48 / 119
47.空き教室で
しおりを挟む昼食は一人で食べたいかと尋ねられ、もちろんそんな訳はなくて、
「アリスも一緒に食べてくれるなら嬉しいよ」
と返事を返す。
何よりそんな子犬みたいな目で見られたら誰だってこう答えるだろう。あざとい……。
「でもアリスは良いの? 友達たくさんいるのに俺なんかの所に来たらみんな寂しがるんじゃない?」
「あの人達は友達って言うか……まぁいい顔はしないかもしれないからこそっと抜け出して来るよ。取り合えずルイは僕と一緒に食べたいって思ってくれてるんだよね? だったら決まり!」
再びギューッと俺に抱き着く夢野に癒やされる。
うん、やっぱり夢野には癒やしの天使でいてほしい。
さて、悩みは解決した。
いや最初に話した悩みは解決したのかどうか分からないが、むしろ更に混乱している気もしなくは無いが、取り合えず昼の食事場は確保出来た。
しかも夢野まで昼食に付き合ってくれると言う。先生と夢野には感謝しかない。
「じゃあルイ、また明日ね!」
「うん、色々ありがと夢野。先生もありがとうございました」
「気にすんなこんな事ぐらい。またいつでも頼って良いからな? 前も言ったが用がなくても俺の部屋に来ても良いから……」
「ルイ、先生の部屋に行くときは絶対に僕も呼んでね! 絶対に! 約束!」
「う、うん……」
おや、これはもしや夢野も先生が気になってる? 先生脈アリだよ良かったね。
今もこんなに見つめ合っててなんだか怖いぐらい……少し寒気がするのは何故だろう。
先生の部屋を出て、夢野とも別れて自室へ戻った。
スマホを見れば部活を終えたらしい猫野からの他愛ないラインがあって、少ししたら夢野からも来たからまた他愛ない話をした。
夕食を終えてシャワーも済まし、あの肌触りの良い部屋着に着替えてベッドに入る。
二人におやすみのメッセージを送って、最後に何気なく、先輩と交わした最後のメッセージを見た。
未だに返信のないメッセージ画面。俺は何か変な事をしてしまっただろうかと考えるが、考えたところで答えは出ないから、諦めるように画面を閉じた。
※ ※ ※
そんな訳で俺は今、先生から教えてもらった空き教室に居る。
無事許可が下りて、昼ごはんのおにぎりを持って夢野が来るのを待っていた。
空き教室は資料室のような所を想像していたが、俺達が日頃使っている教室と変わらない作りをしていた。
きっと生徒がもっと多い時代は普通に教室として使われていたのだろう。少子化の影響がここにある。
夢野が来たらすぐに分かるように一番の後ろの席で待っていたら足音が聞こえて、ガラリと戸を開け夢野が、では無く猫野が入ってきた。
「えっ、チエ!?」
「おっすー! ルイちゃんお待たせっ!」
「いやそんなに待ってないけど……アリスは?」
「今日はアリスちゃんが囮……いやみんなの相手してるから俺が来たんだ! 俺じゃ嫌だった?」
「そんな事ない嬉しいよ! でもチエも友達多いのに来て良かったの?」
「だいじょぶだいじょぶ! じゃあご飯食べようぜ」
「うん……」
予想外の展開ではあったが、賑やかな猫野と昼食を共にできるのは素直に嬉しい。
それに他の友達、と言うより二人のファンだろうか? そんな人達にもちゃんと配慮しているなんてファンを大切にしているのだろうな。
さすが夢野と猫野だ。
そんな人気者の一人を俺が独占してしまうのは申し訳無くも思うが一日のほんの少しだけ、昼休みのこの時間だけは二人の優しさに甘えさせてもらおう。
「ここ自由に使っていいんだろ? だったらこっちで食べようぜ」
「ぅわ!?」
こっち、と言われて体を軽々と持ち上げられ、日当たりの良い窓際の机に座ってその膝の上に降ろされた。
122
お気に入りに追加
3,781
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる