この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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93.自覚

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 気が付くとベッドだった。
 確かシャワー室で、尻なんかで訳も分からない快感を与えられて、それだけでもいっぱいいっぱいなのに非情にも前もいじられて、悲鳴に近い声を上げながら果てたような記憶がある。

 なのにいつの間にベッドに来たのだろう。ぽーっとした頭のまま俺を押し倒すように覆いかぶさる先輩のキスを受け止めて頭に絡まる腕に手を添えたら、先輩はもう服を着ていなかった。

「んん…………ぅん……はぁ……んっ……」

 服越しでは無い、直接感じる先輩の熱に浮かされながら何度も角度を変えて落とされるキスに応える。
 ちょっと強引なキスは呼吸が上手く出来なくて少し苦しくて、でも頭がしびれるほど気持ちよくて、何もかも任せてしまいたくなる。

「ルイ……良いか……?」

 唇をぺろりと舐めながらキスを終え、鼻先がくっつくぐらいの距離でそう訊かれた。
 正直、何が? と思ったが、先輩から与えられる熱だとか、頬を撫でる手だとか、ギラギラしてる目で今すぐ何もかも奪ってしまいそうなくせに、慣れない我慢をして俺の返事を待つ気まぐれな優しさだとかに絆されて、うなずいている自分がいた。

 そして先輩の顔を両手で持って自分からキスをする。
 どうやら俺はキスは嫌いじゃないらしい。でも出来ればこれぐらい手加減してほしいと言う思いを込めて触れるだけのキスをした。唇の柔らかさを確かめ合う、そんなキス。
 すると先輩からも返され、柔らかなキスを何度もしてくれたから次第にうっとりしてきて先輩の首に腕を回す。
 たぶん俺は、この時頭が馬鹿になっていたんだと思う。
 先輩になら何をされてもいいなんて思ってしまっていたのだ。
 だから先輩の手が俺の足に回って肩に担がれ、足を大きく広げる格好になっても何の抵抗もしなかった。
 しかし、ついさっきまでいじられていた尻の穴に一層熱くて硬いものが擦り付けられた時にさすがに我に返り、今更ながら焦った。

「は? え!? んぁっ、ま、まって……っ!!」

「ここまで煽られて待てるかバカ野郎……っ」

 とろんとしていた目を見開き先輩を見れば、瞳孔の開いた瞳が俺を射抜いていた。
 あまりに強くて熱い眼差しに一瞬怯んだら、それを見越したように先輩が腰を進めてきて、昂ったものの先端が入ってしまった。

「ひっ、あ……おっ、きい……っ」

「これ以上煽るな……くそ……っ!」

「あぁっあぁぁ──っ!!」

 指とは比べ物にならない質量に思わず言葉をこぼしたら、それに反応するように先輩のものが脈打ち、先輩は苦しげに息を吐いて一気に腰を打ち付けた。
 ズドンと貫かれた衝撃でチカチカと軽いめまいを起こす。しかし、散々慣らされたからか、それとも謎の液体のおかげなのか、それほど痛みは感じず受け入れていた。

「あー……すっげぇお前の中あちぃ……」

「あ、う……」

 酸素を求めるようにハクハクと口を揺らす俺の額に先輩が口づけた。
 そのまま続けて涙で濡れたまぶたや火照った頬、最後に唇に落として俺を慰める。
 子供をあやすようにとんとんと背中を叩きながら抱きしめられると少しだけ呼吸が落ち着き、俺も先輩の首にまわしていた腕で抱きしめ返して頬を擦り寄せた。
 短く早い呼吸を繰り返しながら先輩の鼓動を肌に感じる。
 明るい部屋でする行為にしては恥ずかしくて電気消して欲しかったな、なんて頭の片隅で考えるが、今更どうでもいいかと諦めて先輩の肩口に顔を埋めた。

「ん……あ、あ……まって……まだ……」

 抱きしめ合っていた体勢のまま次第に体を揺らされて、先輩のものが俺の中を擦る。

「もう待てねぇよ……お前が可愛いことばっかしてくるのが悪いっ」

「ぁんっ、あ、あっ、あぁ……っ!」

 肌を重ね合わせたまま揺するだけだった動きはだんだんと激しくなり、腰を引いて肌を打ち付けるものへと変わっていった。

「ひっ! あっ! まって、まっで……っ!! そこ、だめっ! ひぁあっ!」

「だめじゃねぇ、ここが良いんだろ? んなチンコにくる声出しやがって……!」

 シャワー室で散々いじられた場所を亀頭部でゴリゴリと刺激され気持ち良すぎて呼吸が出来ない。
 溺れてしまいそうで必死で先輩の背にしがみついたら、先輩も強く抱き寄せてくれて更に強く貫かれる。

「あ、あんっあぁ───っ」

 中を強引なまでに攻められて、前も俺と先輩の腹に挟まれて擦られて、どこが気持ちいいのかも分からないまま俺は白濁を飛ばした。

「──くっ」

 俺が果てて少ししたら腹の奥に熱を感じ、先輩もイッたのだと分った。
 過ぎた快楽に付いて行けず酸欠状態の俺は、忙しなく胸を上下させながらしがみついていた腕を力なくベッドへ落とす。
 ずるりと引き抜かれる感覚に身震いさせ、下ろされた足もされるがままに横たえていた。

「まだ足んねぇが……流石に限界か」

 何やら恐ろしい事を言われた気がしたが、聞こえないふりをして瞳を閉じる。すると、あっという間に睡魔に襲われて夢の住人がこちらに手招きをしていた。
 そんな脱力した体を先輩の長い腕が包み込むのが分かり、俺は素直に甘えた。

「俺以外に触らせんじゃねぇぞ……」

 まどろみの中で言われた言葉に、先輩以外に触らせるわけ無いだろと怒りそうになった自分に驚く。
 なんだよそれ、それだとまるで、先輩なら良いみたいじゃないか。
 その考えに、また驚いてしまう。
 しかし、少し強引だが何だかんだ受けいれてしまっている自分がいるのは確かだった。
 他の人から、会長から触られた時はあんなにも怖かったのに、なぜ先輩ならば受けいれてしまうのだろうか。
 考えて、ストンと心に落ちてきた。
 あぁ、そうか、俺はきっと先輩が────

 先輩の腕の中でうとうととしながら思考を巡らせていたが、限界が来て考えるのを止めた。
 そのまま俺は眠りにつく。夢の中に迷い込むその直前に、最後に残った思考が俺の心に影を落としながら。
 あれ、そう言えば、俺、先輩から、友達としか、言われてない、な……と。


【一章完】


 ────────────────

 ここまでを一章とし、一旦終わりとさせていただきます。
 二章はあまり長くなる予定はありませんが、次の更新は作者の都合により7月下旬か8月上旬頃とさせていただきます。
 しばらく休載となりますが待っていていただけると有り難いです!
 では、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
 
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