最弱伝説俺

第三章 三大イベント

1

「球技大会……」

　配られたプリントを見て、思わず呟く。

　球技大会は中学でもあった。それなりに活躍をし、小日向家のファンや道場に通う生徒が応援してくれた。人間として弱い葵にまで一生懸命応援してくれる姿を見て、人知れず感動したのを覚えている。
　のはいいとして、この豪華な装丁はなんだろうか。
　お知らせのプリントなはずが、修学旅行のしおりのようにホチキス止めの計十枚はあるぶ厚さだ。ちらりと周囲を確認すると、クラスメイトも同じような反応をしている。

――やっぱ球技大会でこんな量おかしいよな。

　あまり説明を聞かずすぐ忘れる葵だが、珍しく顔を上げて担任の言葉を待った。

「えー、全員配られたな。この学校は球技大会が盛んだ。来週種目決めをするから各自プリントをよく読んでおくように。以上」
「以上！？」
「何も分からなかった！」

　葵は前を向いたまま呆然と固まった。初日から薄々感じていたが、この教師真面目さに欠けるのではないか。今まで指摘されてこなかったのか、注意を聞かない人間なのか、哀れみを含んだ視線を送っていたら、ばっちり目が合ってしまった。
　慌てて逸らすと負けなので、ゆっくり、自然に窓の方を向いてみる。まだ視線を感じる。朝のHRが終わるまで、ずっと外を眺める羽目になった。

　四時間目が終わり、山田との昼食タイムを済ませ廊下を歩いていたら、急に名前を呼ばれた。
　声の方を向くと、絶賛気まずい中の担任教師が部屋の中から手招きをした。プレートには「理科準備室」と書かれている。

――そういえば、先生って理科担当だっけ。

　呑気に思っている場合ではない。これは呼び出しというやつだ。ただでさえ勉強面で不安があるのに、生活面でも評価を落としたら。保護者への連絡という悪夢が頭を過る。

――だめだめだめ！　絶対だめ！　誰が来てもすごい怒られるやつ！

「なんですか」
「こっち来い」

　決定事項らしい。ここで断るのもマイナスだと判断し、重い足取りで理科準備室へと入る。ドアを閉めて立っていたら、椅子を指差された。昼休みはまだ十五分はある。すぐ退室するつもりだったのに。

「お、小日向でもおとなしく座るんだな」

　小日向でもとはなんだろう。理解出来ず首を傾げると、担任は一瞬目を見開いた後書類をめくり出した。