モブに光あれ〜私のクラスメイトが一途過ぎて推せる〜

歩くの遅いひと(のきぎ)

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山奈ちさとは期待する

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どこかで夢を見ていたんだと思う。
今の私は誰なんだろう。

「ちさとちゃん?」
「……はっ!」

危ない危ない。トリップしかけた。おはよう私の世界。

「……みゆ、この子は?」

ついに、ついに来てしまった。推しが並ぶ瞬間に出くわしてしまった。
妹のみちかがよく言っていた。推しが並ぶ姿は神々しくて、神様に感謝したくなると。
たしかにこれはひざまずきたくなる。みゆ×りいなの神様へと手を合わせたくなってしまう。

「同じクラスのちさとちゃん。ちさとちゃん、この人がうちの近くに住むおねぇちゃんのりいなちゃんだよ」
「は、はじめまして、山奈ちさとです」
「はじめまして。私は篠山りいなです。私も白雪工業の卒業生なんだよ」

知ってます。海よりも深く。

「おねぇちゃんは文芸部だから、妹ちゃんのほうが知ってるかもね」
「え、文芸部だったんですか?」
「う、うん。志野凛って名前で創作を……」

「し、志野凛?!」

聞いたことがある。妹のみちかは文芸部だから、よく話題に上がっていた。

『卒業生の先輩の作品でダントツなのが志野凛先輩だね!優しくて甘いお話がたくさんあってもう大好きなの!』

それはもう聞き飽きるほどに聞いていた話。
志野凛先輩は天才だと興奮しながら。

「まさかそれが篠山先輩だったなんて……」
「ははは、知ってもらえてたなんてうれしいなぁ」
「卒業と一緒にその名前も捨てたらしいから、私もあんまり言わなかったんだけど……おねぇちゃん言っちゃうんだ」

「なんかもう卒業して2年だし。いいかなぁって」

さすがみゆ。好きな人への配慮が行き届いてる。可愛い。篠山先輩もすごく可愛いです。

「ちさとちゃん……だっけ。みゆをこれからもよろしくね」
「は、はいっ」
「ほら、おねぇちゃん行くよ」

「わ、引っ張らないでよみゆ」

わぁ、可愛い。
私以外を見ないでほしいって感じなのかな?あの二人の可能性に期待していいのかな。

「じゃあねちさとちゃん、また明日」
「うん、また明日ね」

はぁ、可愛い。破壊力すごい。
これが生の推し……。尊い。

「……ごちそうさまでした!」




二人の背中を見送りながら手を合わせ、
私は叫んでいた。
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