この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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番外編

重要な問題(会長✕ルイ)

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※もし会長とくっついたら、のお話。当たり前のように同居してます。


「エアコン買いましょうか」

「は?」

 6月の梅雨の晴れ間だった。
 例年を上回る気温を記録したそんな日、同居人の先輩、兎月ヘイヤからの突然の提案。

「……珍しいですね」

「何がです」

「だって……真冬に暖房器具を買おうって言った時は、散々渋ったじゃないですか」

「寒さは厚着をするなり暖かい飲み物を飲むなりすれば暖が取れるでしょう。しかし暑さはどうしょうもない。それに度が過ぎれば危険だ」

「そういう物ですか……」

「ちょうど今は安く手に入るでしょうし」

 そう言って、ソファーに腰掛けた彼は読んでいた本のページをめくった。
 そんな彼を俺は少し離れた椅子から見ていたが、その様子は暑そうにも見えない。
 彼の言葉に説得力はあるが、やはり何となく疑問を残してしまう。

「で?」

「ん?」

 だんまりになっていた俺を見かねてか、彼が視線と声を投げかける。

「エアコン、どうしますか?」

「あぁ、俺はかまいませんよ。むしろ涼しい夏を過ごせるなら大歓迎です」

「では決まりですね。今度の休みに見に行って来ましょう」
 
「あ、俺も行きます」

「4、5件回りますが大丈夫ですか」

「そんなに!?」

「他店と見比べてなるべく安い物を、なおかつ性能の良い物を購入するためです」

「‥‥‥どケチ」

「ケチでけっこう」

 この話題は済んだと言うように視線を本へと戻してしまった彼。
 暇になった俺は立ち上がり、冷蔵庫へよく冷えたジュースを求め向かう。
 なんだかんだ言っても、エアコンは悪い話ではない。
 日に日に暑さが増すのを感じていたこの頃、しかし冷房なんて物は望めないと思っていたのに。

 この夏は快適に過ごせそうだな。

 そう思いながら鼻歌混じりで半透明のグラスにジュースを注ぐ。
 冷たいジュースは少し火照った喉を通り過ぎ、冷やしていった。



 そんな同居人の後ろで本を片手にした男は、少々不機嫌だった。

 寒い時は自分から寄って来たくせに……。

 それは、ただ己で暖を取られていただけだと知ったのは、暑さを感じ始めてから。

 エアコンが来たら真冬なみに部屋を冷やしてやりましょうか。

 エコじゃないとか関係ない。
 これは環境より重要な問題なのだから。


end


 ───────────

 これからボチボチ番外編を更新できたらと思っています(^^)
 リクエストしてくださった方々ありがとうございました!
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