上 下
52 / 60

52.知りたい

しおりを挟む
 
「……ッ、ん……くぅっ」

 くぐもった声と、荒い息づかい。そしてくちゅくちゅと響く粘着質な水音。
 そのどれもがプラドの耳を犯し、興奮を昂めた。
 排泄しか知らなかったソラの秘所。今はプラドの指が二本入り込み、わざと音を立てるように抜き差しされている。

 初めは戸惑い足を閉じそうになったソラだが、大丈夫だとキスをしながらなだめたら、素直にしたがった。
 ソラは想像もしていなかった行為と快楽に、怯えたように体を震わせたが、プラドを止める事はなかったのだ。
 それはおそらく、プラドを絶対的に信用しているからなのだろう。

 そして今は、控えめに足を開いて声を抑えながら、与えられる快楽に耐えていた。
 ソラは両手で口を塞ぎ必死に声を抑えるが、瞳からは抑えられなかった涙がこぼれていた。

「はぁ……っ、メルランダ、大丈夫か……?」

 こぼれる涙を舐め取りながら、荒い息のプラドが問う。
 優しい声につられて開いたまぶた。長いまつ毛の隙間から潤んだ瞳がのぞき、ランプの灯りできらめいた。

 日が沈んでようやく、明かりも付けずにベッドに入ったのだと気付いた。
 気づいてすぐにランプへ火を灯したが、ソラはいやいやと首を振った。
 おそらく羞恥心からか明かりを嫌がったのだろうが、暗いと何も出来ないだろうと説明すれば、少し悩みながらも納得してくれた。
 正直、暗闇でもかわいがれる自信はあるが、今のソラを一つも見逃したくなかった。

 だってこんなにも美しいのに。

 恋人に嘘をついてでも眺めていたいなんて、我ながら浅ましい。自嘲し、それでも止められずに見つめながら、三本目の指をゆっくり挿れていった。

「ふぅ……んっ」

 とろとろにとろけたソラは、指が増えた事に気づかないようだ。
 ただ中を擦る刺激が僅かに強くなって、また体を跳ねさせた。

 プラドが用意していたローションは、ポーションの成分が入っている。痛みを和らげリラックスさせる効果がある物だ。
 ソラに苦痛を与えないように、気持ちよさだけを拾えるように。ゆっくり時間をかけて愛撫を続け、ソラが快楽でトロトロになった頃に、プラドはソラ自身にも手を伸ばす。

「ぅん……っ、はっ、ぷらど……」

 それはすっかり熱く硬くなり、透明な液で濡れそぼっていたが、まだ後ろだけの刺激ではイケないようだ。
 しかし確実に快楽を覚えようとしている。指を出し入れするたびに腰が揺れ、それに合わせてピクピクと脈打つ。
 ソラの中は熱く、柔らかい肉壁できゅうっと締め付けてくる。
 ここに自身を埋めたら、どれほど満たされるだろうか。
 だが──

「──……はぁ、メルランダ……ッ」

「ぅ、あ……?」

 プラドは強く奥歯を噛み締め、何かに耐えるような顔をしてソラの体をうつ伏せにした。
 突然体の向きを変えられたソラは、とろけきった顔のまま頬をシーツに沈めて、ぼんやりとプラドを見上げる。
 長い髪が背中に汗で張り付き、体のラインを流れる様すら艶めかしい。
 速い呼吸で上下する背中をつーっと指で辿れば、大袈裟なほどソラの体が反応する。
 腰を掴んで体の下に枕を入れれば、指を抜かれた穴がひくひくと卑猥な姿をプラドに見せつけた。

 ふぅっ、ふぅっ、と、プラドは食いしばった歯から野獣のような息を吐く。
 ジー……、とズボンのジッパーを下ろせば、痛いほど勃ったものが待ち望んでいたかのように勢いよく飛び出してきた。
 触ってもいないのに先走りで濡れたそれは、目の前の恋人を欲して脈打つ。

「……っ、あともう少しだけ……付き合ってくれ」

「……プラド……──?」

 プラドのどこか苦しそうな声が気になったのか、ソラは囁くような小さな声で名を呼ぶ。
 しかしプラドは返事をすることもなく、ソラの細い腰を掴んでさらに上げさせ、自身をあてがった。
 そして……

「ふ、ぁ……!? んっ、んっ!」

「はぁっ、はっ、く……っ!」

 閉じた太ももの隙間にねじ込み、激しく腰を振った。
 固く熱いものがソラの陰囊と裏筋を擦り上げ、強い刺激に思わずソラの体は逃げそうになる。
 しかしプラドはそんなソラの体に背後から覆いかぶさり、逃すまいと腕の中に閉じ込めた。
 獣のように荒々しく呼吸を繰り返しながら、ひたすら己の快楽のために体を動かす。
 その動きに合わせて、胸の中の細い体が跳ねた。

「んんっ、 はぁっ、ぅんん……っ」

「……ッ、はぁ……っ!」

 ぐちゅぐちゅという水音と共に、二人の体液が混ざって床に落ちていく。それが潤滑油となって滑りが良くなり、さらに激しくなる快楽。
 ソラは声を出すことを耐えるように、必死に唇を強く噛む。
 だがそれでも零れる吐息は熱を帯びていて、十分すぎるほど甘い。
 やがて限界を迎えたプラドが一層強く腰を押し付けた瞬間、ソラの背中が大きく仰け反った。

「ん……っ! ふ、ぅ……っ」

 プラドがソラの太ももに欲を吐き出せば、腕の中の体も大きく跳ね、余韻に浸るようにぴくぴくと痙攣する。
 プラドは密着させていた体を一度離し、ハッハッ、と速い呼吸を繰り返すソラの額にキスを落とした。

「悪い……無理をさせた」

 慣れない快楽に耐えられず流した涙を優しくぬぐってやり、乱れた髪を撫でる。

「もう終わったからな……泣かせて悪かった」

 まだ呼吸が整わないソラの耳元で囁やき、よく頑張ったと頭を優しく撫で続ける。
 ソラの体が落ち着いたら隅々まで洗浄してやって、自分の服を着せて抱きしめて寝よう。
 そう、プラドが考えていたら、ソラがぼんやりと自分を見ている事に気付いた。

「……おわり……、なのか?」

「あぁ……もう何もしないから安心しろ」

「……」

 そう伝えて、もう休んで良いと安心させるように頭をぽんぽん撫でる。
 しかしソラは、ぼんやりしているはずなのに、何かを訴えるような視線をプラドに送る。

「プラド……」

「うん?」

 腕の中で動こうとするから体を離してやれば、ソラはシーツを握りしめていた手を後ろに伸ばした。

「ここを……あつかったのは何故だ……?」

「……っ!」

 そして、あろうことか、ソラは自身の尻に手を当てた。
 プラドが息を呑むなか、ソラは上げられた白く柔らかな尻たぶに指を食い込ませ、見せつけるように割り開く。白い肌に赤く色づいた秘肉が、震えながら姿を現す。

「……なぁ、プラド……」

 駄目だ、とプラドは叫びそうになる。

「私は、何も分からないが……ここに入れたかったんじゃないのか……」

 違う、なんて、言えるはずもなく。けれど──

「プラド、教えてほしい……」

 ──やめろ、駄目だ、と歯を食いしばる。
 お前から誘われたら、俺はただの馬鹿な男になってしまう。
 何も知らない無垢で綺麗なソラ。
 いきなり男を教え込むなんて、酷なことはしたくない。
 傷つけたくない、怖がらせたくない、なのに──

「私はプラドと、すべてを知りたい……」

「……クッソ……ッ!!」

 ──人の気も知らないで……っ!
 抵抗できるはずがない誘いに激怒する中、プラドの理性を繋ぎ止めていた最後の糸が、プツリと切れた。

 
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...