この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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66.お守りの効果は抜群だ

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 倒れた男を横目で確認し、僕はにっこり笑って近くで目を丸くして固まっていた男に更にスタンガンを喰らわせた。
 今度は叫び声も上げずに喉からヒュッと音が鳴って倒れる。

「な……なん……っ!?」

「君も喰らってみる?」

「ひっ!!」

 見せつけるようにスタンガンを向ければ面白いほど後退ったからそのまま扉へと向かう。

 流石はルイがくれたお守り、効果は抜群だ。
 先日何故か僕にルイが渡してきたスタンガン。『アリスの方が必要だと思うからお守りと思って持ってて』と渡された。
 どう考えてもルイの方が必要だとその時は思ったが、ルイからの初めてのプレゼントが嬉しくて言われた通りいつも肌身離さず持っていた。
 まさか使う日が来るとはね。

「な……なんでそんなもん持ってんだ!」

「ん~……愛の力かな?」

「意味の分からない事を言うな!」

「それはさっきからこっちの台詞だよ」

 あまりの勝手な言い分に呆れて苦笑いを浮かべ、僕は扉にかけられていた鍵を開ける。 
 すると突然勢いよく扉が開き、奴らの援軍かとスタンガンを身構えたが、そこに居たのは予想外すぎる人物で思わずスタンガンを取り落しそうになった。

「アリス! よかった居た!」

「る、ルイ!? なんで……」

 僕の顔を見るなり安堵した笑顔を浮かべて抱きしめて来たから僕からも思いっきり抱きしめ返した。
 なぜここに居るのかは知らないが取り合えずルイからのハグを満喫しておこう。
 うん、柔らかい、腰ほっそい、いい匂いがする。スーハースーハー……

「いっ、いい加減離れろっ!!」

 ルイとイチャつく僕に我慢なら無くなった男の一人が声を荒げた。
 良いところなのに邪魔するなと視線を向けたら、皆顔を真っ赤にし不自然ほど視線を彷徨わせていた。
 なるほど、奴らにとって神よりも尊い存在のルイを直視出来ないってわけか。
 可哀想にな、かわりに僕がかわいいルイの姿をこれでもかと目に焼き付けておいてあげるよ。
 腰を抱いたままでね。

「でも何でルイがここに?」

 僕がコツンと額を合わせながら尋ねたら、ルイからは「心配だったから」と返された。
 もちろんコツンと額を合わせたのは奴らに見せつける為だ。歯ぎしりが聞こえるざまぁ見ろ。

「アリスがたくさんの人に連れてかれるのが窓から見えて探してたんだ」

「えっ、ぼ、僕を心配して探してくれてたの……っ!?」

 ルイの優しさと可愛さに感動して震えていたら、何かを勘違いしたルイが「もう大丈夫だよ」とまた抱きしめてくれた。スーハースーハー……

「待ってください! 夢野アリスは危険な人物なんです……見てください! 夢野アリスがいきなりスタンガンで襲ってきたんですよ!!」

「えっ……」

 男が焦りながら隣に立っていた男からスマートフォンを受け取り画面を僕らに見せてきた。
 良いところなんだから邪魔するなと思いながらも視線を向けたら、そこには笑顔でスタンガンを男に突き付ける僕の姿が写っていた。
 何もせずにずっと突っ立ってるだけの男がいたが、なるほどそう言う要員だったのか。

「そんな……あ、アリス大丈夫だった!? スタンガンを使わないといけないほど怖い事をされたなんて!」

「へ?」

 ルイが軽蔑の眼差しを僕に向ける事を期待していただろう男の間抜けな声。

「いやあの……僕たちの方が夢野アリスに襲われて……」

「いくらアリスのファンだからってやって良いことと悪いことがあるだろ!」

「……っ!?」

「ルイーっ!! 心配してくれてありがとー!!」

 僕はルイに抱きつき、その陰で勝ち誇ったように男どもを見てやった。
 悔しそうに歯ぎしりする奴らを置き去りに、ルイの手を取りカオスな現場を後にする。
 そして助けてくれたお礼に奢るよと口実を作ってちゃっかり本日のデートにこぎつけたのだった。

 
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