この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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19.友達との休日

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 土曜日になった。つまり夢野や猫野と遊ぶ約束をした日だ。
 待ち合わせ場所に向かう為に、俺は疲れた様子で部屋を出る。
 そう、俺はすでに疲れていた。それもこれも全て先輩のせいだ。

「何だったんだあの時間……」

 ひとりボヤきたくなるのも仕方ないと言うものだ。
 昨日俺は、先輩のせいで非常に無駄な時間と労力を費やしたのだから。

 昨日、次の日に着ていく服を写真に撮って先輩に送った。
 おかしくないかだけ教えてもらえれば良かったのだけど、『着ている所を写真で送れ』と言われた。
 言われた通りにしたら『顔が写ってない』と来て、また撮り直して送ったら今度は他の服も着て写真を送るように言われて、何度も着替えて写真を送って、途中でショートパンツは無いのかと怒られ、終いにはポージングまで指示されて──気がつけば夜中だったのだ。
『もう眠いです』と送ったらやっと解放され眠りについたけど、良く考えたら写真送っただけで何もアドバイスをもらえてない。
 何だったんだあの時間は……女豹のポーズって何だ。

 そんな謎の時間のおかげでちょっと寝不足になりながら待ち合わせ場所に着いたら

「ルイーっ!」

 と夢野が手を振っていた。
 まだ10分前なのにもう来ていたのかと駆寄ろうとしたら、

「ルーイちゃん!」

「ぉわっ」

 後ろから猫野に抱きつかれた。
 相変わらずスキンシップが激しくて驚いてしまう。こっちは友達初心者なんだから手加減してほしい、この爽やかスポーツマンめ。
 反応に困っていたら夢野が引き剥がしてくれた。さすが主人公、頼りになる。
 驚きで眠気も吹っ飛んだ所で二人を改めて見る。
 私服姿を初めて見たけれど、二人ともとてもおしゃれだ。まぁ二人が美形だから何でも似合ってるだけかもしれないけど。
 俺はジーパンと少し大きめのグレーのパーカー。去年に成長を見越して母が買った物だ。成長の結果はご覧の通りである。

「ルイ私服可愛いね!」

「おう、すっげぇ可愛い! 後で写真撮ろうぜ」

「ありがと……でも二人の方がかっこいいし可愛いよ?」

 優しい二人は俺を褒めてくれたけど、どう考えても夢野と猫野の方がおしゃれ上級者だ。ファッション雑誌の表紙に居ても違和感ないと思う。
 そんな二人のそばはちょっと気後れしてしまうが、ずっと「可愛い」と言ってくれるから少しだけ自信がついた。
 ただ「かっこいい」とは言ってもらえなかった。

 さっそく昼を食べようと猫野が言うので、少し早いが店に向かう。
 何でも早めに行かないと混んでしまうかららしい。
 確かにあのチェーン店はいつも混んでるもんね、と思っていたのだけど、向かってる方向が予想と違った。
 駅の裏になんか行ったことがないけれど、そっちにも店があるのだろうか。

「えっ、ここ?」

 知らない場所だから黙って付いていく、と言うより猫野には肩を、夢野には手を引かれながら行くと、なんだか凄くオシャレな店に着いてしまった。

「ここハンバーガーがデカくてウマいんだ」

「僕は来るの初めてだけどテレビに出てたことあるよね」

 ハンバーガーと聞いて某有名チェーン店しか思い浮かばなかったから、こんなオシャレな店に来ることになるなんて想定外だ。
 それで無くとも外食は緊張するのに、俺がこんな店に入るなんて場違いにも程があるのではないだろうか。
 俺が躊躇するのもお構いなしに、二人は世間話をしながら入ってしまった。もちろん俺の肩と手を引いたままだ。

「いらっしゃー……」

 あご髭を生やしたオシャレなお兄さんが俺の顔を見たとたん言葉が途切れた。俺は心の中で盛大に謝罪する。
 ごめんなさい俺みたいなやつがこんなオシャレな店に来て本当にごめんなさい。
 隅で目立たないようにするんで二人まで追い返さないでください!
 固まったままのお兄さんと脳内で土下座する俺の事など気にする様子もなく、二人はカウンター席に座ったのだった。

 ※おまけ ~昨日のヤンキー~

 女豹のポーズをリクエストしたら分からなかったらしく、手を猫のようにニャンとさせて首を傾げてる写真が来た。
 スマホ壁紙にした。

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