この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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3.俺と先輩の関係

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 目を覚ますと、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
 背中には温もり。また背後から先輩に抱きしめられてついでに腕枕までされているらしい。
 こんな目覚めは最悪だ。いつも胸の奥がチリリと痛むから。

 強引で自分勝手で俺様な白伊先輩。
 でも、ふとした瞬間は優しくて、いざという時は助けてくれて、自分勝手なようでいつも俺の事を考えてくれているそんな人。
 だけど、俺は先輩から友人としか言われていない。キスもして、抱きしめられて、恥ずかしい事もたくさんしたけれど、先輩は前に友人だからするんだと言った。つまり、そう言う事なんだろう。
 俺は性欲処理の相手、セックスフレンド。

 だったらもっと好き勝手したら良いのに、有り体に言えば入れられたらいい訳だから。
 なのに先輩はしっかり前戯を行う。それはもうしつこいほど。
 丁寧って言えば響きは良いが、あれはしつこいって言うんだ。
 いちいち胸なんか触らなくて良いし、舐めたり噛んだりはもっとしなくて良い。
 たまに肛門まで舐められて驚愕するし、しなくて良いって言ってるのにちんこまで舐めてくる。
 キスだって、余計な事だと思う。なのに、何度も何度も角度を変えて口づけられてイかされて頭も穴もとろとろになって訳分かんなくなった頃にようやく入れられるのだ。

 正直、しんどい。
 俺の腹あたりを引き寄せていた先輩の腕をどけながら俺は思う。
 こんな扱い止めてほしい。セックスする時だって、何度も俺の名前を熱っぽく呼ぶのも止めてほしい。
 そして気を失うように眠って迎える朝に抱きしめられていると苦しくなる。
 だってまるで、恋人同士が迎える朝みたいじゃないか。
 錯覚してしまうのだ。愛されてるってさ。

「ん……おきたか……」

「おはようございます先輩」

 まだ眠たそうな目のままのそのそと起きてきて背後から俺の肩に頭を乗せる。

「腹減ったな……」

「食堂行きますか?」

「めんどくせ……ここで食おうぜ。カップ麺で良いだろ」

 俺の腹に腕を回しぐりぐりと頭を肩に押し付けて、まるで甘えているような仕草に少し可愛いと思ってしまう。
 しかし服に忍び込もうとする手は全くもって可愛くないのではたき落としておいた。

「なぁ、またあの耳が付いたやつ着ろよ」

「嫌ですよ、すぐ写真撮ろうとするじゃないですか」

「何で嫌なんだ」

「先輩も恥ずかしい写真撮ってやりましょうか?」

「例えば?」

「えーと……猫耳付けたりとか……」

「良いぜ買ってくるからお前とツーショットな」

「やっぱ無し! 今の無しでっ!」

 この流れは俺も猫耳にされるやつだと必死で止めた。しかし後日しっかり猫耳カチューシャとご丁寧にセットの尻尾まで買ってきてつけられた。
 先輩もつけて写真を撮らせてくれたがその後は百枚ぐらい俺が撮られた。

「そこ雌豹のポーズで少し首をかしげろ。恥ずかしそうに上目遣いでこっち見るなそのまま襲うぞ今のもう一回!」

「…………」

 なんで俺はこの人が好きなんだっけ。
 
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