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21.ショップカードと夢野
しおりを挟む「えっ、姫……!?」
食事も終えて、三人で談笑していた時だった。
不意に聞こえた声に振り向くと、同年代ぐらいの青年が驚いたような顔でこちらを見ていた。
顔に見覚えは無いがおそらく学園の生徒だろう。夢野を見て“姫”と呼んだのが何よりの証拠だ。
「あー……、出るか」
「そうだね」
猫野が面倒だと言うような声を出し、夢野も同意する。
あれかな、学園の生徒に見つかったら無駄に人が集まっちゃって面倒くさいとかかな? 人気者も大変だね。
心の中で二人に同情し店を後にする。
会計時にお兄さんからショップカードを渡されて、手書きでIDと英数字が書かれているが何のIDだろうか。
俺がそう考えていたら夢野からスッとショップカードを抜かれた。
「僕も店のカードもらおうとして忘れてたんだよね。これもらっちゃダメかな?」
「ううん、良いよべつに」
「ありがとルイ!」
花が咲くように笑う夢野に、つられて俺の顔も緩む。
タダでもらった物でここまで喜んでくれるなんて夢野は可愛いな。
ほんわかした空気の中で微笑み合っていたが、その裏でショップカードがグシャリと握りつぶされている事を俺は知らなかった。
「んじゃあ次はどこ行こっか?」
猫野の言葉に、ご飯を食べて解散では無いのだと知り嬉しくなった。
どうせならもう少し楽しみたい。
「んー……、ルイはどっか行きたい所ある?」
「俺? えぇっと……」
急に話を振られて困る。友達と遊んだことが無い俺が次の遊び場なんてわかるはずがないのだから。
「……二人はいつもどこに行ってるの?」
「そーだねー……、僕は家でスマホいじってる事が多いけど、時々服を見に行くよ」
「俺は部活してる事がほとんどだな。部活ない日はたまにスポーツショップ覗いたり服買いに行くけどな」
「服か……」
やっぱり自分で服を選んでいるらしい。
未だに母が買ってくる服をそのまま着てる俺はダサいのかな。
「じゃあさ、いつも二人が服を買ってる所に行っても良いかな? 俺自分で服買ったこと無いからどこで買ったら良いか分からないんだ」
俺の言葉に二人が顔を見合わせた。つまらない提案だったかなと不安になっていたら、二人はとても楽しそうな笑顔で俺に振り向いたものだから別の意味で不安になった。
嫌な予感ってこういう事か。
「よしじゃあルイの服を買いに行こう!」
「俺らが選んでやるからな!」
「え、あっ、え? うん……」
テンション高めな二人に若干引く。つまらない顔をされるよりは良いが何でこんなにノリノリなんだろうか。
大型ショッピングモールに連れて行かれた俺は、嫌な予感ってのはたいがい当たるよね、と遠い目をする羽目になった。
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