18 / 57
第二章 噂が広まるのは早いもので
6
しおりを挟む
二人で座り込み、ようやく本題に取りかかろうと不良が葵を見遣ったが、後ろががやがや騒がしいことに気が付く。どうやら、他の一年生が帰ってきたらしい。
さすがに廊下で話すのは目立ちすぎると思い立ち、顎で「向こう行くぞ」と指示を出す。
「何処、行くんですか」
「俺の部屋だ」
「いや、それは遠慮……」
「ああ?」
「しないでぇっす!」
不良の殺人的な視線に押し潰されてイエスしか言えない。心臓がばくばく鳴り過ぎて、口から飛び出て宇宙まで飛んで行きそうだ。今から何をされるのだろう。やはり復讐か。
それ相応のことをしでかした自覚があるので、冷や汗が止まらない。
――やばいやばいやばいやばいやばい。完っ全に死亡フラグ立ってる。初っ端からラスボスのねぐらに行くとか俺、頭おかしすぎでしょ! つっても、回避する方法知らねえし!
せめてもの気休めに、スタッフから渡された陣作注意書きプリントを鞄の中で握りしめぶつぶつ呟いてみる。
「さっきからぶつぶつうっせぇぞ」
「すみません……」
しゅん、と体を小さくさせて付いていく。
不良の部屋は何というか、意外や意外、一〇一号室だった。寮監側が不良を避けようとして一番奥にしそうなものであるのに、関係無いのだろうか。
「さっさと入れ」
「は、はい」
「ここいいだろ、外に一番近い。起きて十秒で外だ」
「へえ……」
どうにかしてこの部屋をゲットしたであろう不良のドヤ顔が若干ウザいが、そんなことをツッコむ度胸は葵には無い。
しかし、噂だけで悲鳴を上げる寮監であるのに、寮監室から一番近い部屋がこの人とは、他人事ながら寮監の心臓を心配してやまない。
「その辺座っとけ。飲み物持ってきてやる」
「はい」
一言一言が上からなのはこの際無視するとして、意外にも優しそうな言葉をかけてもらえ、少し落ち着いた気持ちで部屋を見渡す。
――……どこに座れ、と?
視界いっぱい広がった雑誌と服の山。不幸中の幸いと言っていいものか、臭い匂いはしないもののすでにこの光景だけで暴力である。
恐らく目の前にひときわこんもり膨らむ山の中にソファがあるのだろうが、絶対座りたくない。
どうしたものか、考えている内に不良が戻ってきた。
「何してんだ?」
「何してんだというか、座る場所が見つからなくて……」
さすがに廊下で話すのは目立ちすぎると思い立ち、顎で「向こう行くぞ」と指示を出す。
「何処、行くんですか」
「俺の部屋だ」
「いや、それは遠慮……」
「ああ?」
「しないでぇっす!」
不良の殺人的な視線に押し潰されてイエスしか言えない。心臓がばくばく鳴り過ぎて、口から飛び出て宇宙まで飛んで行きそうだ。今から何をされるのだろう。やはり復讐か。
それ相応のことをしでかした自覚があるので、冷や汗が止まらない。
――やばいやばいやばいやばいやばい。完っ全に死亡フラグ立ってる。初っ端からラスボスのねぐらに行くとか俺、頭おかしすぎでしょ! つっても、回避する方法知らねえし!
せめてもの気休めに、スタッフから渡された陣作注意書きプリントを鞄の中で握りしめぶつぶつ呟いてみる。
「さっきからぶつぶつうっせぇぞ」
「すみません……」
しゅん、と体を小さくさせて付いていく。
不良の部屋は何というか、意外や意外、一〇一号室だった。寮監側が不良を避けようとして一番奥にしそうなものであるのに、関係無いのだろうか。
「さっさと入れ」
「は、はい」
「ここいいだろ、外に一番近い。起きて十秒で外だ」
「へえ……」
どうにかしてこの部屋をゲットしたであろう不良のドヤ顔が若干ウザいが、そんなことをツッコむ度胸は葵には無い。
しかし、噂だけで悲鳴を上げる寮監であるのに、寮監室から一番近い部屋がこの人とは、他人事ながら寮監の心臓を心配してやまない。
「その辺座っとけ。飲み物持ってきてやる」
「はい」
一言一言が上からなのはこの際無視するとして、意外にも優しそうな言葉をかけてもらえ、少し落ち着いた気持ちで部屋を見渡す。
――……どこに座れ、と?
視界いっぱい広がった雑誌と服の山。不幸中の幸いと言っていいものか、臭い匂いはしないもののすでにこの光景だけで暴力である。
恐らく目の前にひときわこんもり膨らむ山の中にソファがあるのだろうが、絶対座りたくない。
どうしたものか、考えている内に不良が戻ってきた。
「何してんだ?」
「何してんだというか、座る場所が見つからなくて……」
12
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?


BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!
京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優
初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。
そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。
さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。
しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新


眠り姫
虹月
BL
そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。
ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる