最弱伝説俺

第三章 三大イベント

競技決定

　なんなのだろう、あの男は。葵は項垂れた。
　今まで一度も言葉を交わしたことがなかったのに、あの会議をきっかけに、しょっちゅう顔を合わせることになってしまった。

「やあ、葵君」
「はあ、どうも」

　生徒会長である。名前すら知らない。調べればすぐ分かるだろうが、全然興味も無い。
　二日に一度は廊下ですれ違う。何故だ。そもそも学年が違うので、階自体違うのに。

「球技大会の準備は進んでいるかい？　困ったことがあったら僕に相談して」
「はい」

　たった今非常に困っているわけだが。生徒会長そのもので。楽しそうに緩む顔がなんだかぞわぞわする。寒気もする。風邪か。ウイルスかこの男。

　立ち振る舞いも言動も、一見おかしいところは見受けられないのに、どことない違和感と恐怖が襲うのだ。あまり関わりたくない。返事もそこそこに葵は立ち去った。

「はは、おもしろいなぁ」



　生徒会長の世間話はつまらなかったが、確かに準備はしっかりしなければならない。今日はこれから球技の振り分けがある。もしかして、代表の自分が司会をしなければならなかったりするのか。一気に気分が沈んだ。

　教室に入り、広田の元へ向かう。ダメ元で話しかけた。

「あのさ、球技大会の話し合い、学級委員が司会してくれたりしないかな」
「いいけど」
「いいのか！」

　絶対断られると思っていた。しかも嫌味付きで。実は友だち思いの男なのだろうか。

「君が司会だとグダグダになって適当な振り分けになりそうだから」
「ああ……そう」

　全然思われていなかった。とりあえず司会を回避出来るならそれでいい。広田に礼を言う。「もう少しリーダーシップがあればいいのにね」と言われた。嫌味は忘れていなかった。

　リーダーシップを葵に求める方が無謀だ。この選択が葵をさらに追い詰めることになる。









「いや」

「いやいやいや」

――おかしいだろ。誰かの陰謀か……！？

　周りを見遣るが、誰一人として目を合わそうとしない。唯一前にいる広田はこちらの方を向いてはいるが、視線が絡むことはなかった。

「は、嵌められた」