デレがバレバレなツンデレ猫獣人に懐かれてます

キトー

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番外編

猫獣人はかっこいいって言われたい(発売記念SS)

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「だから! 俺の何がダメだってんだっ!」

「だーかーらー! リーダーシップがダメダメだってんだよっ!!」

「どこがダメなんだよ! ちゃんと奴らと協力して倒したろうが!」

「お前が一人で暴れてただけだろが! お前のはリーダーじゃなくてボスザルなんだよ!!」

「サルじゃねぇ獅子だっ!!」

 いや猫だろ。
 言い合う二人を眺めながら、決して思った事は口には出さない。
 今俺の目の前では、アムールと冒険者ギルドの職員が言い争っている。
 争いの原因はアムールの昇格試験結果だ。

 アムールは上級冒険者。それはとんでもなく凄い事なんだ。冒険者でも一握りしかなれない地位にアムールは居る。
 だが、それよりもっと上があるのは事実。それが特級冒険者になる。
 特級ともなると名を知らない者など居ないほど有名になり、国王からも一目置かれるほどなんだそうだ。
 そんな特級に、突然アムールがなると言い出した。ギルドマスターに詰め寄ると「じゃあまずは連携して魔物を倒せるようになれ」と言われたらしい。
 そして結果は、二人の会話の内容通りだ。

「山程魔物を倒してやったろうが! 何が不満なんだっての」

「あのなぁ、アムール……」

 納得いかん! と腕組みするアムールに、アムールと話していたギルドの職員のおっさんは分かりやすくため息を吐いた。

「確かに実力だけならお前は十分すぎるほど持ってる」

「じゃあ特級で良いじゃねーか」

「何度も言ってるだろ? 特級ってのは国からの依頼や貴族からの依頼も請け負うんだ。実力だけじゃダメなんだよ。冒険者ギルドの顔として気品や人間性も問われるんだ」

「俺の気品と人間性がダメってのか」

「そうだ」

「何だとてめぇっ!」

「アムールすとーっぷ!」

 ギルドのおじさんに向かって尻尾を太くしたアムールの間に入る。
 アムール知ってる? 気品があって人間性が良い人はそんな簡単には怒らないんだよ。

「何だよ邪魔すんなチビ!」

 そして人に向かってチビって言わない。

「まったく、どうしたんだアムール。昔は特級なんて面倒くさいって鼻で笑ってただろうが」

「そうなんですか?」

「あぁ、貴族や国なんか相手してやれるかって言ってたんだよコイツは」

「へー……」

 おっさんの話を聞いてアムールを仰ぎ見れば、腕組みしたままそっぽを向く。
 なぜ急にアムールが特級を目指しだしたのか、俺には思い当たる節があった。

『へー、凄いですね特級冒険者って! かっこいいなぁ』

 トワとエモワから特級冒険者の話を聞いた際に、そう言ったのは覚えてる。
 それからだ、アムールが急に特級を目指しだしたのは──

「とにかく俺が強えのはわかってんだろ! だったら面倒くせぇのはとばして──」

「ねぇアムール」

「あ゛!?」

「特級もかっこいいけど上級冒険者の方がかっこよくない?」

「……は?」

「だって地位とか気にしないで自由に生きたいからあえて特級にならないんだろ? そんな生き方ってかっこいいよね。それに──」

 特級になると、恩恵は山程あるが大事の依頼を断れないデメリットもある。
 そんな依頼は滅多に無いが、もしアムールが特級になれば、そのうち国をまたいで依頼をしなければならない日が来るかもしれない。当然俺は付いていく事など出来ないだろう。

「──それは、寂しいな……」

「……」

 そばに居てほしい。そんな思いでアムールの服を掴めば、アムールは分かりやすく嬉しそうな顔をした。

「……ったく、しゃあねぇな俺のパートナーはよ。あとちょっとで特級だったけどそこまで言うなら上級でいてやるよ」

「うん、ありがとアムール」

 やっぱり腕組みしたままだが、ふんふんと満足そうに鼻をならしているので納得はしたようだ。
 まったく、しょうがないな俺のパートナーは。
 なんて思っても尻尾を絡ませられると可愛く見えちゃうんだから、仕方がないのは俺の方かもしれない。

「キミの人間性がアムールにもあったら丁度良かったんだがなぁ……」

 不意に、おっさんがほっとした顔で俺に向かって呟いた。

「足して二で割ったら丁度良いですかね」

「いや割っちゃダメだよ」

「……」

 このおっさんも大概失礼だ。


【おわり】


本日書籍が出荷となります!
おそらく書店に並ぶのは17日以降かと思います。
イサム先生の素敵なイラストが目印ですのでぜひ手に取ってみてくださいね(⁠^⁠^⁠)
そしてもしご購入いただけた場合はぜひカバーをはずしてみてください……可愛いんで笑
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