勇者召喚されたのですが、わけあって【巨大神竜】となり、異世界都市を踏み潰してます!~魔物はちまちま討伐するより、踏み潰す方が楽だし早い~

Saida

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聞こえてきた声の主は

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マッド・ハルピュイアの大群に追われた俺は、Lv.3の神竜スキルを解放した。


『ん……な、なんだこれ!!??』

体の形が大きな変化を遂げたのが分かる。

空中竜の姿だったときには両翼に広がっていた感覚が、いまや、別の部位に移っている。


突如姿を変えた俺に対して、追いかけてきたハルピュイアたちも慌てて空中でスピードを落とし、俺に近づくのを躊躇っている。

急にスピードを落とした先頭集団に、後ろからついてきていた集団がぶつかり、仲間内でちょっとした混乱が起こっていた。


『今のうちだ』

俺はすぐさま、自分のステータスを確認する。

開放された神竜の新しい形態、そして能力値と特性を把握する。


『これは……いける!!』

俺は全身に神経を張り巡らせ、新たな体の形と自分の感覚をすり合わせていった。

Lv.1の空中竜で両翼を自由に羽ばたかせるように。

Lv.2の巨大竜で、本来の自分の何倍もの体で歩いたり、キング・オークと格闘したときのように。

Lv.3の新たな形態も、すぐに自分の感覚とつながって、意のままに動かせる感触が得られる。

まるで人間のときの姿で、手や足を動かすときのように。

俺は自在に、第三の竜の体を――首を操った。


『Lv3.多頭竜』

ガァァァァァァァ!!
ギャオォォォォォォォォォ!!
ギィィィィィアァァァァァァァァァ!!!


三つの長い首の先にあるそれぞれの頭で、怖気づいたり、仲間内でもめたりしているマッド・ハルピュイアたちに吠えかかった。

ハルピュイアたちの目の色が一瞬にして変わる。

敵意を剥き出しにした半人半鳥の魔物の大群は、黒い大波となり俺に押し寄せてきた。



三つになった竜の口を開く。

『火がだめでも、これならどうだ』

ステータスに書かれていた多頭竜の属性は、水。

三つの口から吐きだされた洪水のような大水が、突っこんできたハルピュイアたちに容赦なく襲いかかる。

ドッッッッッッ、バシャンッッッッッ!!

吐きだされた大水の圧は凄まじく、火なんてもろともしていなかったマッド・ハルピュイアを根こそぎ吹き飛ばしていく。

『こいつは爽快だ……!!』

運よく水に当たらずに近づいてきたハルピュイアを、俺は三つの口で次々にかみ殺した。

あれだけ大量にいたはずのマッド・ハルピュイアの軍勢が、いとも簡単に瓦解する。


もう負けだといち早く悟ったハルピュイアたちが、俺に背を向けて逃げ出そうとする。

『させるか、よっ!!』

ドッ……バシャ!
ドッ……バシャ!!
ドッ……バシャ!!!

口から次々に水の球を放って、敵前逃亡するハルピュイアたちを容赦なく撃ち落した。


『勝負あったな』

最後の一群れを打ち落とすと、俺は周りを確かめた。



大量のマッド・ハルピュイアが地面に転がっている。

そして視界の先には、燃え尽きた森。瘴気は完全に払しょくされたものの、そのせいで無残な灰の山が丸見えだ。

『またやりすぎた……? いやでも、森ごと魔物化してたしな。うんうん、これは仕方のないことだな。別に街と違って、誰かが住んでたってわけでもないんだし……』

俺はぶつぶつ胸の中で言い訳しながら、討伐した大量のマッド・ハルピュイアをスキルで異空間に収納する。

「ふぅ」

一件落着、と。じゃあ姫様を拾って、のんびり城壁都市ダミリアスに帰るかな。



――そこの方、お待ちください……!

どこからか声が聞こえた気がした。

「ん?」

俺は周りを見回す。声が聞こえる距離には、人はおろか魔物一匹いない。

しかし遠くの方から、こちらに飛んでくるものがあった。

『なっ……魔物か!!?』

俺は慌てて、飛んできたもののステータスを確認する。

「!!」


目の前に降り立ったものを見て、俺は驚愕した。
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