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第二章 噂が広まるのは早いもので
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「羨ましい……」
本当に羨ましい。
遠い学校に一人で通うことだけでも嫌なのに、寮暮らしが決定してしまった葵にとっては、恵まれている山上の状況に変わってほしいとまで思う。
そういえば、寮はどんなところだろうか。まさか、何人かでシェアしたりするのだろうか。今更ながら不安に思って、配られたプリントを真剣に読み出す。
『寮は、旧校舎の裏側にあり、一年生と二年生が二人部屋、三年生が一人部屋です。消灯の二十一時以降は外に出ることが出来ません。外泊する場合は……』
――二人部屋、二人、一人じゃなあぁぁあいい! しかも、二人とか、いっそ三人以上ならよかったものの二人きりとか……。
もし、自分の弱さがバレていじめられでもしたら、向こう三年間生きていかれるだろうか不安になる。
多分、無理。
まだ見ぬ同室者を想像して、ぶるりと震える葵だった。
「えー……広田君も寮じゃないのか」
自習になって十分、すでに帰る準備を始めているクラスメイトたちをすり抜けて広田のところまで行き、もしかしての可能性をかけて聞いてみたが答えはNOだった。
寮生であれば、同室でなくとも食事を共にできると思っていたのだが、これでは知り合いゼロから寮生活をスタートさせなければならないらしい。
「俺……帰ろっかな」
「何処、寮?」
「いや、家」
「は? ばっかじゃないの?」
広田君は少々口が悪いようです。じめじめしたオーラ全開だがここは教室、これ以上の泣き言を言えるはずもなく広田を見送る。
「じゃあね」
「おー、明日」
手を軽く振って振り返る。予想通り山上が待っていた。主人の帰りを待っている犬だと思えば可愛いのかもしれないが、こんな大型犬を飼いたいと思ったことはない。
何か言った方がいいのだろうか。もし無視してこのまま帰ってしまったら、何処までも付いてきそうな気がする。
「じゃあ、また明日な」
広田に声をかけたようにすれば、山上は顔と顔が付くかと思うくらい距離を詰めてきた。
「兄貴! 鞄、持ちます!」
「いいよ。寮に行くだけだから」
「そんじゃ、その寮の入り口まで!」
断っているのに話を聞いていおらず、かつあげされる勢いで鞄を取られ仕方なく一緒に寮まで行くことになった。
困った。
クラスの中で寮生を見つけて一緒に行こうと思っていたのに、これでは絶対に寮に着くまで山上は離れてくれないだろう。
本当に羨ましい。
遠い学校に一人で通うことだけでも嫌なのに、寮暮らしが決定してしまった葵にとっては、恵まれている山上の状況に変わってほしいとまで思う。
そういえば、寮はどんなところだろうか。まさか、何人かでシェアしたりするのだろうか。今更ながら不安に思って、配られたプリントを真剣に読み出す。
『寮は、旧校舎の裏側にあり、一年生と二年生が二人部屋、三年生が一人部屋です。消灯の二十一時以降は外に出ることが出来ません。外泊する場合は……』
――二人部屋、二人、一人じゃなあぁぁあいい! しかも、二人とか、いっそ三人以上ならよかったものの二人きりとか……。
もし、自分の弱さがバレていじめられでもしたら、向こう三年間生きていかれるだろうか不安になる。
多分、無理。
まだ見ぬ同室者を想像して、ぶるりと震える葵だった。
「えー……広田君も寮じゃないのか」
自習になって十分、すでに帰る準備を始めているクラスメイトたちをすり抜けて広田のところまで行き、もしかしての可能性をかけて聞いてみたが答えはNOだった。
寮生であれば、同室でなくとも食事を共にできると思っていたのだが、これでは知り合いゼロから寮生活をスタートさせなければならないらしい。
「俺……帰ろっかな」
「何処、寮?」
「いや、家」
「は? ばっかじゃないの?」
広田君は少々口が悪いようです。じめじめしたオーラ全開だがここは教室、これ以上の泣き言を言えるはずもなく広田を見送る。
「じゃあね」
「おー、明日」
手を軽く振って振り返る。予想通り山上が待っていた。主人の帰りを待っている犬だと思えば可愛いのかもしれないが、こんな大型犬を飼いたいと思ったことはない。
何か言った方がいいのだろうか。もし無視してこのまま帰ってしまったら、何処までも付いてきそうな気がする。
「じゃあ、また明日な」
広田に声をかけたようにすれば、山上は顔と顔が付くかと思うくらい距離を詰めてきた。
「兄貴! 鞄、持ちます!」
「いいよ。寮に行くだけだから」
「そんじゃ、その寮の入り口まで!」
断っているのに話を聞いていおらず、かつあげされる勢いで鞄を取られ仕方なく一緒に寮まで行くことになった。
困った。
クラスの中で寮生を見つけて一緒に行こうと思っていたのに、これでは絶対に寮に着くまで山上は離れてくれないだろう。
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