サラシ屋

雨宮 瑞樹

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めちゃくちゃ不貞腐れているが、こればかりはしょうがない。
お互いがホストをやっている以上割り切るしかないのだ。

多分ここで俺が辞めてもアイ君が辞めない限り別の問題が出てくるだろうし、2人揃って辞めるなんてもってのほかだ。
しっかり夜の世界に染まってしまった俺達が、急に昼の世界に戻るのは現実的に厳しい。
わかりやすいところで、普通に金銭感覚終わってると思う。

それに今辞めるのは普通に勿体無い。特にアイ君。
ホストは適当に始める人も多いが、本気でやっている人も多いのだ。
俺たちは後者で、どんどんと記録を更新し、目標に向かって突き進んでいるアイ君が辞めるのは本当に勿体無い。俺もまだ目標達成してないし。今やめたくはない。



「………チューするの?」

めちゃくちゃ不機嫌な声で聞いてくるけれど、アイ君だって本当はわかってる。
納得してません!って感じが声だけじゃなく顔からも滲み出てるけど。

「するかもね。」

「………。」

いや、めちゃくちゃ嫌そうな顔するじゃん。
眉間にすんげえ皺寄るじゃん。
なんか本当にわかってるのか心配になってきた。

………可哀想だからちょっとだけ飴をやるか。

「はぁ…じゃあさきにアイ君がしてよ。
明日会う子よりも先に。」

「!」

ぱああぁぁぁぁ…!
という効果音が聞こえてきそうなほど嬉しそうな顔をしている。

すんごい笑顔。単純か。

「さきさんから言われるの破壊力すごい。じゃあ先に失礼します。」

「ん。いいよ。…んっ…ぅん…はっ…」

アイ君の顔が近づいてきて、そのまま深いキスをされる。
いつもより少し荒っぽいのが意識してるみたいで可愛い。
こういう嫉妬深いところも嫌いじゃないどころか、むしろ好きだ。
俺のこと本当に好きって感じするから。

「ん。明日終わった後も来て下さい。消毒するから。」

頭をぽんぽんとしてくれる。
いつもよりどこか男らしくてキュンとしてしまった。
すごい単細胞だけど…。

アイ君は年下だけど、頭をぽんぽんとされるのは許してしまう。というかむしろ好きだったりする。

「ん、いっぱい消毒してね。」

納得はしてくれたけど、多分相当我慢してくれてるんだよね。
だからたまには甘やかしてあげないとね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「まあ!今からもギャンギャンに抱きますけどね!泊まりだし。」

「うるせえよ。キスで終わっとけよ。ムード台無しかよ。」

「無理。明日俺のことしか考えられないようにする。抱き潰す。」

「やめろ。ホストが腰痛めてたらやばいだろ。」

「ちぇ。ケチ。」
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