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それから、大阪たちの悪行を見事に世間に晒され、マスコミに追われることになり彼らの地位はことごとく奪われていった。
大阪の父は、ビッグテレビの社長の座から引きずり降ろされ会社から追放。「息子がやったことで、自分は関係ない」そういって、息子の聡にこれまでやってきた汚い手口をすべて擦り付け自分だけ逃れようとしたが失敗。その後も、あの手この手を使ってごね倒したが、誰も手を貸してくれる人は現れず、結局そのままビッグテレビを去ることになった。
山口アナウンサーは、自分の知名度を上げるために仕組んだ記事だったことがバラされて、一気に人気は墜落。アナウンサー職から事務職へと配置転換することになったらしい。
そして、大阪聡は唯に対する暴行罪で逮捕されたが、自ら言っていたコネを使用したのかすぐに釈放されていた。だが、当然自由の身になったところで、居場所なんてあるはずもなく。用意されていた映王の副社長の椅子は消えていた。そのことに憤慨した大阪は、大いに暴れ回ったらしい。あれだけ、自分の地位と力に固執していた男がすべてを失うこととなった。
親子揃って、醜態をさらし、結局二人は日本を捨て、海外に行ってしまった……というのは、あくまでも噂。本当のところはもうわからない。それ以上の情報はもう二度と入ってくることはなかった。
一方。亮が派手にあのド派手に打ち上げ花火会見に当初憤慨していた唯だったが、結局それは功を奏していた。マスコミに追い回されることを覚悟していた唯の周りは、静かなまま。いつもと変わりのない日常がそのまま続いていた。
「結局、また亮の背中に守られてちゃったなぁ」
そう唯が言えば、亮は口角を上げていった。
「ま、どうせ俺の後ろに隠れられるのは、今だけなんだから、しっかり隠れてろよ」
「どういう意味?」
「まぁ、そのうちわかるよ」
亮ははぐらかし、いよいよ本腰を入れて映画製作に取り掛かった。だが、その間も大阪騒動、世の中に感染症が蔓延し始め、困難が続き、前進しない日も続いていたが、亮はそれさえも力にしていたようだった。日に日に輝いてく亮を見ながら、唯も前へと進んだ。大学を卒業し、就職を決め新たな道を歩み始めた。
――そして、三年後。
突き抜けるような青い空。そんな空を唯は目を細め見上げていた。
あの時のぼんやりした雲は取り払われて、その青さと清々しさが濁りなく胸にいっぱいに抱きしめながら、唯は亮の初作品の完成披露試写会に足を運んでいた。
「私まで完成披露試写会読んでもらえるなんて、もう感動! 楽しみだね!」
隣を歩くひなの顔もまた一点の曇りのない笑顔が広がっていた。ひなのはじける笑顔をさらに明るくさせている黄色いワンピースが唯の胸を高鳴らせていた。
「そうだね。私もこの日、ずっと楽しみにしてたもの」
唯の白のワンピースが風でスカートの裾が翻り、蝶のように舞い始める。そこに日差しが跳ね返り、唯の顔に満面の笑みが施されていた。その美しさは周辺にいた人々の目を惹きつけて、注目を集めていたが、当の本人は気づかない。
「やっぱり、唯には敵わないや」
ひなは、笑顔で呟き、二人は会場の中へと入った。
「こんないい席、落ち着かないから嫌よ」と唯がいっても「ここしか空いてないから、抗議は受け付けない」と亮に無理やり手渡されたチケットを握りしめて、ひなと二人で最前列中央の席に座った。
会場は満員。マスコミの数は凄すぎて、数えるのをやめた。
その数分後、映画の上映が始まった。亮の初監督作品。純愛ラブストーリー。
それは、二人の歩んできた軌跡を辿っているようだった。いろんな思いがこみ上げては、移ろう。二人の未熟さと弱さ。そして、思いの強さが胸を熱くさせていた。会場から溜息と涙と笑顔が入り混じっていた。
そして、主人公とヒロイン。二人が向かい合い何かを言いだそうとしたところで、映画は終わりを告げていた。
エンドロールが流れ、一瞬暗闇に包まれる会場はすぐに明かりを取り戻し、女性司会者が現れた。会場の余韻を壊さないように視界女性のよく通るのに抑えた声が響く。
「前置きはいりませんね。この映画の余韻に浸りながら、監督をお呼びしましょう。宮川亮さんです」
先ほどの静かな余韻は、吹き飛び、割れんばかりの拍手と眩いフラッシュ。地響きのような歓声が隙間なく包み込んだ。黒いスーツに身を包んだ誰もが見惚れてしまいそうなほど、すべての容姿が端正で非の打ちどころのない亮が現れた。
そんな姿に黄色い声援が更に上乗せされて会場が揺れていた。それに笑顔で答え、一礼する亮に拍手が重なった。
「では、お話をお聞きしたいと思います。長い歳月をかけて思い合う二人が大事に、取りこぼさないように……互いの思いを育んでいく。そんな二人の心情が丁寧に描かれていて、感動してしまいました。胸が切なく胸が締め付けられるようなシーン印象的で。劇中に出てくるノートが、切れそうになった二人の絆を繋ぎとめる一つのカギとなっていたように思いました。そのノート、宮川が大事にしていたノートが元になっているとお聞きしたのですが本当ですか?」
「そうです。このノート。もうボロボロですけど。ここにはいろんな思いが詰まっているんです」
亮と唯。二人で書いていた約束のノートがその手にあって唯は驚く。確か、あれは部屋に置きっぱなしだったはず。
そう思っていたら、司会者がうんうんと頷いていった。
「なるほど。じゃあ、それがベースとなって映画ができたんですね! ……でも、私一つ不満があるんです。監督を目の前にこんなこと言うのは、あれなんですけれど」
急に笑顔だった司会者の表情は曇り、顔の中心にしわが寄った。
「最後のシーン。二人がやっと向かい合う決心をして、心を開く……という一番いいところで、この映画は終わってしまっています。私、この先が見たいんです! 知りたいんです! この会場にいる皆さんもそう思いますよね?」
マイクを会場に向け煽る司会者に、応えるように観客は盛り上がる。その波に乗るように、亮は輝く笑顔で言った。
「じゃあ、この物語の続きは今ここで」
亮はそういって、スポットライトを浴びながら舞台から降りていく。予想外の行動に、会場はどよめく。亮の背中を慌てて司会者はマイクを握りしめて、追いかけた。フラッシュがまた一段と激しくなる。すべての視線が亮に集まった。亮の足は一番前に座っている唯のところへ向けられる。
え? 何で? どうして?
近付いてくる亮に唯は世界が揺れるほど動揺し始めていた。ドキドキ心臓が煩い。助けを求めるように隣に座っていたひなに縋ったが、ニヤニヤ笑顔を浮かべるばかりで唯の手を払いのけられた。そして亮が、とうとう唯の目の前に。舞台上で浮かべていた余裕の笑顔がそこにあるかと思ったら、思いの外緊張した表情で驚きながら見返す。
すぐ近くにいた司会者が、みんなに聞こえないように笑顔で唯に囁いた。
「立ってください」
逃げ道なんてないですよ。そんな、声に観念するようにゆっくり立ちあがると、亮だけを追っていたスポットライトが唯にも注がれていた。会場からワーッと津波のような歓声が飲み込んだかと思ったら、嘘のような静寂。そして、司会者は亮にマイクを向けて、目を輝かせながらじっと待った。
亮はふっと息を吐くと一息に告げた。
「僕と結婚してください」
もう俺の背中も見飽きただろ? 一緒に横に並んでくれよ。そんな風に言っているようなアーモンドの瞳が唯に真っすぐに注がれ、亮はポケットを探った。
そして、亮の手の中にあったのは、小さな小箱。それを亮が開けて唯に差し出した。スポットライトなんかじゃ比べ物にならないほど、明るく眩い光が唯の中心に遮られることなく真っすぐに届いて輝いた。それを貰い受けた唯の笑顔はそれ以上に輝いていた。
「はい。喜んで」
熱いくらいの光を浴びて真っ赤な顔をさせながら唯が答えると、人目を憚ることなく亮は唯を抱きしめた。
「これで、完結ですね!」
司会者の声と割れんばかりの拍手と祝福の声が二人を包み込む。その中心に二人はいた。
その題名は――『背中越しの恋人』
大阪の父は、ビッグテレビの社長の座から引きずり降ろされ会社から追放。「息子がやったことで、自分は関係ない」そういって、息子の聡にこれまでやってきた汚い手口をすべて擦り付け自分だけ逃れようとしたが失敗。その後も、あの手この手を使ってごね倒したが、誰も手を貸してくれる人は現れず、結局そのままビッグテレビを去ることになった。
山口アナウンサーは、自分の知名度を上げるために仕組んだ記事だったことがバラされて、一気に人気は墜落。アナウンサー職から事務職へと配置転換することになったらしい。
そして、大阪聡は唯に対する暴行罪で逮捕されたが、自ら言っていたコネを使用したのかすぐに釈放されていた。だが、当然自由の身になったところで、居場所なんてあるはずもなく。用意されていた映王の副社長の椅子は消えていた。そのことに憤慨した大阪は、大いに暴れ回ったらしい。あれだけ、自分の地位と力に固執していた男がすべてを失うこととなった。
親子揃って、醜態をさらし、結局二人は日本を捨て、海外に行ってしまった……というのは、あくまでも噂。本当のところはもうわからない。それ以上の情報はもう二度と入ってくることはなかった。
一方。亮が派手にあのド派手に打ち上げ花火会見に当初憤慨していた唯だったが、結局それは功を奏していた。マスコミに追い回されることを覚悟していた唯の周りは、静かなまま。いつもと変わりのない日常がそのまま続いていた。
「結局、また亮の背中に守られてちゃったなぁ」
そう唯が言えば、亮は口角を上げていった。
「ま、どうせ俺の後ろに隠れられるのは、今だけなんだから、しっかり隠れてろよ」
「どういう意味?」
「まぁ、そのうちわかるよ」
亮ははぐらかし、いよいよ本腰を入れて映画製作に取り掛かった。だが、その間も大阪騒動、世の中に感染症が蔓延し始め、困難が続き、前進しない日も続いていたが、亮はそれさえも力にしていたようだった。日に日に輝いてく亮を見ながら、唯も前へと進んだ。大学を卒業し、就職を決め新たな道を歩み始めた。
――そして、三年後。
突き抜けるような青い空。そんな空を唯は目を細め見上げていた。
あの時のぼんやりした雲は取り払われて、その青さと清々しさが濁りなく胸にいっぱいに抱きしめながら、唯は亮の初作品の完成披露試写会に足を運んでいた。
「私まで完成披露試写会読んでもらえるなんて、もう感動! 楽しみだね!」
隣を歩くひなの顔もまた一点の曇りのない笑顔が広がっていた。ひなのはじける笑顔をさらに明るくさせている黄色いワンピースが唯の胸を高鳴らせていた。
「そうだね。私もこの日、ずっと楽しみにしてたもの」
唯の白のワンピースが風でスカートの裾が翻り、蝶のように舞い始める。そこに日差しが跳ね返り、唯の顔に満面の笑みが施されていた。その美しさは周辺にいた人々の目を惹きつけて、注目を集めていたが、当の本人は気づかない。
「やっぱり、唯には敵わないや」
ひなは、笑顔で呟き、二人は会場の中へと入った。
「こんないい席、落ち着かないから嫌よ」と唯がいっても「ここしか空いてないから、抗議は受け付けない」と亮に無理やり手渡されたチケットを握りしめて、ひなと二人で最前列中央の席に座った。
会場は満員。マスコミの数は凄すぎて、数えるのをやめた。
その数分後、映画の上映が始まった。亮の初監督作品。純愛ラブストーリー。
それは、二人の歩んできた軌跡を辿っているようだった。いろんな思いがこみ上げては、移ろう。二人の未熟さと弱さ。そして、思いの強さが胸を熱くさせていた。会場から溜息と涙と笑顔が入り混じっていた。
そして、主人公とヒロイン。二人が向かい合い何かを言いだそうとしたところで、映画は終わりを告げていた。
エンドロールが流れ、一瞬暗闇に包まれる会場はすぐに明かりを取り戻し、女性司会者が現れた。会場の余韻を壊さないように視界女性のよく通るのに抑えた声が響く。
「前置きはいりませんね。この映画の余韻に浸りながら、監督をお呼びしましょう。宮川亮さんです」
先ほどの静かな余韻は、吹き飛び、割れんばかりの拍手と眩いフラッシュ。地響きのような歓声が隙間なく包み込んだ。黒いスーツに身を包んだ誰もが見惚れてしまいそうなほど、すべての容姿が端正で非の打ちどころのない亮が現れた。
そんな姿に黄色い声援が更に上乗せされて会場が揺れていた。それに笑顔で答え、一礼する亮に拍手が重なった。
「では、お話をお聞きしたいと思います。長い歳月をかけて思い合う二人が大事に、取りこぼさないように……互いの思いを育んでいく。そんな二人の心情が丁寧に描かれていて、感動してしまいました。胸が切なく胸が締め付けられるようなシーン印象的で。劇中に出てくるノートが、切れそうになった二人の絆を繋ぎとめる一つのカギとなっていたように思いました。そのノート、宮川が大事にしていたノートが元になっているとお聞きしたのですが本当ですか?」
「そうです。このノート。もうボロボロですけど。ここにはいろんな思いが詰まっているんです」
亮と唯。二人で書いていた約束のノートがその手にあって唯は驚く。確か、あれは部屋に置きっぱなしだったはず。
そう思っていたら、司会者がうんうんと頷いていった。
「なるほど。じゃあ、それがベースとなって映画ができたんですね! ……でも、私一つ不満があるんです。監督を目の前にこんなこと言うのは、あれなんですけれど」
急に笑顔だった司会者の表情は曇り、顔の中心にしわが寄った。
「最後のシーン。二人がやっと向かい合う決心をして、心を開く……という一番いいところで、この映画は終わってしまっています。私、この先が見たいんです! 知りたいんです! この会場にいる皆さんもそう思いますよね?」
マイクを会場に向け煽る司会者に、応えるように観客は盛り上がる。その波に乗るように、亮は輝く笑顔で言った。
「じゃあ、この物語の続きは今ここで」
亮はそういって、スポットライトを浴びながら舞台から降りていく。予想外の行動に、会場はどよめく。亮の背中を慌てて司会者はマイクを握りしめて、追いかけた。フラッシュがまた一段と激しくなる。すべての視線が亮に集まった。亮の足は一番前に座っている唯のところへ向けられる。
え? 何で? どうして?
近付いてくる亮に唯は世界が揺れるほど動揺し始めていた。ドキドキ心臓が煩い。助けを求めるように隣に座っていたひなに縋ったが、ニヤニヤ笑顔を浮かべるばかりで唯の手を払いのけられた。そして亮が、とうとう唯の目の前に。舞台上で浮かべていた余裕の笑顔がそこにあるかと思ったら、思いの外緊張した表情で驚きながら見返す。
すぐ近くにいた司会者が、みんなに聞こえないように笑顔で唯に囁いた。
「立ってください」
逃げ道なんてないですよ。そんな、声に観念するようにゆっくり立ちあがると、亮だけを追っていたスポットライトが唯にも注がれていた。会場からワーッと津波のような歓声が飲み込んだかと思ったら、嘘のような静寂。そして、司会者は亮にマイクを向けて、目を輝かせながらじっと待った。
亮はふっと息を吐くと一息に告げた。
「僕と結婚してください」
もう俺の背中も見飽きただろ? 一緒に横に並んでくれよ。そんな風に言っているようなアーモンドの瞳が唯に真っすぐに注がれ、亮はポケットを探った。
そして、亮の手の中にあったのは、小さな小箱。それを亮が開けて唯に差し出した。スポットライトなんかじゃ比べ物にならないほど、明るく眩い光が唯の中心に遮られることなく真っすぐに届いて輝いた。それを貰い受けた唯の笑顔はそれ以上に輝いていた。
「はい。喜んで」
熱いくらいの光を浴びて真っ赤な顔をさせながら唯が答えると、人目を憚ることなく亮は唯を抱きしめた。
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