、明らかに統率の取れた動き。二足歩行であり、腰や背中に剣や弓などの武器を所持していて、一定の知能を感じさせる。
そこでようやく、事態の重大さに気がついた。
『偶然通りがかっているわけじゃなくて、明らかにこの街を狙ってるのか』
心臓が、どくどくっと強く動いた。
『今までは俺ばかりが敵の拠点を攻めていたけれど。今回は防衛戦だな』
神竜となって上空から炎を吹き、迷いなく燃やし尽くす。
火が消えると、緑色に空気を淀ませていた瘴気も取り払われ、山からの美しい景色が見渡せた。
『よし。こんなもんだな』
俺は神竜姿で空を渡り、拠点にしている都市ダミリアスまで飛んでいった。
高級宿屋に戻り、頭の中のマップを確認する。
解放難易度Bでも問題なく戦える実力がついてからは、特定の地域を避ける必要もなくなり、近場を次々に解放して回った。
そのため都市ダミリアスの周囲は、見事に被支配地域がなくなっていた。
魔物の巣窟を崩壊させた先々で、持ち帰ることができる物は、根こそぎ持って帰った。
食用や、加工すれば衣類・武器などになりそうな魔物、そして運が良いときには、魔物がため込んでいたアイテムの数々。
この街の冒険者ギルドに持っていくと、大喜びで買い取ってくれた。
今はそれを、高級宿屋の支払いにあてている。
「街を救ってくれたのだから、料金なんていらない」と宿の主人は言ってくれていたけれど、「これからも気兼ねなく泊まりたいので、ぜひ受け取って欲しい」と伝え、「そういうことなら」と受けとってもらっている。
それから、道具屋や武器屋へ行って、役に立ちそうなアイテムを見繕うのも、ちょっとした楽しみになった。
基本は神竜スキルを駆使することで問題なくやれているのだが、備えあれば憂なしだ。それに、異世界の不思議なアイテムを物色するのは、思いの外、面白かった。
神竜となって支配された地域を解放するだけの、簡単なお仕事。
もとの世界に戻ったときにもらえるという解放報酬も、かなり貯まっていた。
このままいくと向こうの世界に戻った暁には、「金持ちで長生きをし、幸運な出来事にたびたび見舞われる極度のラッキーマン」ということになりそうだった。
俺は自分のペースで異世界を救い続けていた。
そんな俺のところに、血相を変えたアマシア姫がやってきた。
「どうかされましたか?」
俺は宿屋の食堂で、遅めの朝食を取っていた。まだ起きてから時間が経っていないかったので、気持ちはぼんやりしたままだった。
しかし彼女の言葉を聞き、一気に目が覚める。
「この街に、魔物の軍勢が向かってきています」
「どういうことですか?」
アマシア姫が住む城の一室。
その部屋には、至る所に文字と図形が描かれていた。
床、壁、果ては天井まで。まるで部屋自体が、何かの魔法陣のよう。
木製の年季の入った台の上に、魔物の角のようなものが置かれていた。
「ご覧下さい」
アマシア姫が、その角を目に当てるよう示す。
どういうことだろうと思い、その角を手に取ると、底に穴が開いていることに気がついた。
穴の中を覗く。するとそこから、風景が見えた。
「これは……」
高いところから見下ろしているかのような視界。列になり歩く、魔物の姿。その数はざっと50といったところだろうか。
「巨人族です。南の方角から歩いています」
「こちらに近づいてきているんですか?」
「ええ、間違いなく」
俺はもう一度、ツノの中を覗き込む。
今まで相手にしてきた魔物たちとは違い、明らかに統率の取れた動き。二足歩行であり、腰や背中に剣や弓などの武器を所持していて、一定の知能を感じさせる。
そこでようやく、事態の重大さに気がついた。
『偶然通りがかっているわけじゃなくて、明らかにこの街を狙ってるのか』
心臓が、どくどくっと強く動いた。
『今までは俺ばかりが敵の拠点を攻めていたけれど。今回は防衛戦だな』
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