最弱伝説俺

第三章 三大イベント

10

　快に抱きしめられながら葵が首を傾げる。

「会長？」
「あいつ生徒会長だよ。知らない？」
「知らなかった」
「まあ雑用係なんて知らねぇよなぁ」

　なるほど。生徒会だからイベントの手伝いをしているというわけか。大変な役目だと思う。確かに理知的な顔をしている。どこか見覚えもある気がする会長を眺めていると、ドアがまた開いた。

「もう始まるから席座ってね」
「あああ？」

　注意されたことが気に喰わないのか、入ってきた生徒がガラの悪い返答をする。その生徒が葵を見とめて顔を凶悪にさせた。

「葵にくっついてる野郎、今殺してやるから立ち上がれ！」
「西谷先輩、席座ってください！」
「あぁん？　葵の頼みじゃ断れねぇなぁ」

　最後に入ってきたのは西谷だった。その様子に快はけらけら笑っていた。

「それでは代表者会議を始めます」

　快と西谷に挟まれて座る葵は悟りを開いた顔で前を見つめる。周囲の人間も明らかに不良であろう見た目が半分を占めていて、なるほど、谷の言うことは本当だった。
　こんな不釣り合いな場所にいるなんて。それもこれも、不良だと勘違いされているからだ。しかし、違うと叫ぶ勇気も無い。

「てめぇ、葵から離れろ」
「お前の方こそ離れろ。葵が迷惑してんだろぉ」

　どっちも離れてほしい。お互い顔を知っている程度で名前は知らないらしく、距離を取りながら小声で罵り合っている。その間も会議は進行していく。真面目に聞いている生徒は数人しかいない。

「では次、チーム決めをします。一年から三年まで各八クラス、計二十四クラスあります。得点はクラスごとに集計しますが、全体で二つのチームに分け、クラスの得点をチーム内で合わせて合計の多いチームの勝ちとなります。スポーツ特待クラスは各学年に二クラスだから、それぞれ違うチームに入ってください」

「……なるほど」
「全然分かってねぇだろ」

　クラスごとの得点だと特待チームが無双してしまうから云々説明しているが、葵は頷くに留まった。西谷のツッコミ通り理解していないが、あまり興味がないため積極的に理解するつもりもなかった。
　元々理解力が少々足りない葵は、興味が無いものに対してはさらに理解力が二歳児まで低下するのだ。