最弱伝説俺

第二章 噂が広まるのは早いもので

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「嘘だ……」

　三十人を優に超えるクラスであるから、確率も三十分の一以下だ。それで負けるとはよほど運が悪いと思っていたが、驚きの結果に葵もぽろりと声を漏らしてしまう。

「決まりましたー」

　皆の安堵の拍手が悩ましい。

「学級委員は広田君です」
「何でだよ！」

　一度断ったはずの広田だった。叫ぶイメージの無かった彼も、納得がいかないらしく声を荒げて机を叩いている。
　まさかのじゃんけんの弱さに口もとを押さえてぶっと笑っていたら、気が付いた広田に睨まれた。まだ笑いが治まらないので、口もとを隠しながら会釈だけして謝る。もっと睨まれた。

「あー、兄貴が代表になれば、クラス一気に集約出来たのに！　でも、ちょっと脅せばこんなクラスくらいすぐっスよね」
「俺、そんな気ないから……」

　隣で山上が何か言っているが、彼の暴走はどこまで続くのだろうか。いい加減気付いてほしい。

「はいはい、終了―。広田が学級委員になる宿命だったってことで。んじゃ、あと自習ね」

「これ配っておいて」とプリントを教卓に置いてさっさと帰ってしまった。

　やる気が無さ過ぎて、もう誰もツッコまない。広田がため息を連打しながら、プリントを一番前の席の生徒たちへ配っていく。

「不本意ながら学級委員になった広田です。よろしく」
「あ、知ってる。代表の人だ」
「もうそれ関係無いし。どうせじゃんけんクラス一弱いし」
「委員長、泣かないでー」
「泣いてない。副委員長にさせるぞ」
「ごめんなさい！」

　引きつらせた笑いを見せる広田の本気の顔に、おちょくっていた生徒が慌てて机に頭をぶつける勢いで謝る。
　そのまま返事は無かったが、広田の機嫌がよくなった様子は無いので、もしかしたら明日には彼が副委員長になっているかもしれない。

　回ってきたプリントの中身を読む。
　やらなければならないことや親に連絡しなければならないことが書かれていたら大変だ。万が一、学校で不本意ながらも不祥事を起こして実家に連絡がいったりしたら、学校での処分以上の地獄が待っていることだろう。

――何だ、年間行事か。あとは……。

　配られたプリントは二枚で、一枚目は年間行事表、二枚目は寮に入る生徒への注意事項だった。

　この学校は、遠方から通う生徒のために寮が併設されている。しかし、地元が近い進学者も少なくないため、実際寮に入るのは半分もいない。未だに寮に入ることを躊躇している葵は、適当に読み流すだけだ。

「あーやだやだ。毎週家帰ろう。快君だって、いつも帰ってきてるし」

　ぶつぶつ言いながらプリントを見ていることに気が付いた山上が、葵の方へ身を乗り出す。

「もしかして兄貴、寮っスか」
「あ……うん」
「マジすか！　俺も寮にすればよかった！」
「家、遠いのか？」
「徒歩十分です」
「近っ！」