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第三章 三大イベント
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しおりを挟む 手紙の返信を携えた先触れを出していたお蔭で、私達がソルツァグマ修道院へ着いた時にはサリューン枢機卿、メンデル修道院長、ファブリス司祭達、エヴァン修道士他数人の修道士達と共に出迎えてくれていた。
ヴェスカル、グレイ、イドゥリースが先に下車。私はグレイの、ついて来たメリーはイドゥリースのエスコートで馬車を降りると、彼ら全員聖職者の礼を取って深々と頭を垂れる。
「聖女マリアージュ様、そしてグレイ猊下――お久しゅうございます。エヴァン修道士とファブリス司祭よりマンデーズ教会にて起こされた奇跡を聞き及びましたが、無事にお戻りになられた事に太陽神への感謝を」
サリューン枢機卿の口上に、私とグレイも返礼をした。
「ファブリス司祭、他の方々も。お元気でしたか?」
「お陰様にて、大変良くして頂いております」
「それは良かったわ。メンデル修道院長、私の我儘で急な話になったにも関わらず、快く受け入れて下さり感謝致します」
「聖女様のお頼みとあらば。寧ろ、奇跡の話を当事者から直接聞けて役得にございました」
「ヴェスカルはこちらへ」
「はい」
エヴァン修道士が声を掛けたことにあれ? と思う。そう言えばべリーチェ修道女の姿が無い。
そんな疑問が顔に出ていたのか、エヴァン修道士は「既にヴェスカルは学び終えましたから」と言う。
「聖女様、新年の儀にも関係あるのですが、ヴェスカルの事でお話が」
曰く、ファブリス司祭達と同時にヴェスカルとエヴァン修道士も位階を上げるという事になったらしい。
ヴェスカルは『聖女専属侍祭』、エヴァン修道士は『聖女専属書記』という特別位階だという。
どういうことか訊けば、私専属というだけでやる事自体は今までと大して変わらないんだとか。
ヴェスカルは私の小間使い的な位置付け、エヴァン修道士も聖女の記録専門職になる。
役職名が付く、それだけである。
ただ二人共権限的には司祭にも匹敵するそうでこれまでにない特別職。正装も普通の聖職者達とは違うものになっており、今日はそのサイズ合わせと本番練習があるという。
「位階をお授けになるのは聖女様ですから、また後程お会いしましょう」
エヴァン修道士とヴェスカルと別れた後、私達も行きましょうということになり歩き出す。
今気が付いたが、修道院を囲むように立っている騎士達に気付いた。王宮の制服を着ている。恐らくサリューン枢機卿の警護だろう。今日は流石に修道院は貸し切り状態であるようだ。
向かった先の聖堂で新年の儀の一連の流れを説明される。第一王子アルバートとメティ、王族、貴族達、ファブリス司祭達聖職者、民衆……祝福対象はてんこ盛りである。
新年の祝いで大体的にお披露目するのが効果的なのだろうから仕方ないが。
聖句を覚え直し、途中でエヴァン修道士とヴェスカルを加え。リハーサルを数回終えた時には既に私はヘトヘトになっていた。
***
お腹が鳴った昼過ぎ。漸くそれなりになってきたところでべリーチェ修道女達女性陣がランチを持って来てくれた。
ああ、彼女達の背後に後光が見える……。どうせなら一緒に食べようと誘って近況などを聞くと――
「え、メイソンの?」
「はい。ヴェスカルの手も離れましたし」
何と、べリーチェ修道女はメイソンの世話をしてやっているらしい。今は出家したとは言え、メイソンは元大貴族のドラ息子である。
調き……もとい、上下関係をみっちり教え込んだ私と違い、べリーチェ修道女には横柄な態度を取っている可能性がある。
「大変よね?」
首を傾げて訊ねると、「ええ、まあ……」と苦笑交じりの微笑みを返された。
「聖女様がマンデーズ教会に向かわれた事を知った時は、また置いて行かれたと暫く駄々を捏ね不貞腐れていて手を焼きましたが――何とか言い含めて仕事を与えてみたら、最近やっと聖職者としての自覚が出て来たようで真面目に働いておりますわ」
何と、子供達を教えているんですよ!
「グッ、ゲホゲホッ……」
その言葉の衝撃たるや。
私は口に含んだシチューを危うく噴き出しかけた。
子供達を教える? 教師? あの馬鹿で変態な雄豚奴隷メイソンが!?
「嘘だ。信じられない……」
幻聴を疑っていると、愕然とした様子で震え声を出すグレイ。全く同感だ。
驚かせる事に成功したとでも言わんばかりにクスクスと笑うべリーチェ修道女。
「猊下、本当ですわ。そろそろ午後の授業が始まる所でしょう。ご覧になられますか?」
どうしよう、子供達が凄く心配なんだけど。
リハーサル……でも、少しだけなら見ても良いかしら?
凄く気になるんだけど。
ちらり、とサリューン枢機卿やメンデル修道院長を見る。
すると、苦笑いを浮かべながら「賢者様の聖句のおさらいをしたいですし、半時程度なら構いませんよ」と許可が出た。
どこかげんなりした恨めしそうな様子でこちらを見るイドゥリース、それを励ますメリー。
彼らに頑張れとエールを送り後でねと手を振って、授業が行われている教室に行ってみる事に。
「畏まりました。こちらへどうぞ」
べリーチェ修道女の案内で向かった先――そこは私が講義をしたこともある古びた大きな石板、もとい黒板のある部屋だった。
子供達のはしゃぐ声が聞こえて来る。怖いもの見たさで、私はごくりと唾を飲み込んだ。
ヴェスカル、グレイ、イドゥリースが先に下車。私はグレイの、ついて来たメリーはイドゥリースのエスコートで馬車を降りると、彼ら全員聖職者の礼を取って深々と頭を垂れる。
「聖女マリアージュ様、そしてグレイ猊下――お久しゅうございます。エヴァン修道士とファブリス司祭よりマンデーズ教会にて起こされた奇跡を聞き及びましたが、無事にお戻りになられた事に太陽神への感謝を」
サリューン枢機卿の口上に、私とグレイも返礼をした。
「ファブリス司祭、他の方々も。お元気でしたか?」
「お陰様にて、大変良くして頂いております」
「それは良かったわ。メンデル修道院長、私の我儘で急な話になったにも関わらず、快く受け入れて下さり感謝致します」
「聖女様のお頼みとあらば。寧ろ、奇跡の話を当事者から直接聞けて役得にございました」
「ヴェスカルはこちらへ」
「はい」
エヴァン修道士が声を掛けたことにあれ? と思う。そう言えばべリーチェ修道女の姿が無い。
そんな疑問が顔に出ていたのか、エヴァン修道士は「既にヴェスカルは学び終えましたから」と言う。
「聖女様、新年の儀にも関係あるのですが、ヴェスカルの事でお話が」
曰く、ファブリス司祭達と同時にヴェスカルとエヴァン修道士も位階を上げるという事になったらしい。
ヴェスカルは『聖女専属侍祭』、エヴァン修道士は『聖女専属書記』という特別位階だという。
どういうことか訊けば、私専属というだけでやる事自体は今までと大して変わらないんだとか。
ヴェスカルは私の小間使い的な位置付け、エヴァン修道士も聖女の記録専門職になる。
役職名が付く、それだけである。
ただ二人共権限的には司祭にも匹敵するそうでこれまでにない特別職。正装も普通の聖職者達とは違うものになっており、今日はそのサイズ合わせと本番練習があるという。
「位階をお授けになるのは聖女様ですから、また後程お会いしましょう」
エヴァン修道士とヴェスカルと別れた後、私達も行きましょうということになり歩き出す。
今気が付いたが、修道院を囲むように立っている騎士達に気付いた。王宮の制服を着ている。恐らくサリューン枢機卿の警護だろう。今日は流石に修道院は貸し切り状態であるようだ。
向かった先の聖堂で新年の儀の一連の流れを説明される。第一王子アルバートとメティ、王族、貴族達、ファブリス司祭達聖職者、民衆……祝福対象はてんこ盛りである。
新年の祝いで大体的にお披露目するのが効果的なのだろうから仕方ないが。
聖句を覚え直し、途中でエヴァン修道士とヴェスカルを加え。リハーサルを数回終えた時には既に私はヘトヘトになっていた。
***
お腹が鳴った昼過ぎ。漸くそれなりになってきたところでべリーチェ修道女達女性陣がランチを持って来てくれた。
ああ、彼女達の背後に後光が見える……。どうせなら一緒に食べようと誘って近況などを聞くと――
「え、メイソンの?」
「はい。ヴェスカルの手も離れましたし」
何と、べリーチェ修道女はメイソンの世話をしてやっているらしい。今は出家したとは言え、メイソンは元大貴族のドラ息子である。
調き……もとい、上下関係をみっちり教え込んだ私と違い、べリーチェ修道女には横柄な態度を取っている可能性がある。
「大変よね?」
首を傾げて訊ねると、「ええ、まあ……」と苦笑交じりの微笑みを返された。
「聖女様がマンデーズ教会に向かわれた事を知った時は、また置いて行かれたと暫く駄々を捏ね不貞腐れていて手を焼きましたが――何とか言い含めて仕事を与えてみたら、最近やっと聖職者としての自覚が出て来たようで真面目に働いておりますわ」
何と、子供達を教えているんですよ!
「グッ、ゲホゲホッ……」
その言葉の衝撃たるや。
私は口に含んだシチューを危うく噴き出しかけた。
子供達を教える? 教師? あの馬鹿で変態な雄豚奴隷メイソンが!?
「嘘だ。信じられない……」
幻聴を疑っていると、愕然とした様子で震え声を出すグレイ。全く同感だ。
驚かせる事に成功したとでも言わんばかりにクスクスと笑うべリーチェ修道女。
「猊下、本当ですわ。そろそろ午後の授業が始まる所でしょう。ご覧になられますか?」
どうしよう、子供達が凄く心配なんだけど。
リハーサル……でも、少しだけなら見ても良いかしら?
凄く気になるんだけど。
ちらり、とサリューン枢機卿やメンデル修道院長を見る。
すると、苦笑いを浮かべながら「賢者様の聖句のおさらいをしたいですし、半時程度なら構いませんよ」と許可が出た。
どこかげんなりした恨めしそうな様子でこちらを見るイドゥリース、それを励ますメリー。
彼らに頑張れとエールを送り後でねと手を振って、授業が行われている教室に行ってみる事に。
「畏まりました。こちらへどうぞ」
べリーチェ修道女の案内で向かった先――そこは私が講義をしたこともある古びた大きな石板、もとい黒板のある部屋だった。
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