有毒ツインズ

霧江サネヒサ

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 まだ眠っている恋人の頭を撫でる。
 ふわふわした長い金髪。
「いってきます」と、小声で言って出勤する。
 私の彼氏は、いわゆるヒモだ。それでも私は構わなかった。
 だって、私のことを愛してくれてるし。それって凄く嬉しいことだ。
 あなたがいるから、私は生きていける。
 そんな日々を送っていたある日。

「ちょっとアンタ」
「はい?」

 買い物中に、見知らぬ女性に話しかけられた。

「アンタ、慧ちゃんの女?」
「はい、まあ」
「っ!」

 え?
 私は、一瞬何をされたのか分からなかったけど、数秒して平手打ちされたのだと分かる。じん、と頬が痛んだ。

「なんでアンタみたいな女が、慧ちゃんの恋人なんだよ?!」
「あなたこそ、なんなの?!」
「アタシの方が、慧ちゃんにはふさわしいんだよ! ブス!」
「なっ!」

 なんだコイツ。話が通じそうにない。
 私は、彼女をなんとか撒いて、帰宅した。

「おかえり~」
「慧ちゃん!」

 私は、思わず彼に飛び付く。
「どうしたの?」と、心配そうな声。

「変な女にビンタされて、ブスって言われたぁ! 慧ちゃんのこと狙ってるみたいだった!」
「怖~。君の綺麗な顔に酷いことすんね」
「慧ちゃーん……!」
「よしよし」

 慧ちゃんは、優しく頭を撫でてくれた。

「ん~。心当たりあるから、釘刺しとくよ」
「うん。ありがとう」

 私の彼氏は、交友関係が広い。きっと、彼に片想いしてる人は多いんだろう。
 慧ちゃんに話したおかげで、だいぶ落ち着いた。夕飯を作ろう。

「慧ちゃん、今日はブラウンシチューだよ」
「美味しそう!」
「待っててね」
「うん!」

 慧ちゃんは、コタツに入ってスマホで何かしてる。“心当たり”に連絡してるのかな。
 その後。一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、眠った。
 翌朝。起きると、いつもは隣で寝てるはずの慧ちゃんがいない。

「慧ちゃん……?」

 スマホを見ると、『ちょっと出かける』とメッセージがきていた。
 仕方なく、ひとりで朝の支度をして、出勤する。
 少し会えないだけで、こんなにも寂しい。慧ちゃんがいないと、私はダメだ。
 仕事をしながら、私はずっと慧ちゃんのことを考えてる。
 退勤してから、買い出しをして帰宅すると。

「おかえり~」
「ただいま」

 いつもの笑顔で慧ちゃんがいた。

「会いたかったよぉ!」
「オレも」

 慧ちゃんは、私を抱き締めてくれる。
 つけっぱなしのテレビからは、身元不明の遺体が発見されたというニュースが流れていた。

「今日のご飯は何?」
「塩焼きそばだよ」
「わーい。楽しみ~」

 あなたの笑顔が、私は大好き。
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