最弱伝説俺

第二章 噂が広まるのは早いもので

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　山田に勢いよく振り返る。

「同じクラスって、あれ広田君だろ？」
「そう、広田君」

　頷くが、葵と山田は同じクラスではない。それなのに両クラスに「広田」がいるのはどういうことだろうか。

「まま、まさか広田君は幽霊！？　いろんなクラスを彷徨ってるとか」
「ち、違うと思う」
「だってあれって」

　気付かれないよう観察してみるが、どう見ても広田にしか見えない。

「うん？」

　広田にしか見えない……と考えたところでおかしなところに気が付く。

　まだ出会って一日しか経っていないが、知る限り広田は真面目を形にしたような見た目をしていた。しかし、今の広田は制服を着崩し、眼鏡の代わりにピアスをしている。さらに話し方もあのように乱暴ではなかったはずだ。

「他人の空似？　にしては出来過ぎだし」

　ううん、と呻っていると山田が顔を近づけて小声で言った。

「普通に考えたら双子じゃないかな」
「ふッ……なるほど！」

　勢いで立ち上がりそうになって、ここが食堂だということを思い出し思いとどまる。

「へええ、広田君の双子君ね……確かにそっくり。でも、別人だと思ってみると違うとこも多いかな」
「仲悪そうだね」
「ああ、そういえば広田君は自宅からなのに彼は寮だもんな。わざわざ近いのに寮入るって理由がないと選択しないだろうし」

　巻き込まれたくないので、この双子問題は気が付かなかった振りをすることに決めた。

「おっし！　じゃあ夕飯夕飯～！　何にしよう、山田君は？」
「えと、えと……ハンバーグ」

　メニューを見て一生懸命答える山田、横からメニューを覗き見していた葵も「美味しそう、俺もそれにする」と賛同して二人で券売機に並びに行った。

「ここ洋食のメニュー多いな。実家が和食中心だから新鮮だ」
「そそ、そうなんだ。僕は普通かな」
「なんか、父親が食事にも気を使わないと体を鍛え……っと、健康に悪いとか言ってさ」
「へー」

　危なく実家のことを暴露しそうになって口を噤む。さすがにこの程度ではバレず、ほっと胸を撫で下ろした。




　二人から離れた場所で一人で座り、広田が葵を睨みつける。笑顔で会話をする葵に嫌悪がどんどん増殖していった。

「くっそ……またあいつに間違われた……もっと“変えなきゃ”」