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21話 柔軟性
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「この前テレビで見たんだけどさ、体が固いと寿命が短くなるんだって。みんなどれくらい体柔らかい?」
「寿命が短くなっちゃうんだね」
「うん。まあ、体が固い人の中には運動不足の人も多いから、それも原因らしいけど」
なるほど。
「エクササイズの本なんて読んでいるのはそのせいか」
ナギトくんが茶化すように言う。
「別にいいでしょー。柔らかくするにはお酢を飲むといいって聞くよねー」
「それってデタラメよ。魚を調理する時にお酢を使って骨を柔らかくする手法が誤って伝わったらしいわ」
「そうなんですねー。さすがアカリさん。物知りですね」
「ありがと」
そう言いながら顔をそらすアカリちゃん。照れてるのかな。
「ちょっとみんなでやってみない? 前屈とか」
「いいよ。でも、固いかどうかなんて自分じゃわからないよね?」
「スマホで写真を撮ればいいんじゃない?」
「それなら、みんなが別々の人を撮れば見比べられるんじゃないでしょうか」
「リサ、ナイスアイディア! よし、じゃあ私から! リサ撮って」
「はい」
「せーの! どう?」
マヤちゃんはつま先のちょっと上くらい。
「撮りましたよ。結果は後で。じゃあ今度はわたしが」
「じゃあ私が撮るね」
「お願いします。どうですかー?」
リサちゃんはつま先に付くくらい。マヤちゃんより少し柔らかいって感じかな。
「はいオッケー。リサ柔らかいね」
「ありがとうございます。じゃあ次はヒカリさんで」
「私が撮るわね」
アカリちゃんがスマホを構える。
「ありがとう。えいっ!」
ぼくはつま先よりちょっと上かな。
「撮ったわよ。次はナギト?」
「い、いや俺が撮るからアカリ先にやれよ」
「そう? わかったわ」
「アカリすごいじゃん!」
マヤちゃんが声を上げるのも仕方ない。
アカリちゃんの手が床についていたから。指先じゃなくて手のひらがぺたーって。すごい。
「アカリさんは何かやっていたんですか?」
「ストレッチは毎日してるわ。小さい時に体が柔らかいと身長が伸びるって言われて信じてたから。効果は無かったみたいだけど。まあ習慣ね。ちなみに酢は効かなかったわ」
試してたんだ。
「よし、これで撮り終わったな。みんなの写真を見てみるか」
「何言ってんの? アンタがまだやってないじゃない。ヒカリちゃんカメラよろしくね」
「そ、そうだったな。まだやってなかったな」
ナギトくんがうっかりするなんて珍しい。
「じゃあやるか」
そう言ったナギトくんはお辞儀のような状態から変わってない。
「早くやりなよ」
「さっきからやってるよ……」
「え? まさかこれが本気? アハハ! ほんとに!? 全然じゃん! 撮って! ヒカリちゃんこれ撮って! おもしろーい!」
マヤちゃんはお腹を抱えて笑っている。
「マヤさん笑いすぎですよ」
マヤちゃんがはっとした表情をする。
「身体測定の時、男子でめっちゃ固い人がいたって聞いたけど、もしかしてナギト? もしかしなくてもナギトでしょ!」
「マヤ、後で覚えてろよ」
ナギトくんは怒りと恥ずかしさで真っ赤になっている。
「じゃ、じゃあ撮るね」
「早くしてくれ……」
ナギトくんはがっくりとうなだれた。
「よし、全員分揃ったね。並べてみよっか」
テーブルに五台のスマホが並べられる。
「アカリとナギト以外は同じくらいだね。やっぱりナギトのやつは何回見ても笑っちゃうね」
「それくらいにしてあげなよ。マヤちゃん」
「そうだね。ごめんねナギト。くくく……」
「お前悪いと思ってないだろ」
口調にとげがあるけど、大丈夫かな?
「でも、本気で怒ってないでしょ?」
え? そうなの?
「まあな。お前も別に馬鹿にしてるわけじゃないんだろ?」
「うん。でも、面白かったってのは本当だよ」
「ひと言余計だ」
マヤちゃんもナギトくんも笑っているから、大丈夫みたい? 険悪な感じはしないし。
「幼馴染だからわかるってことなのかな。なんだか羨ましいな」
「そうかもねー」
「そうかもな」
「ところでさ、逆はどう? 上体反らしだっけ?」
マヤちゃんが言う。
「そっちもやってみましょうか」
「俺は遠慮するよ」
「じゃあ、お手本のアカリから!」
「こうかしら」
そう言ってアカリちゃんは腰に手を当てて上半身を反らす。
すごい。逆さまのアカリちゃんと目が合っちゃった。
「さすがー。それじゃあ、リサと同時にやってみるから、どっちが柔らかいか見てて」
「いきますよー」
二人が同時に体を反らし始める。
今気づいたけど、これは何と言うか、その……。
「どう?」
「どっちのほうが柔らかいですかー?」
「え、えーとだな……」
「ねえ、どっち? なんで目そらすの?」
「そ、それは……。あんまり体を反らすと、む、胸が……」
「「え?」」
「ひゃあ! そんなとこ見てたの? ナギトのエッチ!」
「仕方ないだろ!」
「あの、ヒカリさんも見ていたんですか?」
「み、見てないよ」
「私の時そういうの一切なかったんだけど。何? そうよね。私には出っ張りがないものね」
アカリちゃんの言葉が冷たく響く。
これは誰だってわかる。
めちゃくちゃ怒ってる。
「「「「ごめんなさい!」」」」
一斉にみんなで体を直角に曲げた。
「あれ? とっさに謝っちゃったけど私たち悪くないよね?」
「寿命が短くなっちゃうんだね」
「うん。まあ、体が固い人の中には運動不足の人も多いから、それも原因らしいけど」
なるほど。
「エクササイズの本なんて読んでいるのはそのせいか」
ナギトくんが茶化すように言う。
「別にいいでしょー。柔らかくするにはお酢を飲むといいって聞くよねー」
「それってデタラメよ。魚を調理する時にお酢を使って骨を柔らかくする手法が誤って伝わったらしいわ」
「そうなんですねー。さすがアカリさん。物知りですね」
「ありがと」
そう言いながら顔をそらすアカリちゃん。照れてるのかな。
「ちょっとみんなでやってみない? 前屈とか」
「いいよ。でも、固いかどうかなんて自分じゃわからないよね?」
「スマホで写真を撮ればいいんじゃない?」
「それなら、みんなが別々の人を撮れば見比べられるんじゃないでしょうか」
「リサ、ナイスアイディア! よし、じゃあ私から! リサ撮って」
「はい」
「せーの! どう?」
マヤちゃんはつま先のちょっと上くらい。
「撮りましたよ。結果は後で。じゃあ今度はわたしが」
「じゃあ私が撮るね」
「お願いします。どうですかー?」
リサちゃんはつま先に付くくらい。マヤちゃんより少し柔らかいって感じかな。
「はいオッケー。リサ柔らかいね」
「ありがとうございます。じゃあ次はヒカリさんで」
「私が撮るわね」
アカリちゃんがスマホを構える。
「ありがとう。えいっ!」
ぼくはつま先よりちょっと上かな。
「撮ったわよ。次はナギト?」
「い、いや俺が撮るからアカリ先にやれよ」
「そう? わかったわ」
「アカリすごいじゃん!」
マヤちゃんが声を上げるのも仕方ない。
アカリちゃんの手が床についていたから。指先じゃなくて手のひらがぺたーって。すごい。
「アカリさんは何かやっていたんですか?」
「ストレッチは毎日してるわ。小さい時に体が柔らかいと身長が伸びるって言われて信じてたから。効果は無かったみたいだけど。まあ習慣ね。ちなみに酢は効かなかったわ」
試してたんだ。
「よし、これで撮り終わったな。みんなの写真を見てみるか」
「何言ってんの? アンタがまだやってないじゃない。ヒカリちゃんカメラよろしくね」
「そ、そうだったな。まだやってなかったな」
ナギトくんがうっかりするなんて珍しい。
「じゃあやるか」
そう言ったナギトくんはお辞儀のような状態から変わってない。
「早くやりなよ」
「さっきからやってるよ……」
「え? まさかこれが本気? アハハ! ほんとに!? 全然じゃん! 撮って! ヒカリちゃんこれ撮って! おもしろーい!」
マヤちゃんはお腹を抱えて笑っている。
「マヤさん笑いすぎですよ」
マヤちゃんがはっとした表情をする。
「身体測定の時、男子でめっちゃ固い人がいたって聞いたけど、もしかしてナギト? もしかしなくてもナギトでしょ!」
「マヤ、後で覚えてろよ」
ナギトくんは怒りと恥ずかしさで真っ赤になっている。
「じゃ、じゃあ撮るね」
「早くしてくれ……」
ナギトくんはがっくりとうなだれた。
「よし、全員分揃ったね。並べてみよっか」
テーブルに五台のスマホが並べられる。
「アカリとナギト以外は同じくらいだね。やっぱりナギトのやつは何回見ても笑っちゃうね」
「それくらいにしてあげなよ。マヤちゃん」
「そうだね。ごめんねナギト。くくく……」
「お前悪いと思ってないだろ」
口調にとげがあるけど、大丈夫かな?
「でも、本気で怒ってないでしょ?」
え? そうなの?
「まあな。お前も別に馬鹿にしてるわけじゃないんだろ?」
「うん。でも、面白かったってのは本当だよ」
「ひと言余計だ」
マヤちゃんもナギトくんも笑っているから、大丈夫みたい? 険悪な感じはしないし。
「幼馴染だからわかるってことなのかな。なんだか羨ましいな」
「そうかもねー」
「そうかもな」
「ところでさ、逆はどう? 上体反らしだっけ?」
マヤちゃんが言う。
「そっちもやってみましょうか」
「俺は遠慮するよ」
「じゃあ、お手本のアカリから!」
「こうかしら」
そう言ってアカリちゃんは腰に手を当てて上半身を反らす。
すごい。逆さまのアカリちゃんと目が合っちゃった。
「さすがー。それじゃあ、リサと同時にやってみるから、どっちが柔らかいか見てて」
「いきますよー」
二人が同時に体を反らし始める。
今気づいたけど、これは何と言うか、その……。
「どう?」
「どっちのほうが柔らかいですかー?」
「え、えーとだな……」
「ねえ、どっち? なんで目そらすの?」
「そ、それは……。あんまり体を反らすと、む、胸が……」
「「え?」」
「ひゃあ! そんなとこ見てたの? ナギトのエッチ!」
「仕方ないだろ!」
「あの、ヒカリさんも見ていたんですか?」
「み、見てないよ」
「私の時そういうの一切なかったんだけど。何? そうよね。私には出っ張りがないものね」
アカリちゃんの言葉が冷たく響く。
これは誰だってわかる。
めちゃくちゃ怒ってる。
「「「「ごめんなさい!」」」」
一斉にみんなで体を直角に曲げた。
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