この世界で姫と呼ばれている事を俺はまだ知らない

キトー

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1.初めまして主人公

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 ここはBLゲームの世界だと自分が知ったのは、学園に入学してからだ。
 なんか見覚えがあるなと思っていたら、とある人物を目撃して唖然とした。
 俺はこの人物を知っている。
 話した事がない以前に今が初対面だけれども、俺は彼を知っているのだ。それこそ、前世から。
 彼は、BLゲームの主人公だ。
 そしてここは、そのゲームの世界なんだ。
 一度思い出せば、一気に記憶が蘇る。

 それは前世の記憶。腐女子の姉がハマっていたBLゲーム。
 お相手のキャラクターからの歯の浮くような台詞にキャーキャー言う姉を、不思議な目で見ていた記憶がある。
 そんな不思議な世界に俺は転生していたらしい。
 とは言え、俺は完全にモブだろう。
 俺のようなキャラクターは脇役にも居なかったし、なにより、こんな“嫌われ者”がゲームの主要メンバーになるはずもない。

 そう、俺は嫌われていた。理由は、正直分からない。
 ただ、誰かから話しかけられる事は皆無で、こちらから話しかけても目をそらされたり、酷いときは話途中で逃げられる。
 賑わっていた教室に俺が入るとわざとらしく静まり返る事も珍しくないし、遠くからこちらを見ながらヒソヒソと会話をされるのもよくある事だった。
 悲しかったし、辛かったけれど、理由が分からなければどうしようもない。
 とにかく周りを不快にしないよう、出来るだけ存在感を消した。
 食事は人気の無い所で取り、休み時間は図書室の隅で本を読む。
 人と関わらなければ人が不快に思うこともないし、なにより自分の心を守れた。

 そして今日、高校生活と言う新たな一歩にちょっとだけ期待していたわけだが、それは直ぐに打ち砕かれた。
 学園に一歩踏み出したその瞬間から、また理由の分からない視線がまとわりつく。
 一定の距離を置かれ、露骨にヒソヒソと話をされて、早々に諦めの気持ちがわいた。
 きっと俺は存在そのものが嫌われているのだろう。
 まだ話したことも無い人達からここまで距離を置かれるのだから。
 諦めてしまえば、少し心が楽になった。
 無駄な期待は持たずに今まで通り人と関わらなければ良いのだ。
 貼り出された自分の教室を確認して、一人で教室へと向かう。

 周りでは同じ教室になった生徒達が「よろしく!」「こちらこそ!」なんて楽しげな会話がなされているが、自分には関係ない事だろう。
 着いた教室は、教室と言うより講義室と言った雰囲気だった。
 固定された長テーブルが階段状に設置されている。
 人はまだまばらで、初対面同士のぎこちない会話が所々でなされていた。
 そこで、あの主人公と対面して、冒頭に至るわけである。
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