この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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20.モテモテですねアリスくん

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 カウンター席では、俺が二人に挟まれて真ん中に座った。仲良しの二人が隣同士じゃなくていいのだろうか。
 もしかしたら俺が不慣れなのを察して、二人で教えられるように気を利かせてくれたのかもしれない。
 二人の優しさに勝手に感動していたら、先程のお兄さんが注文を取りに来た。
 俺が振り返ると目をそらされたけどもう気にしないぞ。
 せっかく二人が連れてきて座らせてくれたんだ。ここで落ち込んでたら楽しい休日が台無しになってしまう。
 ただなるべくおとなしくして周りから見えないようにするから許してね。

「僕はこのセットとリンゴジュースで」

「俺はビッグバーガーセットとチキンフライとポテトサラダとコーラL!」

「えっと……俺はアリスと同じセットのウーロン茶で」

 メニューがオシャレすぎて良くわからなかったから夢野のマネをした。猫野のマネをしたらたぶん食べきれないだろうし。さすがスポーツマンだ。
 来た料理は俺の知ってるハンバーガーじゃ無かった。
 ハンバーガーがこんなに分厚くなるなんてフィクションだと思ってたよ。
 かっこいいピックが刺さってるけど、これはフォークとナイフで食べるのだろうか? あ、猫野がかぶりついた。よし真似しよう。
 ハンバーガーはちょっと食べにくかったけど美味しかった。
 そして何より一緒に付いてきたフライドポテトが美味しい!
 ただの塩味じゃなくて……何味だろう? とにかくいろんなスパイスを使っていて美味しい。

「ルーイ、はいあーん」

「ん?」

 突然フライドポテトを口元に持ってこられて、反射的に咥えてしまった。
 このポテト夢野のじゃないのかな。

「ルイこのポテト気に入ったんでしょ? 可愛い顔して食べてたもん」

「ん……うん、すごく美味しいねこれ」

 よっぽど顔に出ていたらしく、夢野に笑われてしまった。俺も恥ずかしいのを笑って誤魔化してたら、今度は猫野からポテトを差し出された。

「はいはいルイちゃん、次は俺ねー」

「え、んぐ……」

 断る間もなく口に直接入れられて、しょうがないので咀嚼する。
 美味しいんだけど二人のポテトが無くなってしまう。そう言うと、猫野が苦笑いを浮かべた。

「大丈夫だ。なんか今日ポテトの量多いし……いつもはこんな多くないのに何でだろうなぁ」

 苦笑いを浮かべたままの猫野が、チラリと後ろを覗き見る。
 その行動にピンときた。
 なるほど、夢野が居るからサービスされていたらしい。初対面の人まで魅了するなんてさすが主人公夢野アリスだ。
 猫野は気が気でない様子で、よっぽど夢野が他人に狙われている事が気に入らないのだろう。
 頑張れチエ、夢野が現在想い人がいるのかは知らないけど、きっと今一番距離が近いのは君だと思うよ。
 とは言え誰を選ぶかは夢野次第だし、俺は陰ながら見守るしか出来ないからとりあえず美味しくポテトをいただいた。
 
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