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ルリマツリ5
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一通りの電話の嵐を終えた後は、だいたいの仕事の流れを早口で教えられた。
湊は、朝が弱いこと。仕事へ行くときは、基本的には湊の運転で現場に向かえばいいこと。映画の撮影は、長期の泊りがけになることもあること。湊が仕事をしている間は、現場スタッフとなるべくいい関係を築いておくこと。
そして、最も重要なことと、声を大にして言われたのは。
「変なタレントに湊が食い物にされないようにガードすること」
「ガード?」
「芸能界っていうのは、いかに自分の名前を世間に広めるかが鍵になる。たとえば、話題のドラマに出て、それなりの存在感を示されれば、そりゃあ一番いい真っ当な階段の上り方だ。だが、そう誰しもうまくはいくはずがないわけさ。その場合、どうすればいいか、わかるか?」
「努力……でしょうか?」
答えると、話にならんなと、一蹴される。
「ひたむきに頑張って耐えても、世の中みんなが救われるわけじゃない。それは、お前が一番よくわかってんじゃねぇのか?」
核心を突かれて、何も言えなくなる。そして、今の回答が違うことなど、自ら体験してきたことを思い出す。
頑張っていればいつか報われる。そう思ってやってきたが、そんな機会など一度も訪れてはくれなかった。状況が変わったきっかけは、何もかも捨ててもいい。変わりたいと思う心。そして。
「思い切った行動……」
呟くと、小早川はその通り! と叫んで、満足そうだった。
「大きな野心を持った人間はな。何もかもかなぐり捨てて、行動してくる。目的のためなら、手段は択ばない。つまり。波に乗っている湊と接点を持ったタレントは、自分の名前を売るために、何でもしようとするわけだ。湊を利用してな」
小早川は、何かを思い出したのか。苦虫を噛みつぶしたような顔をする。それが、私にも伝染して、母と兄の顔が浮かんだ。
母や兄も自分の会社を大きくするためならば、どんな手を使ってもいいと思っている。
野望を叶えるため、それを守るためならば、何でもする。私を利用しようとしたように。ぎりっと奥歯を噛む。
「身に覚えがあるのなら、その経験を生かして、今度は湊をお前が守れ」
静かにそういう小早川は、先ほどまでの道化師ではなかった。ただ湊を思う一人の父親の顔をして、まっすぐに私を見据えていた。
私はその言葉をしっかりと刻み込むように、頷く。
それから、予定よりも長引きそうだという一報が入ったのは、夕方を過ぎて空が少し暗くなる頃だった。
「ということで、明日から本格的によろしく頼むぜ。というわけで、お前は先に帰ってろ」
小早川がそういって、スマホとマニュアルを押し付けられ、やっと終わったと、スッキリした顔をしていた。
部屋を借りていることを切り出そうとしたのだが、「勝手に使ってろ」と小早川はそんな細かいことなど、どうでもいいと云わんばかり。最後には、湊の部屋の合鍵まで、押し付けられる。
「あいつが朝起きなかったら、それ使って叩き起こせ」
部屋の礼を述べる暇も、戸惑う暇もなく、そのまま社長室から追い出されていた。
帰る途中、美容院に寄った。
新しい自分になりたい。そんな思いを込めて、長かった髪を一気に切って、一気にショートヘアにする。
頭と肩が、軽くなる。今までの荷物を全部そぎ落として、新しいものを積み重ねていく。そんな前触れのような気がした。
部屋に帰って、やかんでお湯を沸かしながら、小早川からもらったマニュアルを読み込んでいると、インターホンが鳴った。湊だ。
そのまま玄関へ向かって、ドアを開ける。
「遅くまで、お疲れさまでした」
少しぎゅっと眉を寄せて何か言おうとしたようだったが、すぐに吹き飛んで、だいぶ驚いた顔をしていた。
「髪、切ったんですね」
改めて言われると、気恥ずかしい。短くなった髪を弄んで、気を紛らわせる。
「気合を入れなおそうと、思いきってみました」
「とてもよく似合ってます」
じっと見つめられて、柔らかい笑顔を見せてくれるから、居たたまれなくなる。話題を変えることにする。
「あの、先ほど社長さんと仕事の話をさせていただきました」
そういうと、湊はパッと目を輝かせてくれていた。
「僕のマネージャー引き受けてくれるって、聞きましたが、本当ですか?」
「はい。明日から一生懸命仕事を頑張らせていただきます。湊さんのご迷惑にならぬよう誠心誠意尽くして参ります。至らぬこともたくさんあるかと思いますが、これからどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、色々よろしくお願いします」
その時。沸騰を知らせるやかんの笛が、ピーっと鳴って「入ってください」と言い置いて、急いで中へ戻る。私の背中へ向かって吐き出された湊の溜息など聞こえるはずもなかった。
湊が諦めているというような雰囲気を醸し出していることなど、気付きもしない私は、せっせとコーヒーフィルターをセットして、コーヒー粉を入れる。
「三浦店長からいただいていたコーヒーがあるんです」
店を出るときに、コーヒーのハンドドリップセットと店で一番人気の豆をわざわざ挽いて、餞別だと言って持たさせてくれていたのだ。部屋に芳ばしい香りがふわっと充満していく。
そこへ、お湯を注げば、更に華やかさが加わって、三浦店長の柔和な顔が思い出された。
二人分のカップにゆっくり注いで、先日一緒に食べたダイニングテーブルへ置く。
どうぞと促すと、ありがとうごさいますと言って、先日と同じ位置に二人座り、カップを手にする。
そっと口へ運ぶと、あの喫茶店の懐かしさが胸いっぱいに広がった。
「やっぱり、美味しいですね」
しみじみという湊に私も頷く。三浦店長のコーヒーは、世界一美味しい。間違いないと思う。
ぴしっと、背筋に力を入れて姿勢を正す。
「あの、少し相談させていただきたいのですが……よろしいでしょうか?」
そんな私に、何事かと湊は目を瞬かせながらも僕にできることならと、真剣なまなざしを向けてくれる。
「社長さんから、仕事をするに当たって仕事用の名前を名乗ったらどうかという提案をいただいたのですが、どんな風に名前を付けたらいいものなのか、見当もつかないんです。それで……湊さんは仕事の名前自分で決めたと社長さんから伺ったのですが、どうやって決めたのか教えていただきたくて」
「残念ながら僕のは、あまり参考にならないと思いますよ?」
それでも、教えてほしいというと、少し困ったような顔をしながらも教えてくれた。
「『佐藤』は、日本で一番多い苗字だし、周りにも馴染みやすそうだしそれでいいや、と……。『蓮』は、実は僕の地元の友達の名前なんです。しょっちゅう遊んでいた奴で身近だったんです。しかも、呼びやすいし。だから、それでいいかって……すみません、全然参考にならなくて」
「いえ、そんなことないです。じゃあ、私は……日本で二番目に多い苗字にします」
検索すると日本で二番に多いのは『鈴木』とあった。私は、うんと頷く。一番の佐藤さんを支えるには、ぴったりの名前だと思えた。でも、名前は……。
「うーん」
唸っていると、ポンと湊が手をたたいた。
「紅羽さん、花が好きなんですよね? えっと、一番好きな花は確か……「ルリ」まで出てくるんですけど……」
「ルリマツリですか?」
「あ、それだ! ルリマツリ。そこから取った名前はどうでしょう?」
「素敵ですね! 鈴木まつり! 私、それにします!」
叫んだ途端、見るものすべてが、色鮮やかに瞳に映り始める。その中心に笑顔の湊がいた。
新しい名前。湊が与えてくれた新しい人生。
一生かけて、この名前が汚れないように。
湊を支えるために、すべてを捧げたい。そう思った。
湊は、朝が弱いこと。仕事へ行くときは、基本的には湊の運転で現場に向かえばいいこと。映画の撮影は、長期の泊りがけになることもあること。湊が仕事をしている間は、現場スタッフとなるべくいい関係を築いておくこと。
そして、最も重要なことと、声を大にして言われたのは。
「変なタレントに湊が食い物にされないようにガードすること」
「ガード?」
「芸能界っていうのは、いかに自分の名前を世間に広めるかが鍵になる。たとえば、話題のドラマに出て、それなりの存在感を示されれば、そりゃあ一番いい真っ当な階段の上り方だ。だが、そう誰しもうまくはいくはずがないわけさ。その場合、どうすればいいか、わかるか?」
「努力……でしょうか?」
答えると、話にならんなと、一蹴される。
「ひたむきに頑張って耐えても、世の中みんなが救われるわけじゃない。それは、お前が一番よくわかってんじゃねぇのか?」
核心を突かれて、何も言えなくなる。そして、今の回答が違うことなど、自ら体験してきたことを思い出す。
頑張っていればいつか報われる。そう思ってやってきたが、そんな機会など一度も訪れてはくれなかった。状況が変わったきっかけは、何もかも捨ててもいい。変わりたいと思う心。そして。
「思い切った行動……」
呟くと、小早川はその通り! と叫んで、満足そうだった。
「大きな野心を持った人間はな。何もかもかなぐり捨てて、行動してくる。目的のためなら、手段は択ばない。つまり。波に乗っている湊と接点を持ったタレントは、自分の名前を売るために、何でもしようとするわけだ。湊を利用してな」
小早川は、何かを思い出したのか。苦虫を噛みつぶしたような顔をする。それが、私にも伝染して、母と兄の顔が浮かんだ。
母や兄も自分の会社を大きくするためならば、どんな手を使ってもいいと思っている。
野望を叶えるため、それを守るためならば、何でもする。私を利用しようとしたように。ぎりっと奥歯を噛む。
「身に覚えがあるのなら、その経験を生かして、今度は湊をお前が守れ」
静かにそういう小早川は、先ほどまでの道化師ではなかった。ただ湊を思う一人の父親の顔をして、まっすぐに私を見据えていた。
私はその言葉をしっかりと刻み込むように、頷く。
それから、予定よりも長引きそうだという一報が入ったのは、夕方を過ぎて空が少し暗くなる頃だった。
「ということで、明日から本格的によろしく頼むぜ。というわけで、お前は先に帰ってろ」
小早川がそういって、スマホとマニュアルを押し付けられ、やっと終わったと、スッキリした顔をしていた。
部屋を借りていることを切り出そうとしたのだが、「勝手に使ってろ」と小早川はそんな細かいことなど、どうでもいいと云わんばかり。最後には、湊の部屋の合鍵まで、押し付けられる。
「あいつが朝起きなかったら、それ使って叩き起こせ」
部屋の礼を述べる暇も、戸惑う暇もなく、そのまま社長室から追い出されていた。
帰る途中、美容院に寄った。
新しい自分になりたい。そんな思いを込めて、長かった髪を一気に切って、一気にショートヘアにする。
頭と肩が、軽くなる。今までの荷物を全部そぎ落として、新しいものを積み重ねていく。そんな前触れのような気がした。
部屋に帰って、やかんでお湯を沸かしながら、小早川からもらったマニュアルを読み込んでいると、インターホンが鳴った。湊だ。
そのまま玄関へ向かって、ドアを開ける。
「遅くまで、お疲れさまでした」
少しぎゅっと眉を寄せて何か言おうとしたようだったが、すぐに吹き飛んで、だいぶ驚いた顔をしていた。
「髪、切ったんですね」
改めて言われると、気恥ずかしい。短くなった髪を弄んで、気を紛らわせる。
「気合を入れなおそうと、思いきってみました」
「とてもよく似合ってます」
じっと見つめられて、柔らかい笑顔を見せてくれるから、居たたまれなくなる。話題を変えることにする。
「あの、先ほど社長さんと仕事の話をさせていただきました」
そういうと、湊はパッと目を輝かせてくれていた。
「僕のマネージャー引き受けてくれるって、聞きましたが、本当ですか?」
「はい。明日から一生懸命仕事を頑張らせていただきます。湊さんのご迷惑にならぬよう誠心誠意尽くして参ります。至らぬこともたくさんあるかと思いますが、これからどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、色々よろしくお願いします」
その時。沸騰を知らせるやかんの笛が、ピーっと鳴って「入ってください」と言い置いて、急いで中へ戻る。私の背中へ向かって吐き出された湊の溜息など聞こえるはずもなかった。
湊が諦めているというような雰囲気を醸し出していることなど、気付きもしない私は、せっせとコーヒーフィルターをセットして、コーヒー粉を入れる。
「三浦店長からいただいていたコーヒーがあるんです」
店を出るときに、コーヒーのハンドドリップセットと店で一番人気の豆をわざわざ挽いて、餞別だと言って持たさせてくれていたのだ。部屋に芳ばしい香りがふわっと充満していく。
そこへ、お湯を注げば、更に華やかさが加わって、三浦店長の柔和な顔が思い出された。
二人分のカップにゆっくり注いで、先日一緒に食べたダイニングテーブルへ置く。
どうぞと促すと、ありがとうごさいますと言って、先日と同じ位置に二人座り、カップを手にする。
そっと口へ運ぶと、あの喫茶店の懐かしさが胸いっぱいに広がった。
「やっぱり、美味しいですね」
しみじみという湊に私も頷く。三浦店長のコーヒーは、世界一美味しい。間違いないと思う。
ぴしっと、背筋に力を入れて姿勢を正す。
「あの、少し相談させていただきたいのですが……よろしいでしょうか?」
そんな私に、何事かと湊は目を瞬かせながらも僕にできることならと、真剣なまなざしを向けてくれる。
「社長さんから、仕事をするに当たって仕事用の名前を名乗ったらどうかという提案をいただいたのですが、どんな風に名前を付けたらいいものなのか、見当もつかないんです。それで……湊さんは仕事の名前自分で決めたと社長さんから伺ったのですが、どうやって決めたのか教えていただきたくて」
「残念ながら僕のは、あまり参考にならないと思いますよ?」
それでも、教えてほしいというと、少し困ったような顔をしながらも教えてくれた。
「『佐藤』は、日本で一番多い苗字だし、周りにも馴染みやすそうだしそれでいいや、と……。『蓮』は、実は僕の地元の友達の名前なんです。しょっちゅう遊んでいた奴で身近だったんです。しかも、呼びやすいし。だから、それでいいかって……すみません、全然参考にならなくて」
「いえ、そんなことないです。じゃあ、私は……日本で二番目に多い苗字にします」
検索すると日本で二番に多いのは『鈴木』とあった。私は、うんと頷く。一番の佐藤さんを支えるには、ぴったりの名前だと思えた。でも、名前は……。
「うーん」
唸っていると、ポンと湊が手をたたいた。
「紅羽さん、花が好きなんですよね? えっと、一番好きな花は確か……「ルリ」まで出てくるんですけど……」
「ルリマツリですか?」
「あ、それだ! ルリマツリ。そこから取った名前はどうでしょう?」
「素敵ですね! 鈴木まつり! 私、それにします!」
叫んだ途端、見るものすべてが、色鮮やかに瞳に映り始める。その中心に笑顔の湊がいた。
新しい名前。湊が与えてくれた新しい人生。
一生かけて、この名前が汚れないように。
湊を支えるために、すべてを捧げたい。そう思った。
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