最弱伝説俺

第三章 三大イベント

5

『おはよう。よく眠れたか。誰かに襲われてないか。大丈夫か。結婚しよう』

　朝から怪文章が送られてきて、とても嫌な気分で目が覚めた。送り主は西谷だ。
　強制的に連絡先を交換してから、筆まめらしい西谷は一日に一回はメッセージを送ってきた。なんと返したらいいのか分からず既読スルーすることもあるが、特に返事は期待していないのか、怒ることなく翌日にはまた違うメッセージが来る。

　ちなみに末尾は毎回「結婚しよう」で締めくくられており、彼の狂気が窺える。

「今日も気持ち悪いな。ていうか、先輩に何か言うことがあったような……なんだったっけ」

　寝惚けた頭では思い出せず、結局挨拶だけ返してスマートフォンを仕舞った。

「そういや、今五時なんだけど。先輩早起き苦手って言ってたのに、三年生は朝から行事でもあるのか？」

　実際のところ早起きなわけではなくこれから就寝なのだが、規則正しい生活しか送ってこなかった葵には理解の範疇を超えていた。

　日課である朝トレーニングを開始し、六時に風呂に入り、六時半に起きてきた山田と合流して朝食を済ませた。
　早朝の風呂場には生徒はせいぜい一人か二人しかおらず、毎度のことながら贅沢だと思う。
　部屋にもシャワーは完備されているが、せっかく大浴場があるのだから堪能しないことはない。

　半分眠りに足を突っ込みながら授業を受ける。睡眠は足りているが、授業の内容が分からないためどうしても眠くなってしまう。

「なんで不良なのに授業受けてるんだろう」
「眠いならどっか行けばいいのに」

――聞こえてるぞ！

　耳が良いため、嫌でも悪口が入ってくる。何もしていないのにそういう風に思われて、悲しくて涙が零れそうだ。

「うわっちょっとプルプルしてる。キれてんのか？」

　葵はそっと涙を拭いた。





「思い出した！」

　放課後になり、ようやく忘れていた内容を思い出した。
　直接聞くのはなんとなく嫌なので、スマートフォンを開いて西谷へ送る。

『昨日、お面被った生徒を見ました』

　既読が付いた一分後、西谷が目の前にいた。