この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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79.真打ち登場?

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「あーあ。あんた写真撮られましたよ?」

「知るかよ」

 倒れた男達と、それをあ然と見ている男達と、俺を怪訝な目で見ながら全然心配なんかしてませんと言う口調で話しかけてくるチビ。
 チビの目が俺にそのまま消えてくれねぇかなと物語っている。
 なるほどこいつは敵では無いが味方でも無いな。見た目からしてルイが話していたアリスって奴だろうがどこが可愛くて優しい天使なんだ?
 見ろよこの腹黒そうな胡散臭い笑顔。堕天使の間違いだろ。

「な……こ、こんな事をして……ただで済むと思ってるんですか!?」

 あ然と見ていた男の一人が声を震わせながら怒りをあらわにした。

「先に手ぇ出したのはそっちだろ?」

「さ、先に暴力を振るったのはお前だ! 絶対に許しませんよ!」

「へぇ……どう許さねぇんだよ」

「……お、追い出してやる……っ!」

 わなわなと怒りで震えながら絞り出した声だったようだが、特に恐怖は感じない。
 チビも平然とした顔で男を見ていて煽っている様にも見えた。
 しかし唯一顔を青ざめさせている奴もいて、やたらデカいくせにヘタレだなとそいつを冷めた目で見てしまう。
 たぶんこいつがルイの話していたチエとか言う奴だろうが、どこが明るくて頼りになるスポーツマンなんだ。まぁ、少なくともアリスとか言うチビよりは人畜無害そうだが。

「それって脅し? うわぁこわーい」

「ちょっ……アリスちゃん……!」

 チビが実に楽しそうに「こわーい」なんて言うから男が怒りで顔を赤くし始めた。やっぱりこいつ煽ってるのか。
 デカい奴だけが無駄に焦っていて少し哀れに思えてくる。

「笑っていられるのも今のうちですよ……」

 ふーふーと息を吐きながら絞り出す声からは怒りを収めようとして失敗しているのがうかがえる。
 薄暗い部屋で無理に口角を上げて笑おうとする男の姿はひどく滑稽に見えた。

「お前達全員……猫野チェシーも夢野アリスも白伊ナイトも全員木戸ルイ様の前から消してやるっ!!」

「え……何で……?」

「そんなの決まっ…………へぁ!?」

 唾を撒き散らしながら錯乱したように叫んでいた男が、変な声を残して一瞬で黙った。
 そして俺も、他の奴らも突然聞こえてきた声の主に面食らう。
 男の見開かれている目には、驚いた顔で立ち尽くすルイの姿が映っていた。

 
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