踏み込みステップ〜友達から恋人になるのってどうしたらいいんですか?!〜

歩くの遅いひと(のきぎ)

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序章(仮)

好きってこういうことなんですね

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な、なんで双眼鏡?そしてなんでうれしそうなの?ていうか、誰なんだろうこの人‥‥。

「あれ、私を知らないかい?」
「えぇ、まぁ……」

「入学式はちゃんと起きておくべきだったね、星崎」

下の名前はあかりだったかな?なんて聞かれて驚いてしまう。いくら上級生でも、入学式で見たばかりの下級生の名前なんて覚えているものだろうか。

「私は浅沼(あさぬま)みなと。生徒会長だ」
「あ、生徒会長!」

たしかなんかちょこんといた気がする!後輩っぽい人に睨まれながら少し笑っていたから印象に残ってしまっていた。

「なんで私が君を覚えているか気になるかい?」

まずその双眼鏡の用途が知りたいです。なんてとても言えないけど。適当にはいと答えておいた。

「それは君が"恋"をしていると感じたからだよ」
「なっ」

「私は恋をする人、カップルなどの観察が好きでね。そこで、君を見つけた」
「だから双眼鏡……」

いや、だいぶ変な人だけど。けっこういい顔で君を見つけたって言われましても。

「分かるんだ私には。君は友達に恋をしてしまった。でも黒い感情に飲み込まれそうになる自分が怖くて、恋を忘れたいとも思っている、だろう?」

分かられすぎててちょっと怖いです先輩……。まさかあの双眼鏡で見られてたのかな。

「そうですけど、別にそんな大層な恋ではないので」
「恋に大層も小さいもないよ。恋をする人、される人、している二人。どれも美しく輝いている」

「美しい?こんな汚れた気持ちが?」

ドロドロとしてるような感情にえずいてしまいそうにすらなるのに。これは先輩のいうような綺麗な恋じゃない。

「君の恋はとてもきれいだよ。相手のことを思うあまり自分の恋すら捨てようとする、なかなかできることじゃない」

そういうものなの?何もかも初めてなあたしにはよく分からない。

「さっきも言ったが恋をした相手と友達に戻るのはできない……難しいが正しいかな」
「でも些細なことで嫌だなって思っちゃう自分が嫌なんです。友達も、相手も、誰も悪くないのに」

悪いのはただ、あたしだけだ。力なくうつむけば先輩は優しく笑ってくれた。

「それが恋というものだよ、星崎あかり」
「これが……恋」

「あんたは恋したことないでしょーがー!!」
「ぅぐふ!」
「!」

すさまじい怒号とともに強烈な飛び蹴り。さっきまで後輩を諭していた優しい先輩は一気に床へと転がった。

「へ、え?えぇ?!」
「ごめんなさい新入生さん。このバ会長がよくわかんないこと言って」

「あ、いや……あの」
「私は鞍月(くらつき)めいこ。生徒会で書記をしているの。もしまたあのポエム変人に変なこと言われたら言って?
かましてあげるから」

かますって……なにを?
それは怖くて聞けなかったので、勢いよく頷いておいた。

「い、痛いじゃないかめいこ」
「いたいけな後輩に変なこと吹き込むからです」

「心外だな、恋に迷える子羊を案内していただけだよ。恋の道にね」
「恋もしたことない恋オタクに何を案内できると言うんですか」

は、入れない。先輩二人とも淡々と言葉を交わしていてとても入れる雰囲気ではなかった。どうしようかと迷っていると……

「あぁ、すまない。めいこはちょっと素直じゃないだけなんだ」

いや、素直じゃないってだけで生徒会長に飛び蹴りする生徒会役員はいないと思いますが。まぁ先輩は嬉しそうだからいっか。

「恋した相手に幻滅された、嫌われたと思うならちゃんと誤解を解く。それが恋へ近づく一歩だよ」
「誤解、かぁ」

「頑張れ。好きな人の笑顔がみたいならね」

その一言で、自分の中の迷いが消えた気がした。たしかにあたしは、朝波さんの笑顔が見たい。

「先輩、ありがとうございました!」
「うん。めいこもそのくらい素直だと助かるんだが」
「何か言いましたか?バ会長」

にっこり笑った鞍月先輩の笑顔と、背中で先輩の悲鳴を同時に感じながら。


あたしは急いで、朝波さんたちの元へ走った。


「朝波さんが、好き……!」

誰に聞かせるでもない想いを吐き出して。


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