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89.鏡に映る自分の姿
しおりを挟む何だか一時的に会長と先輩が仲良くなったように見えたが、やはり優等生と不良は相性が悪いらしくその後は言い争いに発展していた。
ちなみに先生は蚊帳の外だ。頑張れ先生。
「その汚い手を離せと言っているのが分かりませんか?」
「ハッ、俺の手が汚いってんならテメェの手は腐ってんだよ。二度とコイツに触んな」
「あの、二人とも落ちつ……」
「「うるさいストーカー」」
「……」
頑張れ先生。
泣きそうになっている先生を思わず慰めそうになっていたら、それより先に先輩が先生を掴んで投げた。
会長の方に突っ込んで行った先生を会長はするりと避けたが、その間に俺は先輩から抱えられる。
「うわっ、ちょっ……先輩!?」
横抱きにされて慌てて落ちないように先輩の首に腕を回すが、いわゆるお姫様抱っこ状態のまま準備室を出ようとするから更に慌てる。
「おいこら何すんだ白伊!」
「どこに行くつもりです白伊ナイト」
突然物のように投げられて当然怒る先生と、引き止めようとする会長を先輩はチラリと見て、「いい加減こいつを休ませるんだよ」と一喝し準備室を出た。
正直あまりここに留まっていたくなかったから連れ出してくれるのは有り難いが、この格好は良くない。
だって、お姫様抱っこだぞ。
すれ違う人すれ違う人全ての視線がこちらに集まりたまったもんじゃない。
「先輩! 恥ずかしいんで降ろしてください!」
「恥ずかしいなら顔埋めとけ」
「いや、そうじゃなくて……」
抱っこされているのが恥ずかしいから言っているのに、降ろす気はさらさら無い様で、仕方なく顔が見えないように先輩の胸に埋めた。あれ、コレはコレで更に恥ずかしいな。
しかし今更顔を上げて好奇の目に晒される勇気は無いので大人しく運ばれていたら、着いたのは俺の部屋だった。
「おら、ドア開けろ」
「あ、はい」
言われて、顔を上げ両手が塞がった先輩の代わりに手を伸ばしてドアノブをひねる。
部屋に入ったらそのままシャワー室に連れて行かれた。
「あの! ちょっと! 先輩!?」
「あ?」
あ? じゃないだろ。
やっと降ろしてもらえたと思ったらいきなり服をひん剥かれた。
色々触られたからシャワーを浴びたいとは思っていたが、何故先輩が俺の服を脱がそうとするんだ。
「一人で出来ますから!」
「うるせぇな、ゴタゴタ言ってっと服着たまま湯かけるぞ」
先輩なら本当に有言実行しそうで固まったら、その一瞬で全裸にされた。元々シャツのボタンはほとんど外れていたし、ズボンもベルトを抜かれていたからあっという間だった。
そしてすぐにシャワーから湯を出すもんだから、まだ服を着たままだった先輩を見て慌てて湯を止めようとしたが、振り向いた際に視界に飛び込んで来たのは鏡に映った自分の姿。
「う、わぁ……」
首から胸元にかけて赤い跡、キスマークと呼ばれるものが、思わず唖然とした声を上げてしまうほどに付けられていたのだ。
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