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この素晴らしき時間を〜独り占めしたいのですが最近クラスメイトが邪魔しにくるのでため息が出ます〜

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【登場人物】
はるか……高校2年生。早起きと朝の道が好き。少し体温が低い女の子。

橋浜みりな……高校2年生。早起きが苦手な体温高めの女の子。



 朝早くの道は好きだ。大通りなら別だけど、この道にほとんど人はいない。独り占めっていうのかな、そんな感じ。

「何ニヤニヤしてるの」
「みりな……」
「はるか、ほんとこの道好きだね」

 そんな私の毎日の楽しみに、彼女、橋浜(はしはま)みりなは溶けるように入り込んできて邪魔をする。

「一人だけの世界みたいで好きなんだよ」
「あ、じゃあ私がいちゃ好きじゃないの?」

 そうは言ってないけど……そうかもしれない。もしも時間を止められるなら、間違いなくみりなを置いて先へ進むだろう。

「私も混ぜてよ、その世界に」
「みりなはもっと明るい世界が向いてるよ」
「はは、褒めてる?」

 そりゃあもう。だってみりなは可愛いし。こんな薄暗い道よりも、昼間の賑やかな道の方が合ってるよ。少なくとも、私と一緒なんてもったいない。

「もう私に着いてくるのやめなよ」
「失礼だなぁ。私の行くとこにはるかが現れるんでしょ」
「はぁ、言ってれば……」

 どこまでも気怠げで、でも、楽しむことには努力を惜しまないって感じ。初めてみりなを見た時、そんな感じがした。
 朝が弱いって話していたみりなが、こんな時間に私の前にいるのはなんでだろう。
 決まって私より先に現れて、私より後を歩いていく。

「本当、よく分かんない」
「何が?」
「……自分で考えて」

 なんでそんなに近づいて歩くのかとか、なんでそんなに嬉しそうなのかとか。私には何も関係ないことで、興味もなくて……どうでもいい。

「みりな」
「うん?」
「ん」

 なのに、なんで手を伸ばしちゃうんだろう。そんなのきっと、みりなが寒そうに歩くから、うっとおしかっただけなんだろうけど。

「……へへ、可愛いねはるか」
「うるさいな」

 握られた手が冷たくて、どれだけ待ったんだなんて呆れてしまう。指摘しても、きっとこの子は聞かないんだろう。

「朝の6時」
「へ?」
「日によってまちまちだけど、朝の6時にはここを通るようにしてる。それで、あのカフェで時間を潰して学校行ってる」

 朝早くの道が好きだ。誰もいない通りを歩くだけで、世界を独り占めできた気がするから。
 だから、一人で歩きたいんだ。

「なにそれ」
「別に。朝が早いみりなには知らなくていいことだよ」

 握った手が熱い。体温がゆっくり伝わっていく。……いや、みりなのなのかもしれないけど。

「風邪引かれたら嵐がきそうだからそこのカフェで温まって行こう」
「いいの?」
「……別に、誘ったわけじゃない」

 だってそんなの、後味が悪いからだよ。そんな言葉、ちゃんと声になっていただろうか。

「素直じゃないねぇ、はるかは」
「みりなの方が素直じゃない」
「えぇ~?」



 ニコニコと鼻を赤くしながら笑う姿を見たら、そんなこと。どうでもいいかなんて思えてしまった。
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