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信頼
しおりを挟む 昼下がり、灰本事務所のドアを押す。
「お疲れ様です」
「来るなといっただろ」
デスクで作業していた灰本は、厳しい顔だけ向けてくる。
昨夜、あの後いったん事務所に戻って、灰本が撮った動画を確認したり、残っていた雑務を片付けた。終電はとうになくなり、灰本が車で送ってくれた。慣れないことをすると、どっと疲れが出るものだ。
灰本の運転する車の中では、眠りこけていて、気づいたら自宅アパート前。時刻は、午前をだいぶ過ぎた時間だった。
ほとんど寝たまま、ボロアパートの二階の自分の部屋へ、階段をあがろうとしたら、灰本はわざわざ部屋の前までくっついてきていた。
灰本は、普段冷たい言動が多いが、心配性なところがある。階段から転げ落ちられてもと思ったのかもしれない。
玄関前まで付き添われ「明日は、絶対に事務所へ来るなよ」と、念を押されていた。
午前中は睡眠を貪っていたが、昼前にパッと目が覚めた途端、五十嵐のことが気になって、眠気は吹き飛んでしまっていた。
その途端、そわそわ落ち着かない。
今日は大学の授業は入っていないし、家でじっとしていることなんてできなかった。
気づいたときには、自然とここへ足は向いていた。
濃いめのコーヒーを二人分入れて、灰本の机に置く。灰本が開いているパソコン画面を見やる。
「それで、相手の女の素性わかりました?」
大きなため息をつきながらも、画面へ顔を向けていく。
「塩谷真綾。二十四歳。クラブ・スティラに勤務。こういう派手な奴は、情報があふれていてやりやすい」
パソコン画面に塩屋の写真が何枚も映し出される。クラブで働いている姿。酒に酔って上機嫌になっているもの。友人と思われる大勢とパーティーをしているもの。様々だ。
どれも、きついパーマが掛かった明るく長い茶髪をしていて、面長の顔に濃い化粧が施されている。写真を見ているだけなのに、香水まで香ってきそうだ。
「半年前ほど前から、五十嵐が定期的に店に通っていた形跡がある。そこで知り合って、熱を上げたというところか」
昨日撮影した動画も画面の隅にあって、それをまじまじと見つめる。
昨晩も撮影直後、灰本と一緒に画像確認したが、その時よりも、夜の暗さが消えて鮮明になっている。
灰本の手で加工が加えられたのだろう。
私が見ていない間の出来事が、そこにすべて記録されていた。
五十嵐の姿を見つけたとたん、うさぎのように飛び跳ね、蛇のように五十嵐の腕に自分の腕を巻き付けていた。無音声ではあるが、実際は、甲高い声ではしゃいでいることは、想像に難くなかった。そして、そのまま近くのホテルへと姿を消していた。
不快で、胸やけしそうな画像だ。
そこに、ふと不倫相手の杉山を思い出し、頭の中で比較が始まっていた。
「五十嵐の奥さんの写真とかないですか?」
「あるけど、どうして?」
「ちょっと確認です」
面倒くさそう顔をしながら、灰本はパソコンを操作し、画面に映し出す。
パッと出てきた写真は、おそらく証明写真なのだろう。きりっとした目で、カメラを直視している。
ショートカットの黒髪に、落ち着いた雰囲気。化粧も最小限で、ナチュラルな穏やかさが漂っている。
やはり、杉山と似通った印象がある。
「灰本さん。この塩谷っていう女。五十嵐が熱を上げていた相手じゃないですよ」
前かがみになっていた背中をぴんと伸ばして、はっきり告げる。灰本は顎へ手をやって、目線だけ私へ向けていた。
「なぜ、そう言い切れる?」
「奥さんも、杉山さんも、二人とも落ち着いた雰囲気で、どこか同じ雰囲気を感じませんか? 五十嵐は、きっとそういうタイプの女性がいいはずです。それなのに、昨日の塩谷は真逆。騒がしい感じで、落ち着いた雰囲気なんて皆無じゃないですか。わざわざ杉山さんに豪語するほど、熱上げる相手には、到底思えません」
「好みのタイプが変わることなんて、あるだろ」
「人間、そう簡単に変わらない。似たようなことを、灰本さんに、いわれた気がしますけど」
そんなこと言った覚えはないというような顔をしている。
言った方は覚えていないかもしれないが、言われた方は覚えているものだ。
「まぁ、ともかく。私は、五十嵐が杉山さんに告げた人とは、違うと思います。他に女が、いますよ」
「女の勘ってやつか。だが、証拠はない」
「しばらくまた張り込みと尾行を続けて、その証拠掴みましょうよ」
私が勢いよくいうと、灰本は一瞬黙り込んで、首を横に振る。
「最低限の依頼は完了している。そこまで、深追いしなくても、二股不倫で十分インパクトはある。それで、十分だ」
「……灰本さんって、前もそうでしたよね。最後の詰めっていうところで、すっと手を引こうとする」
「深追いして、いい思いをしたことがないからだ」
むすっとしながら、睨まれる。遠回しな私に対する嫌味だろう。
それをつつけば、私は黙るということを学習しているのだろうが、さすがにこのまま黙ってしまう気にはなれなかった。
私は勢いよく口を開きかけるが、灰本の考え込み始めていた。
いつもならば、冷たく一蹴されるのに、珍しい反応だ。私の口に、歯止めをかけていた。
「だが……そうだな。他に何かあるのなら、調べてみる価値はあるのかもしれない」
いつも私に対して、否定的な言葉ばかりなのに、珍しく頷いて肯定的な反応を見せる。
思わず、私は飛び上がってしまった。仕事に関して、初めて自分の意見を通してくれた事実が、単純にうれしい。
「じゃあ、張り込みは継続ですね! 今夜も、頑張ります!」
ぐっと拳を握り意気込む。
「張り込みは、明日からだ」
「何でですか?」
「今夜、俺は個人的な予定が入っている。お前は今晩はゆっくり休んで、寝不足を解消してこい」
「私は、昼くらいまで寝てきたので気力は十分です。灰本さんに予定があるというのならば、今夜の張り込みは、私に任せください」
「それは、絶対ダメだ」
灰本は、間髪入れずきっぱり言ってくる。
この数か月。それなりに仕事を覚えてきたし、私の意見も少しずつではあるが尊重してくれるようになった。信頼関係に関して、ゆっくりではあるが、築けてきているように思う。だったら、もう少しだけ任せてくれてもいいのではないか。
「大丈夫ですよ。昨日の張り込み尾行で、何となくコツはつかめたし。昨日みたいな失敗はしません。逐一、報告入れるようにしますから」
「尾行の懸念の方ではなく、すぐカッとなる方が数十倍も問題なんだよ」
以前、私が持ち込んだ案件の時のように、私が暴走することを危惧しているということか。
あの時のことはなかったことにしてくれればいいのに。
「あの時は、自分の身内の案件みたいなものだったので、あんな暴走気味になっちゃいましたが、今の私は至って冷静です」
安心しろという意味を込めてしたつもりなのに、どうしてか灰本は頭をガシガシ掻き、さらに悩み始めて、自分のスマホを手にする。
「今日の約束は、キャンセルする」
操作を始めようとする灰本のスマホを、取り上げる。
「灰本さんは、プライベート楽しんできてください。考えてみたら、昨日はあの女のところに行ってたんです。今日は、本命どころか、家に直帰する方が濃厚だと思います。そう思いませんか?」
腕組みをし始める灰本に、最後に念を押す。
「今日は、念のための尾行です。楽勝ですって」
ニッコリしてみせれば、端正な顔の真ん中により一層深い皺が寄せ嘆息する。そして、重い口を開いた。
「わかった。じゃあ、今日は任せる。だが、逐一連絡をいれることは守れよ。あと、五十嵐が自宅以外の場所へ向かっているようだったら、すぐに電話連絡を入れること。だが、お前に関してはそれだけじゃ、いまいち心許ない。突然、どこかへ突っ走る可能性は十二分にあるから、スマホのGPSは常時オンにしておけ。常にお前の位置を確認しておきたい。俺も終わり次第、そっちへ向かう」
本当に保護者みたいことをいう。
だが、それでも、少しでも任せてくれるというのだから、文句は嬉しさで上書きされていた。
「わかりました。では、今夜は私にドーンとお任せください。灰本さんが暇になる頃には、きっと問題なく終わってますよ」
スマホを灰本へ返し、自信満々に腰へ両手をやって、胸を張ってみせる。
一方、灰本は私とは真逆に悩ましそうに米神に手をやって、考え込んでいた。
「お疲れ様です」
「来るなといっただろ」
デスクで作業していた灰本は、厳しい顔だけ向けてくる。
昨夜、あの後いったん事務所に戻って、灰本が撮った動画を確認したり、残っていた雑務を片付けた。終電はとうになくなり、灰本が車で送ってくれた。慣れないことをすると、どっと疲れが出るものだ。
灰本の運転する車の中では、眠りこけていて、気づいたら自宅アパート前。時刻は、午前をだいぶ過ぎた時間だった。
ほとんど寝たまま、ボロアパートの二階の自分の部屋へ、階段をあがろうとしたら、灰本はわざわざ部屋の前までくっついてきていた。
灰本は、普段冷たい言動が多いが、心配性なところがある。階段から転げ落ちられてもと思ったのかもしれない。
玄関前まで付き添われ「明日は、絶対に事務所へ来るなよ」と、念を押されていた。
午前中は睡眠を貪っていたが、昼前にパッと目が覚めた途端、五十嵐のことが気になって、眠気は吹き飛んでしまっていた。
その途端、そわそわ落ち着かない。
今日は大学の授業は入っていないし、家でじっとしていることなんてできなかった。
気づいたときには、自然とここへ足は向いていた。
濃いめのコーヒーを二人分入れて、灰本の机に置く。灰本が開いているパソコン画面を見やる。
「それで、相手の女の素性わかりました?」
大きなため息をつきながらも、画面へ顔を向けていく。
「塩谷真綾。二十四歳。クラブ・スティラに勤務。こういう派手な奴は、情報があふれていてやりやすい」
パソコン画面に塩屋の写真が何枚も映し出される。クラブで働いている姿。酒に酔って上機嫌になっているもの。友人と思われる大勢とパーティーをしているもの。様々だ。
どれも、きついパーマが掛かった明るく長い茶髪をしていて、面長の顔に濃い化粧が施されている。写真を見ているだけなのに、香水まで香ってきそうだ。
「半年前ほど前から、五十嵐が定期的に店に通っていた形跡がある。そこで知り合って、熱を上げたというところか」
昨日撮影した動画も画面の隅にあって、それをまじまじと見つめる。
昨晩も撮影直後、灰本と一緒に画像確認したが、その時よりも、夜の暗さが消えて鮮明になっている。
灰本の手で加工が加えられたのだろう。
私が見ていない間の出来事が、そこにすべて記録されていた。
五十嵐の姿を見つけたとたん、うさぎのように飛び跳ね、蛇のように五十嵐の腕に自分の腕を巻き付けていた。無音声ではあるが、実際は、甲高い声ではしゃいでいることは、想像に難くなかった。そして、そのまま近くのホテルへと姿を消していた。
不快で、胸やけしそうな画像だ。
そこに、ふと不倫相手の杉山を思い出し、頭の中で比較が始まっていた。
「五十嵐の奥さんの写真とかないですか?」
「あるけど、どうして?」
「ちょっと確認です」
面倒くさそう顔をしながら、灰本はパソコンを操作し、画面に映し出す。
パッと出てきた写真は、おそらく証明写真なのだろう。きりっとした目で、カメラを直視している。
ショートカットの黒髪に、落ち着いた雰囲気。化粧も最小限で、ナチュラルな穏やかさが漂っている。
やはり、杉山と似通った印象がある。
「灰本さん。この塩谷っていう女。五十嵐が熱を上げていた相手じゃないですよ」
前かがみになっていた背中をぴんと伸ばして、はっきり告げる。灰本は顎へ手をやって、目線だけ私へ向けていた。
「なぜ、そう言い切れる?」
「奥さんも、杉山さんも、二人とも落ち着いた雰囲気で、どこか同じ雰囲気を感じませんか? 五十嵐は、きっとそういうタイプの女性がいいはずです。それなのに、昨日の塩谷は真逆。騒がしい感じで、落ち着いた雰囲気なんて皆無じゃないですか。わざわざ杉山さんに豪語するほど、熱上げる相手には、到底思えません」
「好みのタイプが変わることなんて、あるだろ」
「人間、そう簡単に変わらない。似たようなことを、灰本さんに、いわれた気がしますけど」
そんなこと言った覚えはないというような顔をしている。
言った方は覚えていないかもしれないが、言われた方は覚えているものだ。
「まぁ、ともかく。私は、五十嵐が杉山さんに告げた人とは、違うと思います。他に女が、いますよ」
「女の勘ってやつか。だが、証拠はない」
「しばらくまた張り込みと尾行を続けて、その証拠掴みましょうよ」
私が勢いよくいうと、灰本は一瞬黙り込んで、首を横に振る。
「最低限の依頼は完了している。そこまで、深追いしなくても、二股不倫で十分インパクトはある。それで、十分だ」
「……灰本さんって、前もそうでしたよね。最後の詰めっていうところで、すっと手を引こうとする」
「深追いして、いい思いをしたことがないからだ」
むすっとしながら、睨まれる。遠回しな私に対する嫌味だろう。
それをつつけば、私は黙るということを学習しているのだろうが、さすがにこのまま黙ってしまう気にはなれなかった。
私は勢いよく口を開きかけるが、灰本の考え込み始めていた。
いつもならば、冷たく一蹴されるのに、珍しい反応だ。私の口に、歯止めをかけていた。
「だが……そうだな。他に何かあるのなら、調べてみる価値はあるのかもしれない」
いつも私に対して、否定的な言葉ばかりなのに、珍しく頷いて肯定的な反応を見せる。
思わず、私は飛び上がってしまった。仕事に関して、初めて自分の意見を通してくれた事実が、単純にうれしい。
「じゃあ、張り込みは継続ですね! 今夜も、頑張ります!」
ぐっと拳を握り意気込む。
「張り込みは、明日からだ」
「何でですか?」
「今夜、俺は個人的な予定が入っている。お前は今晩はゆっくり休んで、寝不足を解消してこい」
「私は、昼くらいまで寝てきたので気力は十分です。灰本さんに予定があるというのならば、今夜の張り込みは、私に任せください」
「それは、絶対ダメだ」
灰本は、間髪入れずきっぱり言ってくる。
この数か月。それなりに仕事を覚えてきたし、私の意見も少しずつではあるが尊重してくれるようになった。信頼関係に関して、ゆっくりではあるが、築けてきているように思う。だったら、もう少しだけ任せてくれてもいいのではないか。
「大丈夫ですよ。昨日の張り込み尾行で、何となくコツはつかめたし。昨日みたいな失敗はしません。逐一、報告入れるようにしますから」
「尾行の懸念の方ではなく、すぐカッとなる方が数十倍も問題なんだよ」
以前、私が持ち込んだ案件の時のように、私が暴走することを危惧しているということか。
あの時のことはなかったことにしてくれればいいのに。
「あの時は、自分の身内の案件みたいなものだったので、あんな暴走気味になっちゃいましたが、今の私は至って冷静です」
安心しろという意味を込めてしたつもりなのに、どうしてか灰本は頭をガシガシ掻き、さらに悩み始めて、自分のスマホを手にする。
「今日の約束は、キャンセルする」
操作を始めようとする灰本のスマホを、取り上げる。
「灰本さんは、プライベート楽しんできてください。考えてみたら、昨日はあの女のところに行ってたんです。今日は、本命どころか、家に直帰する方が濃厚だと思います。そう思いませんか?」
腕組みをし始める灰本に、最後に念を押す。
「今日は、念のための尾行です。楽勝ですって」
ニッコリしてみせれば、端正な顔の真ん中により一層深い皺が寄せ嘆息する。そして、重い口を開いた。
「わかった。じゃあ、今日は任せる。だが、逐一連絡をいれることは守れよ。あと、五十嵐が自宅以外の場所へ向かっているようだったら、すぐに電話連絡を入れること。だが、お前に関してはそれだけじゃ、いまいち心許ない。突然、どこかへ突っ走る可能性は十二分にあるから、スマホのGPSは常時オンにしておけ。常にお前の位置を確認しておきたい。俺も終わり次第、そっちへ向かう」
本当に保護者みたいことをいう。
だが、それでも、少しでも任せてくれるというのだから、文句は嬉しさで上書きされていた。
「わかりました。では、今夜は私にドーンとお任せください。灰本さんが暇になる頃には、きっと問題なく終わってますよ」
スマホを灰本へ返し、自信満々に腰へ両手をやって、胸を張ってみせる。
一方、灰本は私とは真逆に悩ましそうに米神に手をやって、考え込んでいた。
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