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第二章 噂が広まるのは早いもので
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「へ……トップじゃない?」
間抜けな声が二人きりの寝室に響く。
今確かに「違う」と西谷が言った。それでは、噂していたあの者たちの勘違いなのだろうか。思ったより怖くない人かもしれない、ほっと胸を撫で下ろしたところに爆弾が落ちた。
「俺より強ぇ奴が一人いるってだけだけどな。そいつの正体を誰も知らないから、まあ表向きトップっちゃあトップか」
火の無いところに煙は立たず。噂は噂のままであってほしかった、葵はげっそり項垂れた。
「結局不良ってことですか」
「はあ? この姿見て真面目ちゃんに見えんのか?」
両手を広げて笑う西谷に、ぶんぶん首を振って否定する。
こんな風貌で真面目だったら、ギャップ狙いにしても程がある。しかも、ベッドのサイドテーブルに灰皿がある時点でおかしい。
「ってか、正体知らないトップって何ですか! 怖い!」
今更気が付いた西谷の科白に恐怖した。その顔を見た西谷はそっぽを向いてしまったが、絞り出すように告げる。
「闇討ち……じゃねぇんだけど、俺らが気に入らないのか夜ぶらついてる時喧嘩吹っかけられたんだ。他の奴らもそう、俺は去年だったかな。正義の味方気取りか知らねぇが、ふざけんなっつう話だよ」
「夜……顔は見たんですか?」
「いや、お面と帽子被ってたからわかんね。だが、ガタイが良かったし何より俺を負かすくらいだから、スポーツ特待の奴らの誰かだと思ってる」
襲われたのは夜の学校の敷地内であるから、生徒であることは間違いないだろう。しかし、寮生に限ったとしても何百人もいる。スポーツ特待でも百人近くいるはずだ。
面を被っているとなると、計画的に事を行っていて、それが一度や二度でないのならば今後も続く可能性もある。
「怖い……。それって不良の人だけ、とか?」
正義の味方気取りであれば一般生徒は安心出来るかもしれない。
葵はそこではたと気が付いた。
「あれ……俺、不良だって勘違いされてるんだっけ? や、やばい! どうしよう、殺される!」
殺されることはいくらなんでも考えられない。西谷はそう思ったが、どうやら葵はパニックを起こしてそれすら分かっていないらしい。
これは好都合だと葵を優しく抱きしめた。
「大丈夫。お前のことは守ってやる。弱いんだろ? ん?」
弱いと思い込んでいるのなら、守ってやるという科白は効果があるはずだ。内心にやにやしていると、勢いよく突っぱねられた。
「やっやだ! 不良怖い! 西谷さんも怖いいいいいぃぃ!」
予想以上のパニックだったらしく、叫びながら走り出しそのまま部屋を出ていってしまった。
行き先の無くなった広げられた両腕を寂しく下に下ろす。
「何だあいつ……でもそこも可愛いな。よし、絶対嫁にする」
西谷はちょっと馬鹿だった。
間抜けな声が二人きりの寝室に響く。
今確かに「違う」と西谷が言った。それでは、噂していたあの者たちの勘違いなのだろうか。思ったより怖くない人かもしれない、ほっと胸を撫で下ろしたところに爆弾が落ちた。
「俺より強ぇ奴が一人いるってだけだけどな。そいつの正体を誰も知らないから、まあ表向きトップっちゃあトップか」
火の無いところに煙は立たず。噂は噂のままであってほしかった、葵はげっそり項垂れた。
「結局不良ってことですか」
「はあ? この姿見て真面目ちゃんに見えんのか?」
両手を広げて笑う西谷に、ぶんぶん首を振って否定する。
こんな風貌で真面目だったら、ギャップ狙いにしても程がある。しかも、ベッドのサイドテーブルに灰皿がある時点でおかしい。
「ってか、正体知らないトップって何ですか! 怖い!」
今更気が付いた西谷の科白に恐怖した。その顔を見た西谷はそっぽを向いてしまったが、絞り出すように告げる。
「闇討ち……じゃねぇんだけど、俺らが気に入らないのか夜ぶらついてる時喧嘩吹っかけられたんだ。他の奴らもそう、俺は去年だったかな。正義の味方気取りか知らねぇが、ふざけんなっつう話だよ」
「夜……顔は見たんですか?」
「いや、お面と帽子被ってたからわかんね。だが、ガタイが良かったし何より俺を負かすくらいだから、スポーツ特待の奴らの誰かだと思ってる」
襲われたのは夜の学校の敷地内であるから、生徒であることは間違いないだろう。しかし、寮生に限ったとしても何百人もいる。スポーツ特待でも百人近くいるはずだ。
面を被っているとなると、計画的に事を行っていて、それが一度や二度でないのならば今後も続く可能性もある。
「怖い……。それって不良の人だけ、とか?」
正義の味方気取りであれば一般生徒は安心出来るかもしれない。
葵はそこではたと気が付いた。
「あれ……俺、不良だって勘違いされてるんだっけ? や、やばい! どうしよう、殺される!」
殺されることはいくらなんでも考えられない。西谷はそう思ったが、どうやら葵はパニックを起こしてそれすら分かっていないらしい。
これは好都合だと葵を優しく抱きしめた。
「大丈夫。お前のことは守ってやる。弱いんだろ? ん?」
弱いと思い込んでいるのなら、守ってやるという科白は効果があるはずだ。内心にやにやしていると、勢いよく突っぱねられた。
「やっやだ! 不良怖い! 西谷さんも怖いいいいいぃぃ!」
予想以上のパニックだったらしく、叫びながら走り出しそのまま部屋を出ていってしまった。
行き先の無くなった広げられた両腕を寂しく下に下ろす。
「何だあいつ……でもそこも可愛いな。よし、絶対嫁にする」
西谷はちょっと馬鹿だった。
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