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第一章 俺、最弱なんです
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曖昧な返事も気にせず生徒は続ける。
「僕、さっき受付で並んでた時小日向君の後ろにいたんだ」
「へえ」
あまり言葉を発してはいけない決まりを守りつつ、これはもしや「友だちフラグ」が立っているのではと嬉しい気持ちになる。しかし、テンションを上げないで友人になる方法がいまいち分からない。
友人は欲しい、確実に只今絶賛ぼっち中なので切実に欲しい。
「もしかして、同じクラスか?」
「まだクラス表見てないから分からないけど、同じだといいね」
――おおっ! 何か知らないけど印象良い感じ! やった俺!
心の中でガッツポーズを取る。この勢いなら友だちになれそうだ。
「……一緒にクラス表見ようか」
「そうだね、あっちみたいだよ」
「おう……」
不自然でない程度に誘ってみれば、すんなりOKをもらえて逆に緊張してきた。にこにこ笑っているので機嫌は良さそうだが、何を考えているのかいまいち分からない。そもそも、何故葵に話しかけたのだろうか。
さほど変わらない、若干葵より低いかもしれない横にいる生徒を覗き見る。つい先ほどまで痛いくらいに睨んできた不良とは比べ物にならないくらい普通だ。
黒髪に櫛で整えたような流れるぴしっとした髪型、さらに黒縁眼鏡が余計に普通さを助長している。しかし、その突出していない見目が今の葵には癒しだった。
何もしていないはずなのに、初っ端から大柄の不良に絡まれ、急いで入学式の席に座れば真横の不良からは式が終わるまで見つめられる始末。疫病神でも取り付いているかの所業だ。
――やっぱ友だちになるなら、この人みたいな一般生徒だよな。俺、不良じゃないし。
納得して、一人うんうん頷いている葵に生徒が言う。
「でさ、さっき僕が挨拶している時に小日向君が見えて」
「挨拶?」
「新入生代表のやつ」
「えっ……あ、ああ、あれか」
全く名前すら覚えられなかった生徒がまさかこの男だったとは。代表になるくらいの優等生と友人になる確率はかなり低いとか思っていた自分を恨んでも遅い。もしかして、だから最初名前を名乗らなかったのだろうか。
思い出そうにも最初から聞いていなかったので思い出す記憶すら無く、どんなに考えても名前が分からなかった。
――うわー! 今名前聞くの失礼だよな? 代表やったって言っちゃってるもんな? やべー……初日から難関事件多すぎだろ……。
呆然とする葵に、意外なところから助け舟が出された。
「あ、クラス表あった。広田、広田はー……」
――クラス表万歳ィ!! 広田君、代表な優等生は広田君! 広田広田……。
今度こそ忘れないよう頭の中で反芻する。あとはクラス表で広田の下の名前を探すだけだ。
「僕、さっき受付で並んでた時小日向君の後ろにいたんだ」
「へえ」
あまり言葉を発してはいけない決まりを守りつつ、これはもしや「友だちフラグ」が立っているのではと嬉しい気持ちになる。しかし、テンションを上げないで友人になる方法がいまいち分からない。
友人は欲しい、確実に只今絶賛ぼっち中なので切実に欲しい。
「もしかして、同じクラスか?」
「まだクラス表見てないから分からないけど、同じだといいね」
――おおっ! 何か知らないけど印象良い感じ! やった俺!
心の中でガッツポーズを取る。この勢いなら友だちになれそうだ。
「……一緒にクラス表見ようか」
「そうだね、あっちみたいだよ」
「おう……」
不自然でない程度に誘ってみれば、すんなりOKをもらえて逆に緊張してきた。にこにこ笑っているので機嫌は良さそうだが、何を考えているのかいまいち分からない。そもそも、何故葵に話しかけたのだろうか。
さほど変わらない、若干葵より低いかもしれない横にいる生徒を覗き見る。つい先ほどまで痛いくらいに睨んできた不良とは比べ物にならないくらい普通だ。
黒髪に櫛で整えたような流れるぴしっとした髪型、さらに黒縁眼鏡が余計に普通さを助長している。しかし、その突出していない見目が今の葵には癒しだった。
何もしていないはずなのに、初っ端から大柄の不良に絡まれ、急いで入学式の席に座れば真横の不良からは式が終わるまで見つめられる始末。疫病神でも取り付いているかの所業だ。
――やっぱ友だちになるなら、この人みたいな一般生徒だよな。俺、不良じゃないし。
納得して、一人うんうん頷いている葵に生徒が言う。
「でさ、さっき僕が挨拶している時に小日向君が見えて」
「挨拶?」
「新入生代表のやつ」
「えっ……あ、ああ、あれか」
全く名前すら覚えられなかった生徒がまさかこの男だったとは。代表になるくらいの優等生と友人になる確率はかなり低いとか思っていた自分を恨んでも遅い。もしかして、だから最初名前を名乗らなかったのだろうか。
思い出そうにも最初から聞いていなかったので思い出す記憶すら無く、どんなに考えても名前が分からなかった。
――うわー! 今名前聞くの失礼だよな? 代表やったって言っちゃってるもんな? やべー……初日から難関事件多すぎだろ……。
呆然とする葵に、意外なところから助け舟が出された。
「あ、クラス表あった。広田、広田はー……」
――クラス表万歳ィ!! 広田君、代表な優等生は広田君! 広田広田……。
今度こそ忘れないよう頭の中で反芻する。あとはクラス表で広田の下の名前を探すだけだ。
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