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第一章 最初の国
青年と鳥2
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インコよりは大きく、カラス程は大きくないその姿に、チャドが興味津々とばかりにすぐに近づいた。
「…お前、今言葉を喋ったのか?」
「パーロン!」
「やっぱりな。お前何処から来…」
「パーロン!パーロン!」
「パーロンなんて地名聞いた事もないぞ。お前、飼い主は…」
「パーロン!」
「……」
同じ言葉を繰り返す鳥にどうしたものかと首を傾げるチャドへエヴァは控えめに声をかけた。
「あの…パーロンっていう名前なんじゃない?」
「……」
一瞬固まったチャドが、あぁ…と納得したように姿勢を正すとまた鳥へ声をかけた。
「パーロン、何処から来た?飼い主は何処にいる?」
そもそも他にきちんと言葉が話せるのか、寧ろ理解しているのかさえ怪しいのではないかと疑いながらエヴァは眺めた。
「パーロン、フウノ、クニ…セシー」
首をちょこんと傾げながら辿々しく話すパーロンへチャドがそっと手を差し出した。
「お前頭が良いんだな、動物至上主義のイーサンが見ても驚く位だ。風の国から来てセシーって奴が飼い主か?」
「セシー、バカ、アホウ」
人を全く怖がる素振りも見せないパーロンはチャドが差し出した手の上に乗り上げ、そのまま軽快な足取りで肩まで登っていった。
(チャドって意外とああいう小動物とか好きなのかしら?)
勿論、エヴァも小動物の類は好きだし触れたいとは思うが、最初からあんな風に近づく事はできない。
空がいつの間にか白んできて、心なしか気分が良さそうなチャドの表情がうっすら見えた。
「チャド…そろそろ夜明けだけどその鳥も連れて行くの?」
「置いていったって仕方ない。どのみち風の国に入ったら飼い主の元に戻るだろ」
「…そうね」
答えは勿論分かっていたが、チャドの表情は一瞬にして堅く、声も低くなった。
切り替えの早さに内心戸惑いはあったが、気付かないフリをして毛布を片付けようと屈みこんだ。
「イシ!イシ!ホシイ、セシー」
「石?何言って…あ、おいパーロン!」
突然騒ぎ出したパーロンはチャドの肩の上で徐ろに羽を広げ、そのままエヴァへ向かって直進してきたのだ。
「…痛っ…何!?」
体勢を戻した瞬間に胸元辺りにパーロンが思い切りぶつかり何かを咥え込んだ。直ぐにブチっと切れる盛大な音がしたかと思うと、パーロンはあっという間に高く飛び上がった。
「パーロン!」
チャドの呼ぶ声も虚しく、パーロンはそのまま何処かに飛んでいき戻ってくる様子もない。
「何なんだあいつ…」
「ペンダント!」
「…それが何だよ」
「パーロンに今取られちゃったみたい」
「…石ってそういう意味だったのか」
慌てふためくエヴァに対し、チャドは冷静にパーロンの飛んでいった方角を見渡した。
服の中に隠れていたペンダントが、屈んだ時に滑って首からぶら下がったのがパーロンに見えたのだろうか。
(あの時…私寝惚けてたんじゃなくて、パーロンがペンダントを取ろうとしてたんだわ、きっと。だから毛布の中に…)
鳥だから光り物が好きなのか、はたまたこの石を知っていて取っていったのかどちらか定かではない。もし石の力を知っていたとしたら…
「石自体はもうルカの能力が入ってるし、第一あれが発動する時はお前の命が危険な時だ。パーロンの飼い主に渡ったとしても第三者が自ら引き出す事はできないはず。…とは言っても希少な陽の国の魔石だから取り戻さないとだな」
エヴァの考えをまた見透かしたようにチャドが答えた。
「直ぐに見つかるかしら…」
「さあな。人の言葉が理解できる頭の良い鳥だから隠れるのは上手いだろうが…飼い主が阿呆なら案外早く見つかる可能性はある。…行くぞ」
動物が絡んだ所為か、珍しくさっきから多弁なチャドに若干面食らいながら、ほんの少し今まで漂い続けていた緊張感が溶けたような気がした。
森の出口は案外近いらしく白く光る場所が僅かに見える。
ペンダント奪還という目的を一つ増やし、エヴァの足は風の国へと急いだ。
「…お前、今言葉を喋ったのか?」
「パーロン!」
「やっぱりな。お前何処から来…」
「パーロン!パーロン!」
「パーロンなんて地名聞いた事もないぞ。お前、飼い主は…」
「パーロン!」
「……」
同じ言葉を繰り返す鳥にどうしたものかと首を傾げるチャドへエヴァは控えめに声をかけた。
「あの…パーロンっていう名前なんじゃない?」
「……」
一瞬固まったチャドが、あぁ…と納得したように姿勢を正すとまた鳥へ声をかけた。
「パーロン、何処から来た?飼い主は何処にいる?」
そもそも他にきちんと言葉が話せるのか、寧ろ理解しているのかさえ怪しいのではないかと疑いながらエヴァは眺めた。
「パーロン、フウノ、クニ…セシー」
首をちょこんと傾げながら辿々しく話すパーロンへチャドがそっと手を差し出した。
「お前頭が良いんだな、動物至上主義のイーサンが見ても驚く位だ。風の国から来てセシーって奴が飼い主か?」
「セシー、バカ、アホウ」
人を全く怖がる素振りも見せないパーロンはチャドが差し出した手の上に乗り上げ、そのまま軽快な足取りで肩まで登っていった。
(チャドって意外とああいう小動物とか好きなのかしら?)
勿論、エヴァも小動物の類は好きだし触れたいとは思うが、最初からあんな風に近づく事はできない。
空がいつの間にか白んできて、心なしか気分が良さそうなチャドの表情がうっすら見えた。
「チャド…そろそろ夜明けだけどその鳥も連れて行くの?」
「置いていったって仕方ない。どのみち風の国に入ったら飼い主の元に戻るだろ」
「…そうね」
答えは勿論分かっていたが、チャドの表情は一瞬にして堅く、声も低くなった。
切り替えの早さに内心戸惑いはあったが、気付かないフリをして毛布を片付けようと屈みこんだ。
「イシ!イシ!ホシイ、セシー」
「石?何言って…あ、おいパーロン!」
突然騒ぎ出したパーロンはチャドの肩の上で徐ろに羽を広げ、そのままエヴァへ向かって直進してきたのだ。
「…痛っ…何!?」
体勢を戻した瞬間に胸元辺りにパーロンが思い切りぶつかり何かを咥え込んだ。直ぐにブチっと切れる盛大な音がしたかと思うと、パーロンはあっという間に高く飛び上がった。
「パーロン!」
チャドの呼ぶ声も虚しく、パーロンはそのまま何処かに飛んでいき戻ってくる様子もない。
「何なんだあいつ…」
「ペンダント!」
「…それが何だよ」
「パーロンに今取られちゃったみたい」
「…石ってそういう意味だったのか」
慌てふためくエヴァに対し、チャドは冷静にパーロンの飛んでいった方角を見渡した。
服の中に隠れていたペンダントが、屈んだ時に滑って首からぶら下がったのがパーロンに見えたのだろうか。
(あの時…私寝惚けてたんじゃなくて、パーロンがペンダントを取ろうとしてたんだわ、きっと。だから毛布の中に…)
鳥だから光り物が好きなのか、はたまたこの石を知っていて取っていったのかどちらか定かではない。もし石の力を知っていたとしたら…
「石自体はもうルカの能力が入ってるし、第一あれが発動する時はお前の命が危険な時だ。パーロンの飼い主に渡ったとしても第三者が自ら引き出す事はできないはず。…とは言っても希少な陽の国の魔石だから取り戻さないとだな」
エヴァの考えをまた見透かしたようにチャドが答えた。
「直ぐに見つかるかしら…」
「さあな。人の言葉が理解できる頭の良い鳥だから隠れるのは上手いだろうが…飼い主が阿呆なら案外早く見つかる可能性はある。…行くぞ」
動物が絡んだ所為か、珍しくさっきから多弁なチャドに若干面食らいながら、ほんの少し今まで漂い続けていた緊張感が溶けたような気がした。
森の出口は案外近いらしく白く光る場所が僅かに見える。
ペンダント奪還という目的を一つ増やし、エヴァの足は風の国へと急いだ。
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