この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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47.空き教室で

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 昼食は一人で食べたいかと尋ねられ、もちろんそんな訳はなくて、

「アリスも一緒に食べてくれるなら嬉しいよ」

 と返事を返す。
 何よりそんな子犬みたいな目で見られたら誰だってこう答えるだろう。あざとい……。

「でもアリスは良いの? 友達たくさんいるのに俺なんかの所に来たらみんな寂しがるんじゃない?」

「あの人達は友達って言うか……まぁいい顔はしないかもしれないからこそっと抜け出して来るよ。取り合えずルイは僕と一緒に食べたいって思ってくれてるんだよね? だったら決まり!」

 再びギューッと俺に抱き着く夢野に癒やされる。
 うん、やっぱり夢野には癒やしの天使でいてほしい。

 さて、悩みは解決した。
 いや最初に話した悩みは解決したのかどうか分からないが、むしろ更に混乱している気もしなくは無いが、取り合えず昼の食事場は確保出来た。
 しかも夢野まで昼食に付き合ってくれると言う。先生と夢野には感謝しかない。

「じゃあルイ、また明日ね!」

「うん、色々ありがと夢野。先生もありがとうございました」

「気にすんなこんな事ぐらい。またいつでも頼って良いからな? 前も言ったが用がなくても俺の部屋に来ても良いから……」

「ルイ、先生の部屋に行くときは絶対に僕も呼んでね! 絶対に! 約束!」

「う、うん……」

 おや、これはもしや夢野も先生が気になってる? 先生脈アリだよ良かったね。
 今もこんなに見つめ合っててなんだか怖いぐらい……少し寒気がするのは何故だろう。

 先生の部屋を出て、夢野とも別れて自室へ戻った。
 スマホを見れば部活を終えたらしい猫野からの他愛ないラインがあって、少ししたら夢野からも来たからまた他愛ない話をした。
 夕食を終えてシャワーも済まし、あの肌触りの良い部屋着に着替えてベッドに入る。

 二人におやすみのメッセージを送って、最後に何気なく、先輩と交わした最後のメッセージを見た。
 未だに返信のないメッセージ画面。俺は何か変な事をしてしまっただろうかと考えるが、考えたところで答えは出ないから、諦めるように画面を閉じた。



 ※ ※ ※



 そんな訳で俺は今、先生から教えてもらった空き教室に居る。
 無事許可が下りて、昼ごはんのおにぎりを持って夢野が来るのを待っていた。
 空き教室は資料室のような所を想像していたが、俺達が日頃使っている教室と変わらない作りをしていた。
 きっと生徒がもっと多い時代は普通に教室として使われていたのだろう。少子化の影響がここにある。

 夢野が来たらすぐに分かるように一番の後ろの席で待っていたら足音が聞こえて、ガラリと戸を開け夢野が、では無く猫野が入ってきた。

「えっ、チエ!?」

「おっすー! ルイちゃんお待たせっ!」

「いやそんなに待ってないけど……アリスは?」

「今日はアリスちゃんが囮……いやみんなの相手してるから俺が来たんだ! 俺じゃ嫌だった?」

「そんな事ない嬉しいよ! でもチエも友達多いのに来て良かったの?」

「だいじょぶだいじょぶ! じゃあご飯食べようぜ」

「うん……」

 予想外の展開ではあったが、賑やかな猫野と昼食を共にできるのは素直に嬉しい。
 それに他の友達、と言うより二人のファンだろうか? そんな人達にもちゃんと配慮しているなんてファンを大切にしているのだろうな。
 さすが夢野と猫野だ。

 そんな人気者の一人を俺が独占してしまうのは申し訳無くも思うが一日のほんの少しだけ、昼休みのこの時間だけは二人の優しさに甘えさせてもらおう。

「ここ自由に使っていいんだろ? だったらこっちで食べようぜ」

「ぅわ!?」

 こっち、と言われて体を軽々と持ち上げられ、日当たりの良い窓際の机に座ってその膝の上に降ろされた。


 
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