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第三章 三大イベント
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二分で資料をめくるのに飽きたので、実行委員だと思われる二人を観察した。
まずは葵を笑った男。眼鏡で長めの前髪を横に流した黒髪、声は少々高めだろうか。とても真面目そうに見える。
その隣にいるのは大分小柄で、スポーツ刈りを伸ばしたような髪型だった。先ほどから一言も発していない。なんとなく自分と同じ部類で弱そうな感じを受けた。
「うぃーす」
「早く着きすぎたわ」
びっくぅ。
誰が来るのか不安で過剰に反応する。その相手も葵を見て、眉間に皺を寄せた。
「あいつ」
「……誰だ?」
「いや、いいや」
さすがに教師のいる前で絡んでくることはなく、安堵の息を吐いた。次々に入ってくる生徒を見ないように、窓の外に顔を向ける。
――俺は壁、無機物。誰にも認識されないで、どうか何事も無く終わりますように!
「小日向入りまぁす」
「快君!?」
思いがけない再会に、葵が声を上げてしまう。教室中の視線が集まった。しまった。最悪だ。自分から何事かを起こしてしまった。快が満面の笑みで葵に走り寄る。
「葵ィ~~~~お前目立つの好きじゃねぇのに、やるじゃん!」
「ぐぅッ」
抱き着かれた。百九十近くある兄に公共の面前で抱き着かれた。生徒はもちろん、谷まで目を丸くしている。
「ああ、親戚って本当だったのか」
「やだなぁ、親戚じゃなくて兄弟ですよ~」
「兄弟かよ!」
「ははは」
あんなにあの時言い淀んだのに、あっさりバレた。乾いた笑いを零すしかない。とりあえず秘密にしなくていいらしいので、その点だけ安心した。
「あ、やべ。陣君に兄弟だって言うなって言われてたんだ」
「やっぱ秘密じゃん! 快君どうするんだよ!」
全然安心出来なかった。陣は長男だけあって、兄弟の中で圧倒的権力を持っている。快が珍しく目を泳がせる。
「ここの奴ら全員の記憶を飛ばせばワンチャン」
「怖いこと言わないでください小日向先輩!」
「記憶どころか命が飛びます!」
快の後輩たちが弱弱しく叫ぶ。よほど快が怖いらしい。葵は同情した。
そこへ手を叩く音が聞こえる。
「はい、そこまで。時間がないからね。えーと、小日向君と葵君が兄弟ということは秘密にしないといけないそうなので、ここにいるみんなは知らない振りをしてあげてください。バラしたら小日向君が記憶を飛ばしに来ます。これでいいかな」
「おう。サンキュー会長」
まずは葵を笑った男。眼鏡で長めの前髪を横に流した黒髪、声は少々高めだろうか。とても真面目そうに見える。
その隣にいるのは大分小柄で、スポーツ刈りを伸ばしたような髪型だった。先ほどから一言も発していない。なんとなく自分と同じ部類で弱そうな感じを受けた。
「うぃーす」
「早く着きすぎたわ」
びっくぅ。
誰が来るのか不安で過剰に反応する。その相手も葵を見て、眉間に皺を寄せた。
「あいつ」
「……誰だ?」
「いや、いいや」
さすがに教師のいる前で絡んでくることはなく、安堵の息を吐いた。次々に入ってくる生徒を見ないように、窓の外に顔を向ける。
――俺は壁、無機物。誰にも認識されないで、どうか何事も無く終わりますように!
「小日向入りまぁす」
「快君!?」
思いがけない再会に、葵が声を上げてしまう。教室中の視線が集まった。しまった。最悪だ。自分から何事かを起こしてしまった。快が満面の笑みで葵に走り寄る。
「葵ィ~~~~お前目立つの好きじゃねぇのに、やるじゃん!」
「ぐぅッ」
抱き着かれた。百九十近くある兄に公共の面前で抱き着かれた。生徒はもちろん、谷まで目を丸くしている。
「ああ、親戚って本当だったのか」
「やだなぁ、親戚じゃなくて兄弟ですよ~」
「兄弟かよ!」
「ははは」
あんなにあの時言い淀んだのに、あっさりバレた。乾いた笑いを零すしかない。とりあえず秘密にしなくていいらしいので、その点だけ安心した。
「あ、やべ。陣君に兄弟だって言うなって言われてたんだ」
「やっぱ秘密じゃん! 快君どうするんだよ!」
全然安心出来なかった。陣は長男だけあって、兄弟の中で圧倒的権力を持っている。快が珍しく目を泳がせる。
「ここの奴ら全員の記憶を飛ばせばワンチャン」
「怖いこと言わないでください小日向先輩!」
「記憶どころか命が飛びます!」
快の後輩たちが弱弱しく叫ぶ。よほど快が怖いらしい。葵は同情した。
そこへ手を叩く音が聞こえる。
「はい、そこまで。時間がないからね。えーと、小日向君と葵君が兄弟ということは秘密にしないといけないそうなので、ここにいるみんなは知らない振りをしてあげてください。バラしたら小日向君が記憶を飛ばしに来ます。これでいいかな」
「おう。サンキュー会長」
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