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灰の山から現れた者

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姫を背中に乗せ、グラドシュフトの森まですぐに戻る。


「どうですか。声、まだ聞こえていますか?」

「ええ……むしろ強くなっています……!」

森に近づくと、アマシア姫はそう言った。


円になって話し合っていたヒュポスたちが、こちらに気付いて、顔を上げた。

俺はゆっくりと地上に降り立った。


「救世主様、どうかされましたか?」

一翼のヒュポスが話しかけてくる。

俺は背中の姫を降ろし、人間の姿に戻った。

「すみません、少し気になることがあって」

俺はヒュポスに断って、姫の方を見た。


「ユウト様……この森に何者かが封印されていませんか?」とアマシア姫は言った。

「!!」

ヒュポスたちは驚いて顔を見合せた。

「アマシア姫、封印を解くことはできますか? 閉じ込められているのは、ここにいるヒュポスたちの長なのです」と説明する。

アマシア姫は紅い鳥たちを見た。

「できる……かもしれません。少しお時間をいただいてもいいですか?」

「わかりました」と俺は頷く。

姫もコクリと頷き、灰の山をなった森に向いた。目をつぶり、両手を差し出して、何かつぶやいている。


「救世主様、こちらの方は……?」

「ここから南に下った場所にある、都市ダミリアスのアマシア姫です。声が聞こえたということなので、もしかすると……」

俺はヒュポスたちとともに、姫の様子を見守った。

すると姫は、しばらくして振り返った。

美しい額から、汗がしたたっている。

「すみません、ユウト様。とんでもない封印が施されています。

術式はおぼろげながらつかめたのですが、私の少ない魔力では、さすがにこの規模の封印術は……」

ヒュポスたちの周りに、落胆の空気が漂う。

俺は姫に言った。

「俺の魔力を使うことって、できませんか?」


ステータスを見た限り、俺の魔力は姫の5000倍くらいだ。

封印術についてはさっぱりだが、単純な魔力量なら力になれるかもしれない。


「ユウト様の、魔力ですか……すみません、失礼しますね」

そう言って姫は、控えめに俺の手を握った。柔らかい手は、発熱しているように、指の先まで熱い。

「!!」

アマシア姫が、ばっと顔を上げた。魔力量を確かめられたのだろうか。


「ユウト様、まさかこんな……」

「封印を解くことはできそうですか?」

アマシア姫は決意のこもった目で頷いた。

「力をお貸しください、ユウト様」


アマシア姫は、右手で俺の手を握り、左手を森へと向けた。

目をつぶり、魔法に意識を集中させている。

と、赤く眩い光が、辺りに広がった。

後ろにいたヒュポスたちから、どよめきの声があがる。


俺は現れた者のステータスを読み取る。

灰の山から姿を現したのは、赤き不死鳥だった。
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