最弱伝説俺

第三章 三大イベント

運動神経とは

　希望球技に手を挙げる形で決まっていったのだが、バレーボールの次に提示された球技大会花形のバスケットボールのメンバーにされてしまった。適当に卓球あたりにして目立たず敗退する予定だったのに。バスケットでは大勢のギャラリーがいるに違いない。

　バレーボールも人気があるが、バスケットの方が二階席まである体育館で見学がしやすく、確実に注目される。

　情けない姿をクラスメートに見られてしまう。不良なのに運動音痴、最悪な展開だ。

──そういえば、俺ってバスケ出来るのかな。

　そもそもの問題が浮上した。
　中学の時に授業でしたことがある。しかし、たったの五回で終わってしまったので、ルールを覚える前に次の種目に移っていた。とにかく、頭を使うことは葵にはハードルが高すぎるのだ。

「はい、決定。手を挙げなかった人は余ってるところに入れておきます」
「えっ」

　生徒の意見を聞かず、広田は本当に適当に入れていた。しかし、運動部に入っている生徒をきちんと分けて全体的なバランスを取っているあたり、彼のガチさが窺える。

　それにしても、帰宅部の葵をバスケ部に入れるというのは何事か。

　余った時間が自習になったためこっそり広田に理由を聞こうと思ったが、公衆の面前で罵倒されそうだったので大人しく座って休み時間を待った。

「は？」

　休み時間、意を決して尋ねてみると、地面で潰れた虫を見る目で返された。家に帰りたい。

「バスケ出来ないの？　は？」
　ひどい。この少年は何故こんなにも葵に圧をかけてくるのか。こちらは何も悪くないというのに土下座しないといけない気分になってくる。

「授業ではやったことあるけど、バスケ部だったわけじゃないし」
「ルールは分かるんでしょ。なら、持ち前の運動神経でどうにかして勝って。あいつがバスケで来るはずだから絶対勝って」

　なるほど、例の彼が関係しているらしい。これはもう頷いて了承するしか道は残されていない。

「分かった」

　それにしても、どこ情報で葵が運動神経が良いという認識になっているのだろう。
　可もなく不可もなく、きっと本番当日がっかりされてしまう。

──練習しようかな。

　幸いここはスポーツに特化した生徒を扱う高校なので、練習場所はいくらでもある。葵はさっそく今日から練習することにした。