2 / 10
この素晴らしき時間を〜独り占めしたいのですが最近クラスメイトが邪魔しにくるのでため息が出ます〜
しおりを挟む
【登場人物】
はるか……高校2年生。早起きと朝の道が好き。少し体温が低い女の子。
橋浜みりな……高校2年生。早起きが苦手な体温高めの女の子。
朝早くの道は好きだ。大通りなら別だけど、この道にほとんど人はいない。独り占めっていうのかな、そんな感じ。
「何ニヤニヤしてるの」
「みりな……」
「はるか、ほんとこの道好きだね」
そんな私の毎日の楽しみに、彼女、橋浜(はしはま)みりなは溶けるように入り込んできて邪魔をする。
「一人だけの世界みたいで好きなんだよ」
「あ、じゃあ私がいちゃ好きじゃないの?」
そうは言ってないけど……そうかもしれない。もしも時間を止められるなら、間違いなくみりなを置いて先へ進むだろう。
「私も混ぜてよ、その世界に」
「みりなはもっと明るい世界が向いてるよ」
「はは、褒めてる?」
そりゃあもう。だってみりなは可愛いし。こんな薄暗い道よりも、昼間の賑やかな道の方が合ってるよ。少なくとも、私と一緒なんてもったいない。
「もう私に着いてくるのやめなよ」
「失礼だなぁ。私の行くとこにはるかが現れるんでしょ」
「はぁ、言ってれば……」
どこまでも気怠げで、でも、楽しむことには努力を惜しまないって感じ。初めてみりなを見た時、そんな感じがした。
朝が弱いって話していたみりなが、こんな時間に私の前にいるのはなんでだろう。
決まって私より先に現れて、私より後を歩いていく。
「本当、よく分かんない」
「何が?」
「……自分で考えて」
なんでそんなに近づいて歩くのかとか、なんでそんなに嬉しそうなのかとか。私には何も関係ないことで、興味もなくて……どうでもいい。
「みりな」
「うん?」
「ん」
なのに、なんで手を伸ばしちゃうんだろう。そんなのきっと、みりなが寒そうに歩くから、うっとおしかっただけなんだろうけど。
「……へへ、可愛いねはるか」
「うるさいな」
握られた手が冷たくて、どれだけ待ったんだなんて呆れてしまう。指摘しても、きっとこの子は聞かないんだろう。
「朝の6時」
「へ?」
「日によってまちまちだけど、朝の6時にはここを通るようにしてる。それで、あのカフェで時間を潰して学校行ってる」
朝早くの道が好きだ。誰もいない通りを歩くだけで、世界を独り占めできた気がするから。
だから、一人で歩きたいんだ。
「なにそれ」
「別に。朝が早いみりなには知らなくていいことだよ」
握った手が熱い。体温がゆっくり伝わっていく。……いや、みりなのなのかもしれないけど。
「風邪引かれたら嵐がきそうだからそこのカフェで温まって行こう」
「いいの?」
「……別に、誘ったわけじゃない」
だってそんなの、後味が悪いからだよ。そんな言葉、ちゃんと声になっていただろうか。
「素直じゃないねぇ、はるかは」
「みりなの方が素直じゃない」
「えぇ~?」
ニコニコと鼻を赤くしながら笑う姿を見たら、そんなこと。どうでもいいかなんて思えてしまった。
はるか……高校2年生。早起きと朝の道が好き。少し体温が低い女の子。
橋浜みりな……高校2年生。早起きが苦手な体温高めの女の子。
朝早くの道は好きだ。大通りなら別だけど、この道にほとんど人はいない。独り占めっていうのかな、そんな感じ。
「何ニヤニヤしてるの」
「みりな……」
「はるか、ほんとこの道好きだね」
そんな私の毎日の楽しみに、彼女、橋浜(はしはま)みりなは溶けるように入り込んできて邪魔をする。
「一人だけの世界みたいで好きなんだよ」
「あ、じゃあ私がいちゃ好きじゃないの?」
そうは言ってないけど……そうかもしれない。もしも時間を止められるなら、間違いなくみりなを置いて先へ進むだろう。
「私も混ぜてよ、その世界に」
「みりなはもっと明るい世界が向いてるよ」
「はは、褒めてる?」
そりゃあもう。だってみりなは可愛いし。こんな薄暗い道よりも、昼間の賑やかな道の方が合ってるよ。少なくとも、私と一緒なんてもったいない。
「もう私に着いてくるのやめなよ」
「失礼だなぁ。私の行くとこにはるかが現れるんでしょ」
「はぁ、言ってれば……」
どこまでも気怠げで、でも、楽しむことには努力を惜しまないって感じ。初めてみりなを見た時、そんな感じがした。
朝が弱いって話していたみりなが、こんな時間に私の前にいるのはなんでだろう。
決まって私より先に現れて、私より後を歩いていく。
「本当、よく分かんない」
「何が?」
「……自分で考えて」
なんでそんなに近づいて歩くのかとか、なんでそんなに嬉しそうなのかとか。私には何も関係ないことで、興味もなくて……どうでもいい。
「みりな」
「うん?」
「ん」
なのに、なんで手を伸ばしちゃうんだろう。そんなのきっと、みりなが寒そうに歩くから、うっとおしかっただけなんだろうけど。
「……へへ、可愛いねはるか」
「うるさいな」
握られた手が冷たくて、どれだけ待ったんだなんて呆れてしまう。指摘しても、きっとこの子は聞かないんだろう。
「朝の6時」
「へ?」
「日によってまちまちだけど、朝の6時にはここを通るようにしてる。それで、あのカフェで時間を潰して学校行ってる」
朝早くの道が好きだ。誰もいない通りを歩くだけで、世界を独り占めできた気がするから。
だから、一人で歩きたいんだ。
「なにそれ」
「別に。朝が早いみりなには知らなくていいことだよ」
握った手が熱い。体温がゆっくり伝わっていく。……いや、みりなのなのかもしれないけど。
「風邪引かれたら嵐がきそうだからそこのカフェで温まって行こう」
「いいの?」
「……別に、誘ったわけじゃない」
だってそんなの、後味が悪いからだよ。そんな言葉、ちゃんと声になっていただろうか。
「素直じゃないねぇ、はるかは」
「みりなの方が素直じゃない」
「えぇ~?」
ニコニコと鼻を赤くしながら笑う姿を見たら、そんなこと。どうでもいいかなんて思えてしまった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ
月輪林檎
SF
VRMMORPG『One and only world』。通称ワンオン。唯一無二の世界と称されたこのゲームは、ステータスが隠れた完全スキル制となっている。発表当時から期待が寄せられ、βテストを経て、さらに熱が高まっていた。
βテストの応募に落ち、販売当日にも買えず、お預けを食らっていた結城白(ゆうきしろ)は、姉の結城火蓮(ゆうきかれん)からソフトを貰い、一ヶ月遅れでログインした。ハクと名付けたアバターを設定し、初期武器を剣にして、ランダムで一つ貰えるスキルを楽しみにしていた。
そんなハクが手に入れたのは、不人気スキルの【吸血】だった。有用な一面もあるが、通常のプレイヤーには我慢出来なかったデメリットがあった。だが、ハクは、そのデメリットを受け止めた上で、このスキルを使う事を選ぶ。
吸血少女が織りなすのんびり気ままなVRMMOライフ。
怒れるおせっかい奥様
asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。
可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。
日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。
そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。
コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。
そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。
それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。
父も一緒になって虐げてくるクズ。
そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。
相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。
子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない!
あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。
そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。
白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。
良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。
前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね?
ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。
どうして転生したのが私だったのかしら?
でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!
あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ!
子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。
私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ!
無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ!
前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる!
無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。
他の人たちのざまあはアリ。
ユルユル設定です。
ご了承下さい。
【完結】諦めた恋が追いかけてくる
キムラましゅろう
恋愛
初恋の人は幼馴染。
幼い頃から一番近くにいた彼に、いつの間にか恋をしていた。
差し入れをしては何度も想いを伝えるも、関係を崩したくないとフラレてばかり。
そしてある日、私はとうとう初恋を諦めた。
心機一転。新しい土地でお仕事を頑張っている私の前になぜか彼が現れ、そしてなぜかやたらと絡んでくる。
なぜ?どうして今さら、諦めた恋が追いかけてくるの?
ヒロインアユリカと彼女のお店に訪れるお客の恋のお話です。
\_(・ω・`)ココ重要!
元サヤハピエン主義の作者が書くお話です。
ニューヒーロー?そんなものは登場しません。
くれぐれもご用心くださいませ。
いつも通りのご都合主義。
誤字脱字……(´>ω∂`)てへぺろ☆ゴメンヤン
小説家になろうさんにも時差投稿します。
single tear drop
ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。
それから3年後。
たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。
素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。
一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。
よろしくお願いします
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる