この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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27.往生際が悪くもなるよ

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 先輩は凄い集中力だった。
 一年の問題集を終わらせ、二年の問題集にも手を付けて、重要な公式も覚え応用も出来るようになった。
 この分ならなかなか良い点数が狙えるのではないだろうか。
 ここまで出来れば上出来だろうと数学を終えようとするが、ここで一つ問題がある。
 これが終わったら俺から先輩にしなくてはいけない。
 何をってあれをだ。

「数学はもう良いだろ」

「……っ」

 終える前に対策を考えるつもりが、先に先輩から終了の言葉を言われてしまった。
 よし逃げよう。

「お、お疲れ様でした! ちょっと気分転換に外の空気でも……ーー」

「逃げんなアホ」

 駄目だった。
 立ち上がろうとする俺の腹部に両腕を回されて身動きが取れない。
 只でさえ密着していた体が抱きしめられる事でさらに密着し、左側から顔を覗かれたから俺は右を向いた。

「……往生際が悪いぞ」

「……そもそも先輩の提案を了承した覚えは無いんですが……」

 往生際が悪い自覚はあるがとりあえず朝に先輩が言った言葉を真似してみた。

「……よっぽど俺から一分おきにキスされてぇらしいな?」

「いやそれは多すぎっーー……ふっ、んん!」

 先輩の言葉に思わず振り返ってしまい、そのすきを見逃さず口付けられた。
 話途中で半開きだった口にそのまま舌を入れられ味わうように舐められて、体に淡い痺れが走った。
 後ろからキスという少し無理のある体勢で苦しいのに、体と頭を強く抱きしめられたまま深いキスをされると苦しいだけじゃない別の感覚が湧き上がってくる。

「ふぁ……っ、せんぱっ、ん………」

 呼吸が苦しくなると少し離してくれたが、またすぐに奪うようなキスを繰り返された。
 瞳をじわりと涙が膜を貼り、流れ込んでくる先輩の唾液をコクリと飲み込んだら、ぼやけた視界の中で先輩の目が満足そうに細められた気がした。

 どれほどそうしていただろう。
 飲みきれなかった唾液が頬を伝っていてもかまわず続けられて意識が朦朧とし、されるがまま先輩の濃厚なキスに口腔内がもてあそばれていたが、ゴリッとした恐ろしい感触に急に意識が浮上した。

 尻に硬い物があたっている。
 それはちょうど先輩の下半身あたりで、分かりたくも無かったが分かってしまった。
 しかも隠す様子もなくあてられていて、びっくりして咄嗟に腰を浮かせて逃げようとしたら、逆にぐりぐりと強く押し付けられた。

「んっ、ちょ……! 先輩っ、あ、あたってます……!」

「あててんだよ……」

 やっとキスから解放されたのに、さらに恥ずかしい事をされてもう羞恥心がキャパオーバーとなる。
 背後から強く抱え込まれたままで逃げるどころか尻の割れ目にすり付ける物から距離を置く事もできない。
 真っ赤な顔を左から覗き込まれるように見られているのも恥ずかしくて、無駄だと分かっていてもジタバタ暴れてしまう。
 そんな無駄なあがきをあざ笑うように片腕でがっちり拘束されたまま片手が俺の下半身に伸ばされてギョッとした。

「やっ! な、なにっ!?」

 咄嗟に足を閉じたら先輩の手を挟むかたちになってしまい、まるでその手を離さないでと言ってるように見えて先輩が耳元で笑ったのが分かった。

「積極的だな」

「ち、ちがっ……ひぁっ! やめっ、揉まないでくださいっ!」

 やわやわと手のひらで包み込まれて動かされて、与えられる刺激が怖くて体を丸めたら首筋を先輩に晒す姿になってしまった。
 それによって横から恥ずかしい顔を覗き込まれるのはやめてもらえたが、同時に先輩の手の動きが止まり、上機嫌だったのが嘘のように低い声が後ろから響きビクリと体を揺らしてしまう。

「……お前、これ何だ………」

「……はえ? これって、何が……ひぅっ……!」

 これだ、と言うように右の首筋をぬるりと舐められてもう意味が分からない。



 
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