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13.プラドの災難
しおりを挟む一つ目の課題を終え、二人はすぐに次の討伐へ向かった。
その途中で、ソラは思考を巡らせる。
プラドの中に潜んでいるであろう魔術を、どうやって見極めるかを……。
近くで観察しても魔術を使わせても分からないとなれば、他の方法を手当り次第試すしかない。
なので手始めに、
「うおっ!?」
「ダイジョウブかプラド」
コケさせてみた。
プラドが足を踏み入れる場所にこっそり魔術を仕込みくぼみを作ったのだ。
焦りなどの感情の昂りは身体の魔力の流れを変える。そこで異物が浮き出やしないかと思ったが、体を支えるフリをしてプラドに触れてもおかしな魔力は見当たらない。
「うぉわ……っ!?」
ふむ、これではダメか、と検証結果を確認していたソラから、プラドは凄い勢いで体を離した。
コケそうになった時より焦る様子を見せたので、今の方が良い結果が出るのではないかと更にプラドに触ろうとしたが、焦る様子で逃げられてしまう。残念である。
「さ、さわ……っ、気安く触るんじゃないっ!」
「すまない」
そう言って思いっきり距離を取られてしまったので、ソラはしかたなく一つ目の検証を終えた。
終えたのならば、つぎに取り掛かるまでである。
大股で歩くプラドに小走りで付いて行くこと数分。ソラにとって都合よく魔物が現れた。
狼型のよく見る魔物で、先行していたプラドが小さな炎を出してぶつけた。
あっという間に炎に包まれた魔物は断末魔の声すら上げる事無く倒れる。そこでソラは、
「うわっ!?」
「スマナイプラド」
森に燃え広がらないように、と銘打って魔術で水を作り出す。それを手が滑ったかのように見せかけてプラドにも大量に浴びせた。
冷却処方である。稀ではあるが、冷やす事で形を変える魔術が存在する。もしプラドにかかった魔術がその類であれば何かしらの手がかりがあるかもしれないと思っての荒治療だ。
ただプラドだけ濡らすのは申し訳ないのでソラも一緒に水をかぶった。少し寒い。
何はともあれ検証である。
水を吸ったローブが重いのでそこら辺に脱ぎ捨て、びしょ濡れのままポカンと突っ立っているプラドに駆け寄った。
「スマナイ、手ガ滑ッタ」
まだ唖然としているのを良いことに、ソラはプラドの頬に触れてみる。よしよし程よく冷えているな。
なんて、実験体の材料を確認するように触れるソラ。
材料は整ったと無遠慮に顔をペタペタ触り、脳付近に異常は無さそうだと確認した。
次に触れたのは右手だった。ソラは左手でプラドの手を取り、右手の指先を相手の手首に添える。
ふむ、脈は通常より速いがおかしな魔力は感知できない。
じゃあプラドを蝕む魔術はなんなのか、と悩むソラ。
そこで、ふとあまりにもおとなしいプラドに気がついた。
先程からなすがままのプラドだが、ついさっきまでの威勢はどうしたのだろうか。
そう思って視線を上げたら、なんだか真面目な表情をしたプラドの顔があった。
とてつもなく真剣な眼差しで、一点を見つめて離さない。
いったい何をみているのかと、プラドの視線を辿っても自分が着ている濡れたワイシャツしか無い。
まぁおとなしくしてくれるなら良いかとまた検証を再開しようとした時だった。
「──~~~~ッ!!!!」
「ぅ、わっ?」
突然、プラドから両肩を掴まれて思いっきり距離を置かれた。
そして、
「おまっ、えはっ、何がした……っ、バカヤロウッ!!」
と、叫ばれてプラドが着ていたローブで包まれてしまった。自分のローブがあるのだが。
自分の物より大きいぶん重たくて、一度脱ごうとするのだがプラドがそれを許さない。
胸元のローブの合わせを両手でしっかり握られ、絶対に脱ぐなよとの意志が伝わってくる。
仕方ないのでそんな謎の格好のまま温度を上げる魔術を発動させた。服を乾かす為だ。
本来なら水を操り蒸発させたほうが早いが、ついでに温法療法を試す為だ。
その間もプラドは、ソラの服が乾くまでソラに着せたローブを決して離さなかった。プラドの体温が上昇するのは、はたしてソラの魔術のせいなのか……
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