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不格好なおにぎり

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 僕は出来上がったおにぎりを眺める。
 そのおにぎりは三角とも丸ともつかない形をしていた。はっきり言って不格好だ。

『おにぎりもまともに作れないの?』

 これは僕の彼女の言葉。いや、彼女か。確かに不格好だ。でも、僕はこの形に愛着がある。一生懸命作ったって感じられるから。でもあの子は一口も食べずにごみ箱へ捨てた。

 ――――
 そろそろ昼休みだ。
 僕は鞄からおにぎりを取り出す。

「倉木ー。助けると思って私におにぎりを一個わけてくれー」

 僕に話しかけてきたのは隣の席の佐藤さん。
 さばさばした性格で男女ともに人気のある人だ。

「どうかしたんですか」
「財布を忘れちゃってさー。今無一文なのさ」
「佐藤さんにしては珍しいですね。お金貸しますよ」
「いや、倉木のおにぎりを一度食べてみたかったんだ。だめかな?」
「なるほど。でも僕のおにぎりって不格好ですよ」
「不格好でも別にいいよ。頑張って作ってるって感じするし」

 ハッとして佐藤さんの顔を見る。

「どうした?」
「い、いえ。何でもないです。おにぎりどうぞ」
「サンキュー。お! 具に肉が入ってる! うまいよこれ。二百円でも買うレベル」
「ありがとうございます。ちょっとこだわりがあるんですよ。昨日の夜からたれに付け込んでおいたんです」
「昨日の夜から!? おにぎりにここまで手間をかけられるなんて倉木は良い旦那になるな」
「そんなことないですよ。彼女と別れちゃいましたし」
「そうなのか。悪いこと聞いたな。そういえば私もフリーなんだよね。私なんてどうよ?」

 佐藤さんはいたずらっぽく笑う。

「冗談はやめてくださいよ」

 僕は目を反らす。本当に心臓に悪い。美人であることを佐藤さんには自覚してほしい。

「悪い悪い。そうだ。明日もおにぎりを作ってきてくれないか? お礼はするからさ」
「お礼なんていいですよ。そんなに手間は増えませんし」
「そうか? ありがとな」

 ――――

 放課後。
 僕は荷物をまとめながら明日のおにぎりの具材を考える。
 佐藤さんはどんな具が好きなのかな。

「見て見てー。さっき佐藤さんを手伝ったら『ご褒美だ』ってジュースおごってもらっちゃった。あとね、佐藤さんの財布が意外と可愛かったー」
「いいなー。佐藤さんから何かもらえるなんて」
「もったいなくて飲めないよー」

 そんな会話が聞こえる。
 佐藤さんはかっこいいことするなあ。
 あれ? 佐藤さんって財布忘れていなかったっけ?

 ――――

 翌日。
 僕は少し早く起きた。
 不格好なおにぎりをいつもより多く作るために。
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